倫理審査委員会

平成17年度
第1回難治疾患研究所倫理審査委員会議事要旨

日時:平成17年6月21日(火) 14:00〜16:50
場所:難治疾患研究所 会議室
出席:木村、片山、古川、山上(以上、内部委員)、神奈木、徳永、松岡 (以上、外部委員)

議事

1. 前回議事要旨の確認
議事要旨は既に配布しているが、これに異議のないことを確認した。

2. 迅速審査について

ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(平成13年3月29日制定、平成16年12月28日全部改正)には迅速審査手続きに関する規定が記載されている。すなわち、(1)研究計画の軽微な変更の審査、(2)既に倫理審査委員会において承認されている研究計画に準じて類型化されている研究計画の審査、(3)共同研究であって、既に主たる研究を行う機関において倫理審査委員会の承認を受けた研究計画を、研究機関特有の問題がなく、他の共同研究機関が実施しようとする場合の研究計画の審査は、迅速審査手続きに委ねることができるとされている。本委員会でも委員長によって指名された4名の迅速審査委員による迅速審査を行うことを可能として運用しているが、委員の日程調整が困難な場合などに機動的な対応が出来ないことがある。そこで、書面審査による迅速審査手続きの導入について委員長より提案があり、種々協議の結果、以下のような運用を行うこととした。

1) 迅速審査手続きに委ねることが出来る事項は、ヒトゲノム・遺伝子解析に関する倫理指針に従うものとし、委員長がこれを案件ごとに判断する
2) 委員長は、迅速審査案件資料を迅速審査委員に送付する
3) 迅速審査委員は、審査結果を書面(電子媒体を含む)によって委員長に報告する
4) 委員長は、迅速審査委員の審査結果を取りまとめて全委員に報告する

なお、迅速審査委員として、木村、片山、山上、稲葉、徳永、松岡各委員を委員長が指名した。

3. 第1号(受付第1号案件)
「ヒト間葉系幹細胞の分化誘導メカニズムの解明」
実施責任者:川野誠子助教授(難治病態プロジェクト研究室)

本申請は、既に承認を受けて実施された「幹細胞から心筋細胞への分化誘導に関する研究」(平成12年12月20日付け審査、研究期間:平成13年3月−より平成17年3月まで)に類似した研究であるが、前回の委員会で協議の結果、改めて研究計画書の提出を受けて再審査することが妥当であると判定した研究である。提出された研究計画に関して、特に研究に用いるヒト由来試料について説明を受け、種々協議の結果、本研究計画を承認することが妥当であると判定した。なお、研究には以下の条件を付すものとした。

1. 研究に用いる間葉系幹細胞は、市販ヒト骨髄系幹細胞に限ること

4. 第2号(受付第2号案件)
「サイクリンD1の心筋特異的核内発現によるヒト心筋細胞再生法の開発」
実施責任者:北嶋繁孝教授(遺伝生化)

本研究は、本学医歯学総合研究科との共同で、終末分化したヒト心筋細胞の分裂増殖法を開発するものである。研究の概要について北嶋教授より説明があり、特に試料採取の手続きについて種々の質疑応答を行った。協議の結果、以下の点について加筆、修正した研究計画書の提出を受け、委員長が内容を確認した上で、再審査あるいは迅速審査に付すこととした。

1. 遺伝子解析研究実施計画書の研究方法の心筋生検標本を心筋手術標本に変更すること
2. 個人識別情報の取得範囲、方法および管理体制を明確にすること
3. 試料提供者の範囲(基礎疾患、年齢、代諾の有無など)について明確にすること
4. 試料提供者への説明と同意取得は原則として研究実施者以外が行うこと
5. 付帯意見:同意書では、研究責任者ないし試料採取責任者名を宛先として明記することが望ましい

5. 第3号(受付第3号案件)
「C型肝炎患者に対する抗ウイルス療法の治療効果に関連する遺伝子の解析」
実施責任者:村松正明教授(分子疫学)

本研究は、本学医歯学総合研究科との共同で、C型肝炎の治療効果と遺伝子多型との関連を研究するものである。研究の概要について村松教授より説明があり、想定される症例数、想定される解析対象遺伝子を含め、種々の質疑応答を行った。協議の結果、以下の条件で研究計画を承認することが妥当であると判定した。

1. 本学医歯学総合研究科で既に承認されている当該研究計画の研究遂行者メンバーとして村松教授が加わることを同研究科倫理審査委員会に申請し、その承認を受けること
2. 本研究計画の内容、対象、期間は、本学医歯学総合研究科で承認された研究計画の範囲とすること
3. 付帯意見:(1)個人情報(カルテ番号)が含まれる症例登録票が研究遂行者に直接送付されることは望ましくない、(2)同意書では、研究責任者ないし試料採取責任者名を宛先として明記することが望ましい

6. 第4号(受付第4号案件)
「動脈硬化、肥満及び糖尿病の病因候補遺伝子の遺伝子型疫学研究」
実施責任者:村松正明教授(分子疫学)

本研究は、慶應義塾大学医学部において平成15年7月に承認された研究計画に従って収集された試料を用いて、当該研究組織との共同で、動脈硬化、肥満あるいは糖尿病への感受性と遺伝子多型との関連を研究するものであるが、本件試料は採取時のインフォームドコンセントにおいて共同研究が想定されていない。研究の概要について村松教授より説明があり、対象とする試料数、想定される解析対象遺伝子を含め、種々の質疑応答を行った。協議の結果、以下の条件で研究計画を承認することが妥当であると判定した。

1. 既に承認されている当該研究計画の研究遂行者メンバーとして村松教授が加わることを慶應義塾大学医学部倫理審査委員会に申請し、その承認を受けること
2. 本研究計画の内容、対象、期間は、慶應義塾大学医学部で承認された研究計画の範囲とすること

7. 第5号(受付5号案件)
「重症薬疹発生患者におけるHLA及び薬物代謝酵素に関連する遺伝子の検討」
実施責任者:村松正明教授(分子疫学)

本研究は、多施設共同研究によって、ある特定の薬剤による薬疹の発症とHLAおよび薬物代謝酵素遺伝子の多型との関連を研究するものである。研究の概要について村松教授より説明があり、症例数の設定根拠を含め、種々の質疑応答を行った。協議の結果、以下の条件で研究計画を承認することが妥当であると判定した。

1. 同意書には宛先(研究責任者ないし試料採取責任者)を明記すること
2. 同意書は、説明項目を記載し、項目ごとにチェックを入れる様式とすること
3. 同意書は試料採取施設において保管すること
4. 患者集団に100%存在するような診断学的価値のあるHLA型があることが判明した場合には、試料提供者への遺伝子情報開示についても考慮すること
5. 大学院生、専攻生は研究補助者とすること

8. 倫理審査にかかる実施審査申請書および遺伝子解析研究実施計画書の記載について

第8号案件と関連して、当委員会への研究計画審査申請の様式には、研究責任者、研究実施者を記載する欄はあるが、大学院生、専攻生、研究補佐員などの研究補助業務にあたる者の氏名を記載する欄がないことが指摘された。協議の結果、これらの研究補助者も遺伝子解析研究に関わることから、別紙様式1、別紙様式1−2などにおいて、研究補助者の氏名、所属、身分を記載する欄を設けることとし、委員長が当該様式を修正するものとした

9. 第6号(受付第6号案件)
「変形性関節症および骨粗鬆症の遺伝的成因に関する研究」
実施責任者:村松正明教授(分子疫学)

本研究は、順天堂大学医学部において平成14年6月に承認された研究計画の一部として、変形性関節症および骨粗鬆症と遺伝子多型との関連を研究するものである。研究の概要について村松教授より説明があり、特に共同研究体制について、種々の質疑応答を行った。協議の結果、研究計画書の共同研究機関の記載から現時点で想定されていない機関を削除し、以下の条件で研究計画を承認することが妥当であると判定した。

1. 順天堂大学医学部で既に承認されている当該研究計画の研究遂行者メンバーとして村松教授および木村助手が加わることを順天堂大学医学部倫理審査委員会に申請し、その承認を受けること
2. 本研究計画の内容、対象、期間は、順天堂大学医学部で承認された研究計画の範囲とすること

10. 第7号(受付第8号案件)
「エストロゲン受容体多型と更年期障害に関する遺伝子解析研究」
実施責任者:村松正明教授(分子疫学)

本研究は、千葉県立東金病院および千葉大学との共同で、千葉県立東金病院において平成14年7月、平成15年7月および平成17年2月に承認された研究計画に従って、エストロゲン受容体の遺伝子多型と更年期障害との関連を研究するものである。研究の概要について村松教授より説明があり、想定される症例数、共同研究体制を含め、種々の質疑応答を行った。協議の結果、以下の条件で研究計画を承認することが妥当であると判定した。

1. 千葉県立東金病院で既に承認されている当該研究計画の研究遂行者メンバーとして村松教授が加わることを千葉県立東金病院倫理審査委員会に申請し、その承認を受けること
2. 本研究計画の内容、対象、期間は、千葉県立東金病院で承認された研究計画の範囲とすること
3. 大学院生、専攻生は研究補助者とすること

11. 第8号(受付9号案件)
「ヒト間葉系幹細胞の分化過程におけるゲノムDNAの修飾について」
実施責任者:江面陽一講師(分子薬理学)

本研究は、本学医歯学総合研究科において平成17年5月に承認された研究計画の一部として、骨髄液中や海綿骨中に存在する幹細胞からの細胞分化に伴うDNAメチル化を研究するものである。研究の概要について江面講師より説明があり、種々の質疑応答を行った。協議の結果、以下の条件で研究計画を承認することが妥当であると判定した。

1. 本学医歯学総合研究科で既に承認されている当該研究計画の研究遂行者メンバーとして野田教授、江面講師が加わることを本学医歯学総合研究科倫理審査委員会に申請し、その承認を受けること
2. 付帯意見:(1)試料提供者に対する説明書における「個人情報の保護について」の記載内容が理解しづらいため修正が望ましい。特に、研究責任者が個人情報を管理するかのような印象を与えることは避けるべきである、(2)同意書では、研究責任者ないし試料採取責任者名を宛先として明記することが望ましい

12. 第9号(受付第7号案件)
「染色体異常症を疑う遺伝疾患の潜在的ゲノム構造異常の探索と疾患遺伝子の同定、ならびに遺伝子診断法の開発」
実施責任者:稲澤譲治教授(分子細胞遺伝)

本研究は、すでに本倫理審査委員会により承認された研究計画(「染色体異常を指標にした疾患遺伝子の同定と新しい解析法の開発に関する研究(研究責任者稲澤教授、平成13年8月28日付承認)」、「染色体異常を疑う遺伝疾患の潜在的ゲノム構造異常の検索と疾患遺伝子の同定、ならびに遺伝子診断法の開発(研究責任者稲澤教授、平成16年3月26日付承認)」、「マイクロアレイとその関連技術を用いた染色体異常症を疑う遺伝疾患の潜在的ゲノム構造異常の探索と疾患遺伝子の同定、ならびに遺伝子診断法の開発(研究責任者井本助教授、平成16年3月26日付承認)」)に類似した研究であり、他施設共同研究によって、遺伝疾患における潜在的ゲノム構造異常の探索と疾患関連遺伝子の同定を行うものである。全国の多数の試料採取施設において採取される試料の保存と解析を当研究施設が中心となって担当する。研究計画について稲澤教授より説明を受け、種々の質疑応答を行った。協議の結果、以下の条件で研究計画を承認することが妥当であると判定した。

1. 同意書のひな形、中止請求書のひな形に宛先(試料採取責任者または研究責任者)の記入欄を設けること
2. 試料提供者への説明文書に、セルライン化に関する説明および解析終了後の試料保存に関する説明を加えること

13. 第10号(受付第10号案件)
「難治疾患研究所・大学院教育研究支援バイオリソースの設置」
実施責任者:稲澤譲治教授(分子細胞遺伝)

本研究は、ヒト試料を用いた研究を支援することを目的として、それぞれの研究者が「ヒトゲノム・遺伝子解析研究の関する倫理指針」に従い、当該研究施設の倫理審査委員会において承認された研究計画のもとで新たに収集されたヒト由来試料を研究者よりの寄託を受けて保存、管理を行うものである。このため、試料保存、試料およびその付帯情報利用に関する同意取得および試料提供ならびに当該試料を用いた研究については試料寄託研究者の責によるものである。研究計画について稲澤教授より説明を受け、種々の質疑応答を行った。協議の結果、以下の条件で計画を承認することが妥当であると判定した。

1. 試料の取り扱いについては、当該試料の寄託研究者が受けた倫理審査委員会による承認の範囲に限ること