15.視覚:両眼視

 両眼をもちいて一物体を注視するとき、それぞれの眼の網膜には別々に映像が 生じるが、物体は単一のものとして見える。これを両眼単一視(binocular single vision)という。両眼単一視が生じるには物体の像が左右網膜上の対応 点 corresponding point の近傍に作られる必要がある。対応点とは、中心窩と 中心窩から同一方向に同一の距離にある網膜上の点である。(図16-1) <図16−1>  両眼をある姿勢に保つとき、両眼の対応点に像が作られる物点の一の軌跡を ホロプテル(horopter)という。両眼が空間上の一点を輻輳しているときの ホロプテルの軌跡は、注視点と両眼の節点を含む円、及び注視点を通る垂直線 である。(実際はこの円と前額面に平行な線と中間がホロプテルとなる)。  ホロプテルから近い点又は遠い点は両眼の非対応点に投射する。これがある 範囲内ならば複視(diplopia)は生じない。像は融合して、単一像となる。 この網膜に対応する空間を Panum の融合領域(fusional area)という。この 範囲では、立体的な深さの感覚が現れ、両眼の像の disparity が大きいほど 遠近感が強くなる。  このような網膜状の像の不同 (disparity) が、両眼による立体感覚 (stereopsis)を決定する唯一のものである。計算機によって、デタラメな点を 発生させ、そのドットの一部に disparity をつくると、我々は、それが認識 できなくとも立体感が生じる。(図16-2) <図16−2>

§1.立体感発生の神経機構

 大脳皮質の細胞は一般に両方の眼から支配されている。そして、左右の眼に対 する受容域が対応点からずれている。細胞の応答は左右の眼の受容域が重なった とき大、従って、ことなった、細胞がことなったdepth sensation の情報を荷っ ている。 サルは randam dot で立体視することを調べることが出来る。

§2.奥行き感覚(depth perception)

 このような両眼視による立体視に、それぞれの眼に写る像の  1.相対的な大きさ  2.近いものが遠いものに重なる(Interposition)  3.視差(parallax)  4.調節の努力  5.輻輳の程度 等が加わって、奥行き感覚が生じている。