24.内臓感覚

§1.内臓痛(visceral pain)

 内臓に行く自律神経と一緒に走っている求心線維及び、脊髄神経の求心線維 によって痛みが伝えられると考えられる。 (イ)刺激することによって感覚が生じるのは、迷走神経支配領域では、上部の 気管、食道のみ、それより下部すなわち、胃の線維を刺激しても、感覚なし。 しかし、迷走神経線維の80%は求心線維で、機械受容性及び化学受容性である。 従って、これらは胃の運動、分泌に関係していると考えられる。 (ロ)胸部及び腹部臓器からの求心路は、(交感神経)、心臓神経、内臓神経を介 している。一方、肋膜、腹膜及び横隔膜は、胸部及び腰部脊髄神経によって 支配されている。横隔膜の中央部は、横隔膜神経によって支配されている。 (ハ)下部尿管及び生殖管からの侵害受容性の求心路は pelvic parasympathetic nerves (骨盤にある副交感神経)を介する。  肋膜及び腹膜は痛みに非常に敏感である。一方、正常な腸管とか嚢は、distension とか tension をかけることによって痛みが生じる。しかし、充血したり、炎症 をおこした腸管は軽い機械刺激・化学刺激で痛みを引き起こす。これは、炎症等 が痛み受容機構(痛み物質)を変化させているためかも知れない。

§2.連関痛あるいは関連痛(referred pain)

 胸腔、腹腔から生じる痛みは、それが刺激されたところに感じることもある。 (イ)しかし、しばしばそれらの痛みは、その内臓からの神経が入るのと同じ脊髄節 が支配している皮膚上で生じたように感じる。どこに投射するかは診断上重要 である。 (ロ)内臓痛が生じた初期または軽いときは、関連した皮膚または、それからの 求心線維を麻酔すると痛みが無くなる。。しかし痛みが強いときは、この 操作をしても、痛みはなくならない。 第一のことは次のように考えられている。皮膚からの侵害求心線維を介して、 脊髄に常に弱いインパルスが来ている。しかし、これは前側索系を activate する程強くない。この時、内臓からの侵害求心インパルスが加わると、前側索系を activate するようになる。痛みが生じる。皮膚に投射するのは皮膚からの求心 線維が内臓からのそれより多いためであるという。  第二の観察は、既に内臓からのインパルスで前側索系を興奮させるに充分である と考えれば説明できる。皮膚絵の投射の問題は上述の通り。 <図25−1> <図25−2>