5)遺伝子病   *2)遺伝(子)病にてあげた例を細かく取り上げていく
・単一遺伝子型遺伝子病 (メンデル型)

 A.変異が限局している例:遺伝子診断⇒特定部位の変異のみを検査すれば判断できる

  ・APRT欠損症 - adenine phosphoribosytransferase - 
   突然変異箇所 コドン136 ATG ・ ACG   (Met ・ Thr)
          コドン 98  TGG ・ TGA   (Trp ・ Stop)
                         この2種変異が全変異の89%を占める。

  ・軟骨無形成症 (小人症の一つ)
   FGFR3 - fibroblast grows factor receptor 3 - の異常
        繊維芽細胞  成長    因子    受容体
   突然変異箇所 コドン380 GGG ・ AGG   (Gly ・ Arg) 変異の93%を占める。
          コドン380  GGG ・ CGG   (Gly ・ Arg) 変異の3%を占める。

 B.変異が多彩な例:遺伝子診断にむかない

  (a)Lesh-Nyhan 症候群
     HPRT 欠損症 - hypoxanthine guanine phosphoribosyltransferase -
   プリント2参照のこと

 C.3塩基リピート型遺伝子症 遺伝性の精神・神経変性疾患の原因として研究されている。

  • ハンチントン病など
  • それまでは脳の異常部位を採取してその病気が発症しているのかそうでないのかを判断していた。
  • 遺伝子が同定されることにより脳を採取しなくても血液から判断できる。しかも発症前に予知できる。
  • 発症前診断:白血球のDNAを調べる。赤血球は無核。
  • メンデルの法則に反する特徴を持つ。
   ・疾患を伝えた親の性によって次世代の重症度が異なる。
   ・世代を経るごとに発症年齢が若年化する。

病名
遺伝子座位
トリプレットリピート
反復位置
反復回数
健常者
反復回数
患者
コードする
タンパク質
より重症となる親の性
ハンチントン病
4p16.3
CAG
エクソン
6-36
42-121
ハンチンチン
歯状核・赤核淡蒼球ルイ体位縮症 DPRKA
12p13.3
CAG
エクソン
8-35
49-88
DPRLAタンパク
フリードライヒ
失調症
9q13
GAA
イントロン
7-22
200->900
フラタキシン
差はない
脆弱X症候群
Xq27.3
CGG
5'-非翻訳領域
6-52
230->1000
RNA結合タンパク
筋緊張性
ジストロフィー
19q13.3
CTG
3'-非翻訳領域
5-37
50->1000
ミオトニンキナーゼ


ヒトゲノム中の遺伝子・約10万種類

 メンデル型遺伝形質:6676種(1998現在)
┣常染色体優性遺伝形質:4509種─常染色体優性遺伝子病┬軟骨無形成症(FGF−R3異常)
┃                         ├ハンチントン病(CAGリピート)
┃                         └家族性高コレステロール血症*(LDL−R異常)
┣常染色体劣性遺伝形質:1731種─常染色体劣性遺伝子病─嚢胞性線維症(Cl−チャンネル異常)
┣X連鎖遺伝形質:417種┬X連鎖優性遺伝子病─ビタミンD抵抗性くる病
┃           └X連鎖劣性遺伝子病┬レシュ・ナイハン症候群(HPRP)
┃                     ├血友病A(第8因子異常)
┃                     └赤緑色盲(赤・緑色素イオドプシン異常)
┗Y連鎖遺伝形質:19種

*家族性高コレステロール血症

遺伝子型
血中コレステロール(mg/l)
備考
AA
600-1000

重症・致死。子孫は残せない。

Aa
300-500

罹患者の大半を占める。

aa
130-220

正常

Aa×aa=(Aa+Aa+aa+aa):子どもの二人に1人が発症。


・多因子型遺伝子病 高血圧・糖尿病

 量的形質=連続形質:形質量は集団の中では連続した値をとる。(正規分布する)

量的形質も遺伝子に支配されているとすると、次の2つの仮説により多因子型遺伝子病を説明できる。

仮説・同義遺伝子:個々の遺伝子の作用は小さいが、効果は等しい。

  ・相加遺伝子:遺伝子全体の効果は個々の遺伝子の総和に等しい。

 

例;血圧 (仮に5個の遺伝子によって決定されるとする。)

●血圧上昇(多いと高血圧)
○血圧下降(多いと低血圧)


・ミトコンドリア遺伝子病 (非メンデル遺伝)

ミトコンドリアDNA:(16569bp)環状2本鎖DNA
1個の細胞に数百〜数千コピー・現在59種のミトコンドリア遺伝形質を確認

責任遺伝子は全て母由来(母系遺伝)

同一遺伝子変異でも患者によって症状や疾患部位が異なる。(ミトコンドリアに異常がある細胞がどの部位に分化するにより異なる。)

補足:疾患自体は原則的に遺伝しない。(ミトコンドリアに異常がある細胞が生殖細胞に分化したときのみ遺伝する。)


・染色体異常型遺伝子病

染色体異常;1)数の異常:トリソミー・モノソミー
      2)構造異常

ダウン症候群

21番染色体トリソミー

60-1500に1人

18−トリソミー症候群

18番染色体トリソミー

6000-9000に1人

1:4で女子に多い

13−トリソミー症候群

13番染色体トリソミー

ターナー症候群

X染色体モノソミー

女子の2000に1人

トリプルX女性

X染色体トリソミー

女子の1000のに1人

クラインフェルター症候群

XXY

男子の1000に1人

XYY男性

XYY

男子の1000に1人

猫なき症候群

5番染色体短腕欠失

40000-50000に1人

女性に多い

ウォルフ症候群

4番染色体短腕欠失

常染色体に異常をもった個体の多くは発生の過程で死ぬ。
女性の方が病気が多いように見えるのは、女の方が男よりも強いから。つまり男は異常があると生まれず死ぬが、女は生まれる。

染色体異常の原因

  • 卵子のageing
  • ウィルス感染
  • 放射線・X線
  • 発ガン性・催奇性を有する物質