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医療関係者の方へ

リウマチ、膠原病患者における新型コロナウイルス感染症レジストリRheumatology COVID-19 Registryについて

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は急速に拡がり、2020年3月11日、世界保健機関(WHO)がパンデミック(世界的流行)を明言するに至りました。リウマチ、膠原病患者、免疫抑制薬服用患者におけるCOVID-19の診療の現状、予後、問題点を明らかにすることを目的として、世界各国のリウマチ科医有志が中心となり、膠原病患者におけるCOVID-19レジストリを立ち上げ、情報収集を開始しました。本講座医師も計画段階から参加しており、現在、日本語版の症例報告書(CRF)を作成、近日中に日本からの登録を開始する予定です。リウマチ、膠原病患者におけるCOVID-19診療の問題点を世界と協調しながら、明らかにすることができると期待しています。

NinJaについて

成人における関節リウマチ(rheumatoid arthritis, RA)患者について、2016年度より、国立病院機構相模原病院が中心となって行っている全国規模(約15,000例)のRA患者情報収集ネットワーク(National Database of Rheumatic Diseases in Japan: NinJa)に参加しています。本学医学部附属病院膠原病・リウマチ内科外来通院中の関節リウマチ症例のデータを提供しており、今後はネットワーク全体のデータを利用した解析を行っていく予定です。

CoNinJaについて

本研究は、上記RA研究(NinJa)と同じプラットフォームを有する全国規模のJIAデータベース(Children’s version of NinJa: CoNinJa)を構築し、長期的に調査を継続することで、本邦のJIA診療の現状や長期的な予後、問題点を明らかにすることを目的としています。国立病院機構相模原病院リウマチ科部長である松井利浩先生が本講座在職中から計画・構築を行ったプロジェクトです。大規模かつ継続性のあるJIAデータベース構築は本邦初の試みであり、本邦におけるJIA診療の実態および問題点を明らかにすることができると期待されます。また、先行RAデータベースと比較することで、成人RAとJIAの治療法や活動性の相違、予後の比較などを行うことも可能となり、種々の研究に資する情報が収集可能です。

膠原病診療における移行期医療の実践と問題点の抽出

2018年度より,本講座では膠原病分野の移行期医療に実際に取り組んでいます.本来目標とする移行はいわゆる“transition”ですが、まずおおよそ20歳以上の方で十分安定している方を対象に、成人科に“transfer”することにし、実際に成人科に移行した方および成人膠原病科医師を対象にアンケート調査を行い、問題点を抽出します。

またこの研究とは別に、さらに若い年齢の方からを対象とした“移行期外来”の開設に向けて現在検討中です。今後さらに発展させるべき移行期医療について、当講座が本学でリードしていくべき課題として取り組んでいます。

患者の会との連携:若年性特発性関節炎(JIA)患者と家族を対象にした
移行期医療に関するアンケート調査

移行期医療を充実させるためには、患者や家族のニーズを把握することが重要ですが、小児リウマチ性疾患の患者やその家族における移行期医療の意識調査は今までに報告がありません。そこで、若年性特発性関節炎(JIA)患者の親の会である、あすなろ会の会員を対象に、移行期医療に関するアンケート調査を実施しました。アンケート結果から、① 移行期医療についての啓蒙はまだ不十分であり、さらなる啓蒙活動が必要であること、② 成人リウマチ科医は小児リウマチ性疾患について学び、小児科と成人科の連携体制を構築する必要があること、③ 病気自体の経過・予後、結婚・妊娠・出産などについて疫学研究が必要であること、が抽出されました。今回の結果を踏まえ、今後の移行期医療に関する疫学研究や啓蒙活動の充実を図りたいと考えています。

自己免疫疾患患者のTRECs・KRECsによる免疫不全症のスクリーニング

免疫不全患者が、自己免疫病態を発症することは一般的に知られていますが、初発症状が自己免疫疾患であった免疫不全患者の報告は非常に少ないです。しかし、これらの症例は一定数存在し、過度な免疫抑制は感染症による重大な合併症を生じる危険が高いと考えられます。現在免疫不全のエキスパート集団である当院の小児科と連携し、自己免疫疾患で発症した免疫不全の患者の拾い上げを行うことを目的に、新規膠原病患者の末梢血にてT cell receptor excision circles(TRECs)やKappa deleting recombination excision circles(KRECs)の測定を行っています。

臨床的フェノタイプ分類と分子基盤研究に基づいた
新規バイオマーカーの同定および川崎病診断法の開発

私たちは先行研究(Scientific Reports 2017)で開発した川崎病関連4タンパク質のバイオマーカー(BM)としての有用性を評価する臨床試験(UMIN000028340)を開始しており、そこでの詳細な臨床データを有しています。本研究では、その豊富な臨床情報などに基づいたフェノタイプ分類による川崎病症例のサブグループ化を確立し、次世代プロテオミクスを用いた新規川崎病特異的BMの開発と、モデルマウスでBMの有用性の検証を行い、臨床症状に基づく診断基準をBMで補強した川崎病診断法を確立すべく研究を進めています。

成人膠原病患者における免疫不全症に関する研究

当院小児科では、原発性免疫不全症(PID: Primary Immunodeficiency)を主に診療・研究の対象としています。PIDは元来、易感染を主な特徴とする疾患群と考えられていましたが、昨今は、自己免疫疾患や自己炎症性疾患など、様々な臨床像をとることが知られるようになってきました。また、PIDは先天的な免疫の異常症ですが、成人期に発症する症例も多数報告されています。

フランスにおける2,183名のPIDコホートにおいて、約3割が自己免疫疾患を合併していたと報告されました(Fischer A et al. J Clin Immunol. 2017; 140(5): 1388-1393)。自己免疫疾患合併症例のうち、約15%は膠原病・リウマチ疾患でした。このコホートにおいて特筆すべきは、自己免疫疾患を合併した症例は、合併していない症例に比べて、予後が悪かったということです。自己免疫疾患に対する免疫抑制剤による治療は、PIDの易感染性を顕在化させ、感染症を増悪させる要因となりうることを示唆しています。

このように、PIDにおける自己免疫疾患については、認知が広がってきています。一方で、自己免疫疾患において、潜在的な要因としてPIDが潜んでいる可能性については、あまり着目されていません。そこで我々は、当院の膠原病・リウマチ内科に通院する患者さんたちのコホートにおいて、PIDを示唆する症例の検討を行うこととしました。

単一遺伝子異常による全身性エリテマトーデス(monogenic SLE)に関する研究

全身性エリテマトーデス(Systemic Lupus Erythematosus; SLE)は、多因子遺伝病と考えられ、2000 年代中盤からゲノムワイド関連解析(genome wide association study; GWAS)が盛んに行われてきました。多くの疾患感受性遺伝子が同定され、大部分は免疫に関連する遺伝子であり、自然免疫、獲得免疫にわたり、さまざまな免疫担当細胞が病態形成へ関与することが明らかになりました。これら多くのコモンバリアントによってSLEの遺伝要因が説明される一方で、補体欠損症に代表されるような、単一遺伝子異常によりSLEが発症する(monogenic SLE)ことも古くから知られていました。

次世代シークエンサーを用いた全エクソーム解析などの手法によって、monogenic SLEの原因遺伝子が多く同定され、その多くはPIDに分類されています。一方で、PIDのコホートにおいても、一部の症例でSLEを発症していることが知られるようになりました。これら遺伝子の一部はGWASの疾患感受性遺伝子にも含まれていますが、多くの遺伝子がGWASでは同定できなかった遺伝子であり、今後も、monogenic SLEによって解明される病態があると考えられます。

我々は、PID、monogenic SLEについての探索を行っています。

ダウン症候群児におけるRSV全国調査

Respiratory syncytial virus (RSV)は小児の呼吸器感染症の主要な病原体です。2013年8月にヒト化モノクローナル抗体(パリビズマブ)の適応が拡大され、全てのダウン症候群(Down syndrome: DS)児に投与が可能となりました。しかし、DS児におけるRSV感染症の疫学調査は本邦では無く、実態は明らかでありません。そこで、我々は、全国の小児科664施設に調査票を送付し、2010年4月から2016年3月までに受診した5歳未満のDS児について、心疾患、在胎週数などの基礎データ、パリビズマブ投与の有無、RSV感染による入院の有無を調査しました。入院症例については、詳細についても調査しました。

結果、321施設(48.3%)から回答があり、4,980例について検討を行いました。適応拡大後、パリビズマブの投与率は8割程度まで増加していました。入院症例は517例(10.4%)でした。低リスクDS児(正期産、心疾患無し)の入院率は、適応拡大により低下していました(p=0.03)。

多施設のご協力のもと、DS児におけるRSV感染の実態について大規模な観察研究を行いました。

 

研究紹介

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