23.深部感覚

 深部感覚(deep sensation)は(2)位置・運動感覚(kinesthesia)([)深部痛(deep pain)よりなる。また、深部感覚と表面感覚の合成によって、生じる振動感覚がある。

§1.位置感(position sense)と運動感(kinesthesia)

 四肢の一定位置及び、動物的な運動は関節からの求心入力によると考えられている。 例えば股関節を2_/secで開かせるとき、0.2_関節の角度が異なると、我々はそれを 知覚する。  積極的運動の方向と、その速さの感覚を運動感という。これは、関節からの求心 入力によるよりは、中枢神経系内において、運動をおこす神経活動をmonitorする 機構が存在するためと考えられている。  関節の受容器は、遅い順応を示す。靭帯にあるGorgi腱器官極受容器、関節嚢に あるRuffini型受容器は速い順応を示す。Pacini小体とそれに類似の受容器がある。 <図24−1> <図24−2>

§2.振動感覚(sense of flutter-vibration)

 音叉を皮膚にあて、刺激すると、振動する感覚が生じる。このとき5〜40Hzの 振動では、よくその部位を定位できる皮膚表層の振動として感じる。それより速い 振動の刺激では、比較的深部でその部位が弁別できない振動を感じる。この感覚は 2つの機械受容器によって生じる。40Hz以下の振動は、皮膚の表面の感覚受容器 (Meissner小体)高い振動数の刺激には深部骨膜の受容器(Pacini小体)で振動が 受容される。一番敏感なのは200Hzの振動である。 <図24−3>

§3.深部痛(deep somatic pain)

 骨膜:靭帯、関節嚢;筋膜、腱、筋;しょう膜の障害は痛みを引き起こす。 A δ、C線維で支配されていると考えられている。圧迫、切傷、熱等は痛み を生ずる。  筋では、繰り返しまたは持続的収縮により、痛みを引き起こす。特に血液の 補給が絶たれたとき著しい。これは、酸素不足下に収縮している筋細胞から、 ブラデキニン様ポリペプチドが放出されるためであろうと考えられている。  内臓及び深部痛は、反射的な筋肉の収縮を引き起こす。すると、筋肉内の 乏血→上述の痛み物質の放出→ますます痛みが生じ悪循環が生じる。このような こり(soreness)は痛みがなくなった後も、数時間から数日のorderで続く。

§4.頭痛(headache)

 頭痛は原因が異なっても、よく似た症状を呈する。痛みは深く、持続し、 広い範囲に感じ、頭蓋外の筋の反射的収縮を起こす。  頭痛は、深部痛である。脳自身からは痛覚伝導路が刺激され、また、その活動 が亢進する以外、痛みは生じない。脳の支持組織から生じる。それらの (1)脳の静脈洞及びそれからの分枝、 (2)硬膜(特に脳底部の)、 (3)脳動脈、特に中大動脈が痛みを引き起こす。頭蓋、硬膜、軟膜−クモ膜、 上衣(ependyma)、脈絡ごう(choroid plexuses)は敏感でない。