倫理審査委員会

平成18年度
難治疾患研究所 第1回倫理審査委員会議事要旨

日時:平成18年6月16日(金) 15:00〜18:30
場所:難治疾患研究所 会議室
出席:木村、片山、古川、山上(以上、内部委員)、稲葉、加藤、神奈木、徳永、原田(以上、外部委員)
1. 第1号(受付第1号案件)
「活性化T細胞療法に関するウイルス検査」
実施責任者:清水則夫助教授(フロンティア研究室ウイルス治療学)

本件研究は活性化T細胞療法を実施するにあたって被験者血液を体外で培養する際に、培養前後でのウイルスの増殖ないし消長を検討するものである。研究の概要について清水助教授より説明があり、研究方法、とくに対象とするウイルス、検体採取施設、インフォームドコンセントの内容、方法、説明文書や同意書の書式などについて種々の質疑応答を行った。ついで、協議の結果、以下の条件を満たした上で研究計画を承認することが妥当であると判定とした。なお、研究計画書の変更については、委員長が確認するものとした。

1. 研究内容を明確に示す研究題目に変更すること。例えば、「T細胞の体外培養にともなうウイルス増殖に関する研究」などが考えられる。
2. 被験者への説明文書に、研究が行われる場所、研究責任者、研究に関する問い合わせ先等を明記すること。
3. 被験者の同意書に同意先(研究責任者の所属、氏名)を明記すること。
4. 試料採取施設における倫理審査委員会による研究計画の承認を受けること。

2. 第2号(受付第11号案件)
「臍帯血移植後ウイルス感染症に関する経時的網羅的解析」
実施責任者:清水則夫助教授(フロンティア研究室ウイルス治療学)

本件研究は臍帯血移植に伴うウイルス感染症の頻度、出現時期、ウイルスの種類、臨床症状とウイルス量との関連を調査、研究するものである。研究の概要について清水助教授より説明があり、研究方法、試料採取施設における倫理審査、被験者への説明文書の内容等について種々質疑応答を行った。ついで、協議の結果、以下の条件を満たした上で研究計画を承認することが妥当であると判定とした。なお、研究計画書の変更については、委員長が確認するものとした。

1. 被験者への説明文書に、研究が行われる場所、研究責任者、研究に関する問い合わせ先等を明記すること。
2. 被験者の同意書に同意先(研究責任者の所属、氏名)を明記すること。
3. 試料採取施設における倫理審査委員会の承認を受けること。

3. 第3号(受付第2号案件)
「造血細胞の癌化に関与する細胞内シグナル分子の研究」
実施責任者:真嶋隆一助手(細胞制御学)

本件研究は本学大学院医歯学総合研究科腫瘍制御学分野三浦修教授を研究責任者として本学医学部倫理審査委員会による承認を受けて実施中の「造血器腫瘍の発症と進展および治療反応性制御機構の研究」と密接に関連するものであり、本研究所倫理審査委員会によって承認された「造血細胞の癌化に関与する細胞内シグナル分子の研究」(研究責任者細胞制御学保田朋波流助手)と同一の研究計画である。保田助手の転出に伴って就任した真嶋助手が新たに研究責任者として研究を統括するとの計画である。真嶋助手より研究の概要の説明を受け、研究内容に関する質疑を行った。協議の結果、以下の条件のもとで本件研究を承認することが妥当であると判定した。

1. 本学医学部倫理審査委員会に「造血器腫瘍の発症と進展および治療反応性制御機構の研究」(研究責任者三浦修教授)の研究分担者として真嶋助手を追加した研究計画を提出し、承認を受けること。

4. 第4号(受付第3号案件)
「特発性低身長の原因遺伝子探索に関する研究」
実施責任者:小川佳宏教授(分子代謝医学)

本件研究は、慶應大学医学部で実施されている「低身長と成長ホルモン反応性に関する遺伝子解析研究」および埼玉県立小児医療センターで実施されている「染色体・遺伝子検査に関するガイドライン」と密接に関連する研究である。研究の概要について蜂屋瑠見大学院生(小川佳宏教授の代理)より研究概要の説明を受けた後、共同研究機関における倫理審査状況を含め種々質疑応答を行った。協議の結果、以下の条件で研究計画を承認することが妥当であると判定した。

1. 研究期間を「研究計画承認後〜平成21年3月31日まで」とすること。
2. 共同研究機関(慶應大学、埼玉県立小児医療センター)のそれぞれにおいて、本件に関連した研究計画の変更(研究者の追加等)を当該組織の倫理審査委員会に提出し、承認を受けること。
3. 遺伝子解析研究のガイドラインにしたがうこと。

5. 第5号(受付第4号案件)
「常染色体劣性遺伝および非家族性脊髄小脳変性症の原因遺伝子解明」
実施責任者:岡澤均教授(神経病理学)

本件は、脊髄小脳変性症の同胞例あるいは孤発例を対象とした網羅的SNP解析により疾患と強い連鎖不平衡を示す領域を同定しようとするものである。榎戸靖助教授(岡澤均教授の代理)より研究の概要について説明を受けた後、研究方法、説明文書と同意書の内容、試料の匿名化手法、保管と廃棄の方法などについて種々の質疑応答を行った。協議の結果、以下の条件を満たした上で、研究を承認することが妥当であると判定した。なお、研究計画書および説明文書・同意書の記載の修正については、委員長がこれを確認するものとした。

1. 試料収集のフローチャートを作成し、研究計画書に添付すること。
2. 説明文書。同意書に試料の保管と廃棄について記載すること。
3. 試料の匿名化は試料採取施設で行い、同意書も試料採取施設で保管すること。
4. 共同研究機関(埼玉医科大学)においても本件関連した研究計画を倫理審査委員会に提出し、その承認を受けること。
5. 遺伝子解析研究のガイドラインにしたがうこと。

(なお、本件に関する研究計画の修正が提出され、適切に修正されていることを委員長が確認した)

6. 第6号(受付第14号案件)
「触法精神障害者の暴力に関するリスク評価の研究」
実施責任者:山上皓教授(犯罪精神医学)

本件研究は文部省科学技術振興調整費委託研究「犯罪、行動異常、犯罪被害等の現象、原因と、治療、予防の研究(研究代表者山上皓)」の一環として行われるものであり、法務省が管理する触法精神障害者の記録を研究対象とする。研究の概要について山上教授より説明があった後、研究対象に含まれる個人情報の保護、研究に携わる者の守秘義務、対象症例数、匿名化手法と対応表の管理等、種々の質疑応答を行った。山上教授が退出の上協議の結果、以下の条件で研究を承認することが妥当であると判定した。

1. 連結可能匿名化とし、個人情報は取得しないこと。
2. 個人情報との匿名化対応表は、法務省の担当部署とも協議の上、適正管理すること。

7. 第7号(受付第8号案件)
遺伝子解析実施担当者の変更について木村彰方教授(分子病態)

本件は、既に承認を受けて実施中の以下の14件の遺伝子解析研究における遺伝子解析実施者の変更申請である。研究計画の軽微な変更であり委員長判定の対象であるが、当該研究計画はいずれも委員長を研究責任者とするため委員会での協議対象とした。申請者の木村教授が退席の上協議し、申請を承認することが妥当であると判定した。

1. 高血圧の病因と病態形成機構の究明に関わる研究
(平成16年4月23日承認)
2. 心筋梗塞の病因と病態形成機構の究明に関わる研究
(平成16年4月23日承認)
3. 高血圧性心筋症の病因と病態形成機構の究明に関わる研究
(平成16年4月23日承認)
4. 難治性動脈炎の病因と病態形成機構の究明に関わる研究
(平成16年4月23日承認)
5. 肥大型心筋症の病因と病態形成機構の究明に関わる研究
(平成16年4月23日承認)
6. 拡張型心筋症の病因と病態形成機構の究明に関わる研究
(平成16年4月23日承認)
7. 甲状腺多因子疾患の病因と病態形成機構の究明に関わる研究
(平成16年4月23日承認)
8. 大腸癌の病因と病態形成機構の究明に関わる研究
(平成16年4月23日承認)
9. 若年性糖尿病の病因と病態形成機構の究明に関わる研究
(平成16年4月23日承認)
10. 炎症性腸疾患の病因と病態形成機構の究明に関わる研究
(平成16年4月23日承認)
11. 慢性関節リウマチの病因と病態形成機構の究明に関わる研究
(平成16年4月23日承認)
12. SLEおよびMCTDの病因と病態形成機構の究明に関わる研究
(平成16年4月23日承認)
13. 難治性不整脈の病因と病態形成機構の究明に関わる研究
(平成16年4月23日承認)
14. HIVウイルス感染防御機構の究明に関わる研究
(平成13年8月28日)

8. 第8号(受付第9号案件)
「HIVウイルス感染防御機構の究明に関わる研究」
実施責任者:木村彰方教授(分子病態)

本件は、すでに承認を受けて実施中の研究計画の期間延長および部分変更(研究対象の追加)に関する申請である。木村教授による研究概要の説明を受けた後、研究対象の追加範囲、追加研究試料(既に採取された研究試料)の取得に関する状況(インフォームドコンセントの範囲等)について種々質疑応答を行った。木村教授が退席の上、協議した結果、以下の条件で研究を承認することが妥当であると判定した。

1. 既に採取された研究試料について連結可能匿名化として研究することが必要な場合には、試料採取を含めて、改めて被験者の同意を取得すること。
2. 既に採取された研究試料について連結可能不匿名化として研究する場合には、研究目的、解析対象遺伝子等を明記したMTAを試料採取責任者との間で取り交わした上で研究を進めること。
2. 遺伝子解析研究のガイドラインにしたがうこと。

(なお、本件については試料採取責任者と協議の結果、連結不可能匿名化として解析するが、重要な結果が得られた場合には改めて同意を取り直した上で連結可能匿名化として研究を遂行することとなった旨、木村教授より報告があった)

9. 第9号(受付第10号案件)
「習慣性流産の発症機構に関する研究」
実施責任者:木村彰方教授(分子病態)

本件は、共同研究機関(試料採取施設)と共同遺伝子解析施設との間で当該研究機関の倫理審査委員会の承認を受けて実施中の遺伝子解析研究において既に採取された研究試料の使用を含む研究計画の申請である。木村教授より研究計画の概要について説明を受けた後、既に採取された試料の取得状況等について種々質疑応答を行った。木村教授が退席の上、協議した結果、以下の条件で研究を承認することが妥当であると判定した。

1. 既存試料の解析については、対象遺伝子の範囲が広がる場合には、あらためて同意を取得した上で実施すること。
2. 研究計画書の字句の誤りを1件修正すること。
3. 遺伝子解析研究のガイドラインにしたがうこと。

(研究計画書の「赴任センター」は「不妊センター」の誤りであるためこれを修正した)

10. 第10号(受付第6号案件)
「重篤な皮膚有害事象の診断・治療と遺伝子マーカーに関する研究」
実施責任者:村松正明教授(分子疫学)

本件は、他施設共同研究として、既に主体となる研究機関(国立医薬品食品衛生研究所)において倫理審査委員会の承認を受けた研究計画に関わるものである。村松教授より研究概要の説明を受けた後、目標症例数、匿名化手法などを含め種々の質疑応答を行った。協議の結果、以下の条件で研究計画を承認することが妥当であると判定した。

1. 主体となる研究機関の倫理審査委員会によって承認された範囲で研究を実施すること。
2. 遺伝子解析研究のガイドラインにしたがうこと。

11. 第11号(受付第7号案件)
「クローン病患者における抗TNFα抗体薬インフリキシマブに対する有効性予知遺伝子の検討」
実施責任者:村松正明教授(分子疫学)

本件は、他施設共同研究として、既に共同研究施設(社会保険中央総合病院)において倫理審査委員会の承認を受けて実施されている研究に密接に関わるものである。村松教授より研究概要の説明を受けた後、連結可能匿名化試料の再連結を含め種々の質疑応答を行った。協議の結果、以下の条件で研究計画を承認することが妥当であると判定した。

1. 被験者への説明文書中の個人情報保護に関する項目に、再連結に関する記載を加えること。例えば、「再連結する必要があるときは個人情報管理者に委託してこれを行う」などの表現が考えられる。
2. 遺伝子解析研究のガイドラインにしたがうこと。

12. 第12号(受付第12号案件)
「臨床診断用全自動染色体異常解析システムの開発」
実施責任者:稲澤譲治教授(分子細胞遺伝)

本件は、既に承認を受けて実施中の研究「染色体異常を疑う遺伝疾患の潜在的ゲノム構造異常の検索と疾患遺伝子の同定、ならびに遺伝子診断法の開発(平成16年3月26日承認、平成16年8月25日および平成17年7月4日部分変更承認)」、「ゲノムマイクロアレイによる癌関連遺伝子の同定と遺伝子解析法の開発(平成16年3月26日承認)」と密接に関わる研究である。本研究では外国人試料を含む他施設で既に収集された試料の解析を含むが、対象試料は共同研究機関(国立がんセンター、名古屋大学、愛知県がんセンター)において関連する遺伝子解析研究が承認されているものである。稲澤教授より研究概要の説明を受け、予定される解析対象試料数、共同研究体制の構築を含めて種々質疑応答を行った。協議の結果、以下の条件で研究計画を承認することが妥当であると判定した。

1. 遺伝子解析研究のガイドラインにしたがうこと。

13. 第13号(受付第13号案件)
「心不全・心筋梗塞患者における突然死予知遺伝子の検討」
実施責任者:古川哲史教授(生体情報薬理)

本件は多施設共同研究の主体研究施設としての研究計画の申請である。研究概要について古川教授より説明を受け、被験者への説明文書、同意所のひな形の内容を含め、種々の質疑応答を行った。古川教授が退席の上、協議の結果、以下の条件で研究計画を承認することが妥当であると判定した。なお、研究説明文書や同意書の記載修正については、委員長がこれを確認することとした。

1. 同意書は試料採取施設で保管し、遺伝子解析施設には同意取得証明書を送付すること。
2. 説明文書の項目と同意書の項目を一致させること。
3. 被験者への利益、不利益の説明と結果の開示に関する説明を独立させること。
4. 遺伝子解析研究のガイドラインにしたがうこと。

(なお、本件に関する研究計画の修正が提出され、適切に修正されていることを委員長が確認した)

14. 第14号(受付第5号案件)
「整体の分子作用と科学的評価法の開発」
実施責任者:野田政樹教授(分子薬理学)

本件は、遺伝子発現解析研究に属するものである。研究の概要について早田匡芳助手(野田政樹教授の代理)より説明を受けた後、対象検体数の根拠、被験者の選び方、匿名化の方法、被験者への説明文書、同意書の内容を含め、種々の質疑応答を行った。協議の結果、以下の条件で研究計画を承認することが妥当であると判定した。なお、研究計画や説明文書の修正については、委員長がこれを確認することとした。 なお、研究計画の修正については委員長が確認することとした。

1. 連結可能匿名化試料として研究する場合には、研究責任者は個人情報管理者を兼ねないこと。
2. 被験者への説明文書に記載された研究の進め方をわかりやすくすること。 (本件については、個人情報とデータとの対応表は残さないものとして研究計画の修正が提出された。また、説明文書の記載もわかり易く修正されたことを委員長が確認した)