トップインタビュー 田上順次

田上順次

歯学部長
う蝕制御学分野教授
女性研究者支援対策会議運営委員

先生の座右の銘がありましたら教えて下さい。

特に「座右の銘」といえるものはありませんが、強いていうなら、臨床においては、仕事を楽しくやるように心がけています。自分が楽しく仕事をすることで、患者さんの気持ちも前向きになると思います。

研究面では、守りに入らず、いつも攻める気持ちで、新しいことにチャレンジする姿勢が大切でしょうね。

そして教育面ですが、学生とは本音で気取らずにフレンドリーに接することを心がけています。教員自身がフレンドリーでないと学生も近づいて来ませんし、学生には距離感を感じさせないようにしたいと思います。

先生ご自身のワーク・ライフ・バランスはどのようなご様子ですか?

年代的にもポジション的にも、どうしても「ワーク」が占める割合は高いですね。趣味は読書で、本屋さんに行って新しい本を眺めたりすることもあります。好きなジャンルは時代小説です。学生によく薦める本は、「坂の上の雲」、「コンティキ号漂流記」「鬼平犯科帳」の3冊です。どれも研究や教育での重要な視点が養える本です。

「坂の上の雲」は、世界や国際社会の中でどうやって生きていくのか、どうやって研究をやっていくのか、という視点を養えるので研究者向きです。
「コンティキ号漂流記」では、勇気を持って一歩踏み出すことの大切さがわかります。
「鬼平犯科帳」で人情を大切にする鬼平の姿勢は、教育や指導者にもつながると思います。

家での過ごし方ですが、なるべく家族と話をするように心がけています。まずは家族とのコミュニケーションが大切でしょうね。私には娘がいますが、小さいころはよく一緒にキャッチボールをしました。そのお陰か、娘は学生時代ソフトボール部で活躍していました。家族で野球好きですし、ヤクルトスワローズを応援しています。

また、介護とまでは行きませんが、家で自分の親の世話をすることもあります。平日は妻が親の世話をしてくれているので、週末は妻の手伝いをすることもあります。

少子高齢化時代の女性研究者の役割についてお考えをお聞かせ下さい。

本学の歯学部では教授42名中、6名の女性教授がおり、日本の歯学部では最も女性教員比率が高いです。ただ臨床系ではまだ少ないので、今後は臨床系での女性教員が増えることを期待します。また学生や院生の女性比率は高いですから、それと同じくらい高い比率で女性教員が増えて欲しいですね。

実際には日本の女性の臨床現場での歯科医師数は、まだ数が少ない現状があります。日本で女性の歯科医師が増えると、新しい歯科医療の環境を作っていく大きな力になると思います。これまでの日本社会には、長男が家を継ぐといった風潮がありましたが、そのせいか最近は男性の方が現実的で守りに入っているような気がします。女性の方が、おそらく自分の将来について親に相談しても、「何をやってもよい」と言われることが多いからではないでしょうか。その考えが反映されて、女性でよりチャレンジしている人が増えているような気がします。また、自分の将来についてアグレッシブに求めている女性が増えているような気がします。

私の部屋では、女性の院生の方が男性よりも人数が多いです。ですので、在学中に子供を産む人多いですし、出産後に復帰している人もたくさんいます。研究と育児とを両立している人は、論文や勉強の計画性もしっかり兼ねているように思います。実際に育児を経験することは、人として色々な面での力になり、強みにもなると思います。

2020年までに女性研究者比率を20%にするのにどんなことを実行しておられますか?

育児中も働きたいと思っている女性は多いと思います。ですので、育児や介護中の女性にとっても、週3日勤務など、自分に可能な勤務日を選択できるシステムがあればよいと思います。また年休の取り方を半日や一日単位でなく、週や月の時間単位でも使えると、仕事が続けやすくなるでしょう。このように、フルタイムよりも緩やかな勤務体制で働き、子供の手がかからなくなったときにまた完全復帰できるといいですね。

研究は継続性がありますから、パートタイム勤務でも学内のセミナーに参加することはできますし、最先端のところにキャッチアップしてつながっていることで自分自身も安心するはずです。そういったことが出来る環境作りが大切ですね。

女性研究者へのメッセージをいただけますか?

女性にはどんどんチャレンジしてほしいです。女性歯科医師が増えることは、新しい歯科医療の環境作りの大きな力になると思います。私は男女を問わず、いい家庭を持って、いい仕事をしてほしい。また、研究に打ち込むだけで生きるのではなく、「人として生まれての営み」を持って欲しいです。ライフとワークの両方があって、それぞれにおいて充実して欲しいです。

臨床でも何でも、気が回る人は仕事ができると思います。女性は男性よりも細やかですし、気が回る人は多いのではないでしょうか。「細かいところにも気が届く」ことを発揮して頂きたいですし、やはり女性がいると研究室や臨床の現場の雰囲気が華やぎますし、明るくなります。そして、女性特有のライフイベントを経験することは、研究者として、教育者として、医療人としての能力の一部にもなると思います。

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