東京農業大学教養科目講義「生物学」

授業の目的
 地球上には多様な生物が生息しており、「種」という基本的な分類単位を認識することができる。これらの種は、それぞれ地球上で独立に創造されたのではなく進化してきたもので、類縁関係がある。一方、種は生殖によって自分と姿かたちが同じ子を生み出す。違いを認識して類縁関係を考える「系統分類」と、似た子が生み出される「遺伝」とは一見すると矛盾するが、これを繋ぐものが遺伝情報を担っているDNA分子である。すべての生物は、細胞という基本単位から構成されており、細胞は形や働きが異なっている。細胞には核があり、核の中に納められたDNAの遺伝情報が読み取られ(転写)、これをもとにタンパク質が作られ(翻訳)、このタンパク質の働きによって、細胞の形やはたらきが決まる。細胞分裂のときにDNAは同じものが複製されるが、まったく不変ではない。こうしたことを理解して、生物がさまざまな環境でどのように生きているのか探っていく。

授業計画および内容
 キーワード:生物多様性、進化、細胞、DNAとタンパク質、細胞分裂、発生と分化、免疫と神経、ホメオスタシス

1)科学とは何か、生物学とその方法
2)生物の多様性と進化の概念および遺伝
3)すべての生物は細胞から
4)細胞の多様な世界
5)何が細胞の形を決めているのか
6)転写と翻訳
7)細胞が生きて活動していくために
8)タンパク質が細胞のさまざまな活動を担う
9)多細胞生物への道
10)細胞の数を増やす
11)個体の数を増やす
12)個体を守る免疫システム
13)生きること死ぬこと
14)個体としてのまとまり
15)ふたたび進化と多様性

教科書
 「基礎から学ぶ生物学・細胞生物学」(第二版)和田勝、羊土社(2011) 3150円


ネット上およびメールでの問い合わせについて
 
 東京農大のメニュー画面から「授業のコミュニティー」をえらんで、授業に関する質問や意見を掛けるようになっています。また農大からメールアドレスをもらっていますので、質問等があれば下記の宛先に学籍番号と名前、それにタイトルを必ず付して送ってください。ただし、間髪をいれずに返事を出すのは難しいかもしれません、そこのところはお許しください。

m3wada@nodai.ac.jp


受講に際してのお願い
 15回の講義の流れの中で、上に書いた目的を達成するように講義を組み立てています。したがって1回抜けると、分からなくなってしまいます。この科目は選択必修の科目ですから、選択したら必ず出席してください。出席するいうことは予習と復習をして臨んでいることを言います。予習のためにシラバスには教科書の該当する章を読むように書いてあります。また「授業のお知らせ」で、講義の使うパワーポイントのファイルをなるべく早めに載せるようにしています。復習のために、このページでその日に行ったことと、講義で使ったパワーポイントのファイルや動画のファイルをを載せてあります。利用してください。

1単位というのは、60分の講義時間に加えて、60分の予習、60分の復習を行っていることを前提に与えられます。この科目は前期2単位のですから、1回90分(これを2時間と考えています)に加えて、2時間の予習と2時間の復習を皆さんが行っているという前提に立っています。ただ漫然と座っているのは出席とは言いません。

パワーポイントで授業をすると、ノートがとりにくいと言われます。ノートテイキングに関しては以下のページを参照してください。 最初のページは学習スキル全般に関するページです。英語(マンチェスター大学のページ)ですが、とても役に立ちます。特に「Developng as a Learner」の内容を見てください。

http://www.humanities.manchester.ac.uk/studyskills/

ノートテイキングについては、「Essentials」の中にあります。次のページです。

http://www.humanities.manchester.ac.uk/studyskills/essentials/note-taking/index.html

成績の評価について
 シラバスには「小テスト10%、レポート20%、定期試験70%」と書きました。

 毎回、マークシート式の出席カードを配布しますから、そこに必要事項のマークを黒い鉛筆で記すとともに、裏に必ず「今日の講義を受けて感じたこと、なるほどと思ったこと、感想など」、「質問」、「分からない点」などを書いてください。質問にはなるべく答えるようにします。講義の途中でも質問があれば聞いてください。

 出席は出席カードで点検し、みんなの意見やコメントはチェックします。上に書いたように、疑問に思ったこと、なるほどと思ったこと、学んだこと、質問などを必ず書いてください。また納得できたら、そのことも書いておいてください。そのことで学習状況などの、判断材料にしたいと思います。 


○第1回4月11日

第1回講義を行いました。
この回では、「生物学を学ぶにあたっ」というタイトルで、担当者の自己紹介の後、パワーポイントのスライドを使って、この講義の進め方から話をし始めました。スライドとして使用したおパワーポイントファイルはネット上に公開すると言いました。ファイルはシラバスの「授業のお知らせ」に添付ファイルとして載せてありますが、このWeb上でもファイルを載せておきます。
その後、スライドを使って、科学とは何か、科学の方法論、顕微鏡の発明、細胞という名前の由来などのお話をしました。

質問の中にレーウェンフックは役人だと記憶しているがというものがありました。スライドの中では織物職人とありましたが、正しくは織物商でした。訂正しておきます。

パワーポイントのファイルはここにあります。右クリックをして保存を選んでください。

○第2回4月18日

第2回の講義を行いました。
この回では、「二人は回り逢わなかった」というタイトルで、ダーウィンとメンデルという生物学上忘れてはならない二人の同時代人がめぐり逢うことはなく、ダーウィンは進化についての新しい考え方を、メンデルは遺伝に関する新しい考え方を、それぞれ2つの科学的な方法(帰納と演繹)で確立したことをお話ししました。お話としておもしろくするために、映画の話を大分したら時間がなくなってしまいました。次週に続きをします。

この回のポイントは、地球上には多様な生物が生息していること、それを区別してまとめあが得る方法を確立したのはリンネであること、それらの多様な生物は、当時考えられていたように神が創造したのではなく、自然選択によって進化してきたのだということ、進化の起こるためには4つの仮定が成り立てば起こること、をお話ししました。そうして、子は親に似ること、それは遺伝という現象だが、その仕組みをメンデルはエンドウを使って実験によって明らかにし、粒子的な「要素」を仮定して説明できることを明らかにしたことをお話ししました。この要素こそが後の遺伝子であり、物質としてはDNAであるわけです。

この回のキーワードは、生物の多様性、自然選択による種の起源、遺伝の法則、遺伝子DNA、でしょうか。

ベルが鳴ってからの紹介になりましたが、以下のWebPageをぜひ見てくださいと言いました。ぜひ見てくださいね。

DNA from the beginning
http://dnaftb.org/

この回で使ったパワーポイントのファイルはここにあります。右クリックをして保存を選んでください。

○第3回4月25日

第3回の講義では、「すべての生物は細胞から」ということで、細胞説の成立から実際の細胞の構造を、細胞小器官を中心にお話ししました。講義で触れた細胞小器官は、ともかく名前とはたらきを覚えておいてください。講義の最後に言いましたが、自分で図を描いて名前を付けると言ったプラクティスがいいと思います。

この回のキーワードは、細胞説、細胞小器官、サイトゾール、小胞体、リボソーム、ミトコンドリア、ゴルジ装置(ゴルジ体とも言います)などです。

この回で使ったファイルはここにあります。

なお、最初に予習のために載せたパワーポイントのファイルと、講義で使用したファイルに若干の違いがあることに気が付いた人もいたようですが、講義のリハーサルをしていてもう少しわかりやすくと思って、スライドの枚数を増やしています。悪く思わないでね。講義で使ったものを載せ直していますから、気になるヒトはもう一度ダウンロードし直して(上書きをして)ください。

なお、農大の授業のお知らせのページには、上に述べた細胞の図に関する補足が載せてあります。

○第4回5月9日

第4回の講義では、第3回で積み残した細胞骨格から細胞膜までのお話をしました。これで細胞のだいたいの構造と機能の説明をしたことになります。あとは「DNA→タンパク質」の流れの中で、それぞれの細胞小器官がどのような役割をはたしているのかをもう少し具体的に話すことになります。

この日は、その後で小テストを行いました。抜き打ちでけしからんという意見をいただきましたが、「授業のお知らせ」に細胞の図を自分で描いて、該当する細胞小器官の電顕写真を貼りつけるとよいということを示唆する内容のページを載せておいたので、勘の良い人なら「ちゃんと覚えよということだな」と気づいてくれたと思っていました。ですから同じ図を使っています。線がどこを指しているかわからないとか見えにくいということにはならないと判断して、印刷物ではなく、スライドで問題を出す形式にしました。担当者としては、言ったことがどれくらい伝わっているか、どのくらい復習をしているか、どのくらい教科書を読んでいるかを知りたかったのです。
小テストは転写と翻訳が終わった段階でやります。

今回は採点結果は成績判定に入れずに、担当者がみんなの学習態度の傾向を判断する材料に使うのみとします。ただし、正解率と得点分布などはここに載せておきます。このページの戻る場合は、ブラウザーの戻るマークをクリックしてください。

正解をという声がありましたが、細胞の図については「授業のお知らせ」を見てください。

その後で、第4回のパワーポイントファイルを使って講義を続けました。ここでは水素結合の重要性と、その結果生まれる水の特異な性質、生体高分子の話、特にタンパク質とDNAについてお話しし、タンパク質が20種類のアミノ酸のポリマーであることを説明しました。

タンパク質の構造はとても重要ですから、しっかりと復習をしておいてください。

この回で使ったパワーポイントのファイルはここにあります。

また最後に紹介した動物の細胞に関する動画はここにあります。スライドの最後の方で紹介したGoodsellさんのポスターはここにあります。


○第5回5月16日

第5回の講義では、DNAが遺伝子として認められるようになる過程のお話をし、その際にDNAの構造に需要な役割を演じたJ. ワトソンのTEDでの講演を見ました。あの変なおじさんはワトソン、その人なのですよ。講義の時間内でちゃんと見ることができなかった人は自分で調べてアクセスしてみてください。

その後、講義を続け、DNAの構造についてお話ししました。ACGTの4つの塩基の、3つの組み合わせが一つのアミノ酸をコードしていることを理解してください。道に迷った人は、もう一度スライドと教科書をよく読んで理解しておいてください。

この回で使ったパワーポイントのファイルはここにあります。

○第6回5月23日

第6回の講義では、第5回の積み残しを終え、続けて転写と翻訳をやや詳しくお話ししました。転写と翻訳の過程については正確に理解しておいてください。このような過程で細胞の中でタンパク質がつくられているのです。

この回の講義で使用したパワーポイントのファイルはここにあります。

講義の中で見た細菌のリボソーム上での翻訳の動画はここにあります。この動画は2010年度のノーベル賞受賞者であるラマクリシュナ博士のページからダウンロードしたものです。ノーベル財団のページにもアクセスしてみてください。

○第7回5月30日

前回予告したように、最初に小テストを行いました。

正解率と得点分布などはここに載せてあります。前回のテストに続けてありますので、下の方を見てください。このページの戻る場合は、ブラウザーの戻るマークをクリックしてください。

その後、スライドを使って膜タンパク質がどのようにしてリボソームで合成され膜に埋め込まれるかを第6回目のスライドの最後の部分を使ってお話ししました。
そして、理化学研究所んが作成したセントラルドグマというタイトルの動画を、翻訳と転写のまとめとしてみました。その動画はここにあります。

その後で、第7回のパワーポイントファイルを使ってエネルギー代謝の最初の部分をお話ししました。時間が無くなって、さわりの部分だけでしたが、生体の中では参加の過程は脱水素によること、徐々に起こること、脱水素の過程にNADという分子が重要なはたらきをしていることをお話ししました。ア、それと共役反応のこともお話ししました。

この回で使ったパワーポイントのファイルはここにあります。

6月6日は休講です。

○第8回6月13日

第8回目の講義は前回の続き、解糖とTCA回路についてお話ししました。教科書第4章の部分です。その後代謝のネットワークについてお話しする予定でしたが、解糖とTCA回路について丁寧に説明したので、時間が無くなってしまい、第8回には進めませんでした。次回にやります。

この回で使ったパワーポイントのファイルはここにあります。農大のページへのアップロードは6月13日におこないました

この回でお見せした動画、ATP合成酵素が回転している実際の動画はここに、その模式図の動画はここにあります。

○第9回6月20日

第9回の講義は、すぐ上にアップしてある第8回と書かれたパワーポイントファイルを使って、代謝のネットワークについてお話ししました。第4章の後半部分ですが、講義ではもう少し詳しくお話ししました。β参加については概略を覚えておいてください。

その後に、第9回の講義のパワーポイントファイルを使って多細胞生物への道(1)ということで、最初に細胞膜の分子的側面をお話しし、それから膜タンパク質の生合成と埋め込みについてお話をし、膜タンパク質のうち、細胞と細胞の接着に関係するいくつかのジャンクションのお話をしました。

そこで使ったパワーポイントのファイルはここにあります。これは次回も使います。

授業の中で、お部屋の知的なアクセサリーに張ってみてください、と言ったメタボリックマップは「授業のお知らせ」に載せておきます。

○第10回6月27日

第10回の講義は、前回の積み残しをして、細胞の数を増やすための体細胞分裂のお話まで行く予定でしたが、第9回のパワーポイントのファイルの内容をお話しするので精一杯でした。DNAの複製と体細胞分裂は、無理をせずに次回に回すことにします。

したがってこの日に使用したファイルは6月20日の回に上げてあるものです。

○第11回7月4日

第11回の講義は、DNAの複製と体細胞分裂のお話をしました。5’→3’の方向性が逆の、DNA分子をどのようにしていっぺんに複製していくか、よく理解してください。リーディング鎖とラギング鎖という言葉が出てきましたよね。こうして細胞周期のS期にDNAが複製され染色体というかたちに凝集すると、染色分体が二歩に寄り添った染色体になり、分裂の中期に赤道面に並びます。後は後期で両極に分かれ、細胞にくびれができて2つの細胞になるのでしたよね。このあたりの流れは良く理解してておいてください。

この日に使ったパワーポイントのファイルはここにあります。

またお見せした微分干渉顕微鏡の映像は、動物はここ、植物はここにあります。立体的に表現した動画はここに、講義では見せなかった模式的な動画はここにあります。YouTubeで自分でも探してみてください。

○第12回7月11日

第12回の講義は、「個体の数を増やす」ということで、減数分裂と配偶子形成(精子形成と卵形成)のお話をしました。減数分裂によって、どうして多様性が生まれるか、染色体のシャッフルと交叉による乗り換えが起こって、遺伝子の組み換えが起こることを示しました。この点はよく覚えておいてくださいね。それから発生の話を少ししたところで時間が無くなってしまいました。

この日に使ったパワーポイントのファイルはここにあります。

○第13回7月18日

前回予告したように、講義の冒頭で見極め試験を行いました。

正解率と得点分布などはここに載せてあります。前回のテストに続けてありますので、下の方を見てください。このページの戻る場合は、ブラウザーの戻るマークをクリックしてください。

その後、前回の続きをやりました。発生のところは軽く流して今回は免疫に行きたかったのですが、個体の数を増やすというタイトルのパワーポイントファイルを終わらせることはできませんでいた。来週は免疫をやります。

○第14回7月25日

発生の最後のところ、誘導・分化にはホルモンのところで学習したのと同じように誘導物質が分泌され、反応能のある細胞はその物質に対する受容体を備えていることを、ニワトリ胚の前肢の誘導・分化におけるFGFとShhを例にしてお話ししました。

その後で、免疫についてお話ししました。特に自然免疫が重要であることを言いました。でも最後まで終わりませんでした。残りは9月12日の補講で行います。この回で使ったパワーポイントのファイルはここにあります。

6月27日を締切として出してもらったレポートの例として、こんな書き方がよかったのではないかしらというのを、ここに載せておきます。ダウンロードして一読してみてください。

○第15回8月1日

定期試験を行いました。結果については別のページをご覧ください。正解率と得点分布なども載せてあります。ここにあります。

○第16回9月12日

3時間目(家禽学の時間)と4時間目の前半を使って補講をします。そこで使うパワーポイントのファイルは2つありますが、ここここにあります。また「授業のお知らせ」にも載せておきます。

この日の4時間目の後半を使って再試験を行います。定期試験の結果は8月1日の項に書いてある別ページに載せてありますので、必ず確認してください。


最終更新日:2012年8月2日午後6時50分