お知らせ

握力低下はドミノ骨折注意のサイン?―握力とバランス能力低下が骨折の危険因子になる―
記者説明会を実施しました

東京医科歯科大学医学科・大学院医歯学総合研究科とJA共済総合研究所が2016年4月に設立したジョイントリサーチ講座「運動器機能形態学講座」は、運動器の機能、構造、形態、疾患、障害を総合的・多角的に解明し、予防することにより、超高齢社会における農山漁村の地域住民、延いては国民の健康維持、増進を図り、社会全体の公益に寄与することを目的として研究を続けてまいりました。このたび、同大学院整形外科学分野との共同研究により、その研究成果の1つである「Lower grip strength and dynamic body balance in women with distal radial fractures」が骨粗鬆症医学誌 『Osteoporosis International』 オンライン版(2019年1月4日)に掲載されました。この研究では、手関節骨折患者の解析を通して、握力、身体バランス能力の低下が転倒、骨折のリスクとなること、ドミノ骨折リスクを評価するスクリーニングとして握力やバランス能力測定が有効である可能性を示しました。これについて、 2019年3月19日(火) 18時から記者説明会を実施いたしました。

  • ご挨拶
    東京医科歯科大学医学部附属病院長 大川 淳

  • JA共済総合研究所を代表してご挨拶
    JA共済総合研究所医療研究センター長 加藤 龍一

  • ジョイントリサーチ講座代表ご挨拶
    運動器機能形態学講座 准教授 二村 昭元

  • 研究内容のご説明
    先端医療開発学講座 整形外科学 助教 藤田 浩二

研究成果のPPTの1~5

詳細について

一般社団法人 JA共済総合研究所 医療研究センター長  加藤龍一

主旨

国際的に高く評価されている英国の骨粗鬆症に関する国際医学学術誌Osteoporosis International に論文が掲載されたことから東京医科歯科大学医学部付属病院主催で記者会見を実施します。

今回の論文についてはJA共済総合研究所と東京医科歯科大学との共同研究講座(ジョイントリサーチ講座)の成果の1つであるため、記者会見においてJA共済総合研究所の取組み、講座の設立経過等も紹介いたします。

論文

「Lower grip strength and dynamic body balance in women with distal radial fractures」

一般社団法人 JA共済総合研究所について

JA共済総合研究所は、JA共済関係の総合研究機関として、平成3年4月に設立され、農山漁村地域における生命・財産の保障、事故予防、高齢化に伴う諸課題への対応等に関する調査研究や教育研修活動を実施することにより、地域の皆さまの生活の安定及び福祉の向上に寄与することを目的に活動を行っております。

研究所設立以来27年余を経、この間順次、体制を整えながら系統農協はもとより、組織内外の有識者や実践者、大学その他の研究機関、関係諸団体のご協力をいただきながら、中・長期的な視点に立った創造的かつ総合的な調査・研究・研修等に取り組んでまいりました。

現在、当研究所では「農山漁村地域に貢献する事業」を実施事業計画の基本として位置付けております。 特に、農山漁村地域における生活の安定及び福祉の向上に関する調査研究のうち【重点的に取り組む研究領域】として
①農山漁村地域の社会保障・福祉に関する調査研究
②農山漁村地域の再生・活性化に向けた調査研究
③農山漁村地域の事故医療等に関する調査研究
の三点を掲げております。

当研究所の医療研究研修部では、③農山漁村地域の事故医療等に関する調査研究ついて、地域で起きる事故によって生じる外傷に関する医学的、社会医学的研究を行ってまいりました。具体的には交通事故による外傷と、転倒事故による外傷の研究が中心となります。

共同研究講座(ジョイントリサーチ講座)について

平成22年頃より交通事故の診断や治療、賠償上での因果関係で問題となり易い「肩腱板断裂」や「外傷性頚部症候群」に関する調査研究を東京医科歯科大学の臨床解剖学分野 秋田恵一教授、整形外科学分野 二村昭元先生に委託研究をお願いすると共に、JA共済総研でも臨床症状、画像診断について検討し、共同で研究を行ってきた経緯がありました。

その後、運動器疾患をより多角的に解明し予防することにより、超高齢社会における農山漁村の地域住民、延いては国民の健康維持、増進に寄与することを目的として、平成28年度からジョイントリサーチ講座(運動器機能形態学講座)を設置し、大学とJA共済総研の協働で運動器の構造、機能、さらに転倒事故予防に関する研究を行うこととなりました。

今回発表された論文のテーマは、日本の将来像として農山漁村地域で先行している急速な高齢化問題が、運動器(脊椎、骨、関節、筋肉、神経等)の健康と維持に与える影響を解明し、転倒や骨折といった運動器障害や介護予防を目的として実施した調査・研究の初期の成果です。

初発の脆弱性骨折といわれている橈骨遠位端骨折(手関節の骨折)は、やや若年の4~50歳代から発症し、適切な介入をしないとその他の部位の骨折が連鎖(いわゆるドミノ骨折)することが知られています。しかし、どのような人が橈骨遠位端骨折するのか、骨折後にどのような体力状態になるかについては不明のままでした。また脆弱性骨折の患者数は年々増加しており、骨折後の治療だけでは立ち行かなくなる状況が想定されています。

そこで、本骨折受傷者の身体的な特徴を明らかにし、将来の骨折予防に貢献することを目標に研究を開始しました。

今回の研究成果について

これまでに行ってきた研究が、エビデンスを伴った国際論文として形になったため、得られた知見を地域住民の健康維持のための情報提供や、転倒事故予防の活動に活かすことが出来ると考えています。

特に今回の研究では50歳くらいの比較的若い年代から、握力や体幹バランス能力が低下しはじめることが判明しました。いわゆる、フレイル、サルコぺニア、ロコモティブ症候群といった、運動能力の低下による骨折の危険が、高齢者のみのリスクではないことが明らかになったことが重要と考えています。

今後の展望について

今後の展望としては、転倒、骨折のリスクとなりうる歩行中のバランス低下の可視化を目指して新たな研究を始めており、予防運動プランなどを構築していきたいと思います。既存の予防体操やその指導にとどまらず、情報工学や環境工学、建築学等を応用し、日常の生活の中で無意識に運動維持に役立っている行動や生活習慣を明らかにし、可視化することによって、実生活レベルでの運動機能の維持増進方法を創出していきたいと考えています。

また、解剖学的な成果として得られた「関節の安定化構造」の理解から、構造と機能の融合をめざして、画像診断精度の向上やリハビリテーションプロトコールの開発などにも参入していきたいと考えております。