17.聴覚受容の機序
§1.聴覚系の働き方の概要
音の聴器での受容及びその知覚は次の3つの過程からなる。
(イ)音波すなわち、空気の振動をリンパの振動に変化する過程。音波が外耳道
から鼓膜に達すると、その空気圧により、鼓膜が内方へ凹む。このことに
よって耳小骨が働く。耳小骨の運動は卵形窓(oval window)から内耳に伝
わり、蝸牛(cholea)内のリンパを圧縮する。この圧縮により、基底膜
(basilar membrane)が下方におされ、さらに正円窓(round window)に
張られた膜を中耳の方におす。(図18-2)
<図18−1>
<図18-2>
(ロ)基底膜の移動は、それに付いている神経組織(コルチ器官 Corti organ)
で機械的振動を電気的変化に変換する過程。(受容器電位)
(ハ)神経インパルスとなって中枢に伝えられる。
§2.デシベル単位、音の大きさ
音には3つの要素がある。調子(pitch)は音波の振動数できまる。我々は
16Hz〜20KHzの音を聞くことが出来る。音の大きさ(loudness)は、音圧の大きさ
で決まる。また音質は、高調波()がどれだけ含まれているかできまる。
その内で、音の大きさについて述べる。ヒトの聞き得る音の大きさの範囲は
1000Hzの音で音圧0.0002dyne/cm2から、106倍にまで達する。従って、絶対圧力
で表すのは 雑となる。そこである一定の音圧を基準として相対単位で表すこと
が多い。
2つの音のエネルギーE1,E2の比の対数を用い、
E2
N = log10 ───(Bell)
E1
表すとき、それをベルという。この単位は大きすぎるので、その1/10の単位
をとる。
E2
N = 10log10 ─── (dB)
E1
この時の単位をデシベルという。
音波のエネルギーは音圧Pの自乗に比例する。また、スピーカーにかける電圧V
の自乗に比例する。それで
2 2
V2 V2 P2
N = 10log ─── = 20log ─── or 20log ───
V2 V2 P
1 1 1
となる。基準音圧として、正常人の1000Hzの音の閾値に相当する平面進行波
0.0002dyne/cm2をつかう。
ラウドネス 振動数が異なると聞こえ方も異なる。そこで振動数の異なった音を
表すのに、まず、その音と1000Hzの音を比較して同じ大きさに聞こえる1000Hzの
音を決める。次にその1000Hzの音のdB単位をきめる。このようにしてきめた。その
音の大きさ(loudness level)の単位をphonであらわす。各音の大きさは、
音圧
ささやき 40 phon ×102
普通の会話 60〜70 ×103
騒がしい所 60〜80 ×103-4
地下鉄 100 ×104
雷 鳴 120 ×105
ジェット機 160
である。
§3.外耳道
耳介は音のエネルギーを受け、外耳道へ導くホーンの役をする。ヒトでは音の
定位に役立つ。外耳道は直径約0.7cm,長さ2.5cmの円管で、その内端に鼓膜がある。
それで、一方の開いた共鳴管として作用する。共鳴の最大は約3000Hzである。
しかし、鼓膜が完全な剛体でなく、ダンピングがあるので、共鳴曲線の幅が広く
(broad)なる。共鳴の結果、外耳道の入口に比べて鼓膜上の音圧は3000Hzで12dB
大きい。2000Hz、6000Hzで5dB大きい。
§4.中耳の概要
鼓膜は空気で満たされている外耳と内耳を完全に仕切っている、きわめて柔軟
な膜。裏面は槌骨柄 (handle of malleus) で支えられているので中央凹み、浅い
コーン状をしている。頂点は臍 (umbo) という。ここを中心に膜の支持線維は
放射状及び輪状に走っている。
鼓膜の振動はツチ骨柄に伝えられ、更にツチ骨頭に伝えられ、更にツチ骨・キヌタ
骨関節を介してキヌタ骨、更にアブミ骨に伝えられる。ツチ骨・キヌタ骨関節はfirm
で両骨はユニットとして動く。回転の軸はキヌタ骨短突起−ツチ骨頭でツチ骨柄に
近い所である。両方が靭帯でつられている。
回転軸の上下でキヌタ骨・ツチ骨の重量が略等しいので重心は回転軸にある。
<図18−3>
§5.中耳における音の変換−インピーダンス整合
単に空気と液体が接しているときは、空気から液体に伝播するエネルギーは全体の
0.001にすぎず、99.9%は反射してしまう。空気から蝸牛内のリンパ液への伝播もこの
ような損失が起こり得る。この損失を少なくするのが、鼓膜−耳小骨系である。
この現象を理解するため、媒質の動き難さ、機械音響インピーダンスを考える。
今、媒質の単位面積当りの圧力Pをかけたとき、その媒質の動く速度vは比例する。
P ∝ v
このとき、比例常数|Zm|を
P=|Zm|×v cm/sec
と定義する。いま、Zmが大の時を考える。すると、Zmが少の時に比べて、Pが
大きくなっても、振動速度v(したがって振幅)は容易に大とならない。つまり、
振動し難い。Zmを音響インピーダンスという。空気では、約40機械Ω/cm2
で少。それに反して、蝸牛内の液体は海水に近く、約160,000
機械Ω/cm2である。つまり、蝸牛内のリンパは、空気に比べて4000倍も動き
にくい事になる。
それで、空気を振動させるには小さな圧Pですむ。この圧で液体を振動させる
となると、あまりに小である。もし、両者が直接接しているととすれば、振動は、
液体に伝わらず、大部分両者の境界面で反射してしまう。それで、空気の振動→
液体の振動にするには、Pを大にする変換器が必要である。テコは、その例である。
図において、A端は(例えば、軽く)動き易い(機械インピーダンス小)。
B端は(重く)動きにくい(機械インピーダンス大)とする。図のようなテコを
おけば、A端の小さなPで、B端の大きなP’を作ることができ、B端を動かす
事が出来る。テコの支点を適当な位置にすると、B端の動きを最大にする事が出来る。
この状態にする事をインピーダンス整合という。
中耳では、このようなことを実現するために2つの機構が働いている。
(イ)鼓膜の表面積とアブミ骨底の面積の比
hydraulic-press action による。鼓膜表面積85mm2であり、アブミ骨底のそれ
は3.2mm2である。原理的には単位面積あたり、20倍以上の力、即ち圧増加が
ある。しかし、鼓膜の有効な振動面積は55mm2(2400Hzまで)である。結局、
有効な面積比は17:1といわれる。
(ロ)ツチ骨−キヌタ骨のテコ作用
ツチ骨柄の長さがキヌタ骨長突起より長い(1.3:1)。それで鼓膜臍に生じた力
より1.3倍大きな力がアブミ骨に伝えられる。
以上のことから、結局力の増加は22倍(27dB)となるといわれている。
インピーダンス整合は500〜2000Hzは付で最良となる。従ってこのとき音の反射が
最も少ない。振動数が増せば「質量」によるインピーダンス増し、コンプライアンス
によるインピーダンスへる。逆は逆となる。中間で一番小さな所がある。
聴覚閾値は1000Hzで、鼓膜の振動幅10-8cmのオーダーである。これは水素原子の
直径に相当するほど小さい。聴器の鋭いことがわかる。
§6.変 換
<図18−3b>
入力と出力の関係を調べるとき、時間の関数から、それの対応する別の形に替え
られる。
デカルト座標 E = Em sin(ωt+ θ) ω=2πf
↑
↓
極座標 E = Em ∠θ
↑
↓
複素平面 E = Em(cosθ+j・sinθ)
E1∠θ1 * E2∠θ2=E1*E2∠θ1+θ2
E1∠θ1 ÷ E2∠θ2=E1/E2∠θ1−θ2
θをπ/2進める jをかける
E∠θ * E∠π/2=E∠θ1+θ/2
E(cos(π/2)+j・sin(π/2))=E・j
=0 =1
θをπ/2遅らす −jをかける
E(cos(−π/2)+j・sin(−π/2))=E・(−j)
=0 =−1
このような考えの下に、電気系と機械系とは対応して理解できる。図において、
電圧eをかけたとき流れる電流iとするとき
di 1
L ─── + Ri+ ─── ∫idt= e
dt C
が成立する。
また機械系においては、力と物体の位置の間に
dx2 dx 1
m─── +rm ─── + ─── x=F
dt2 dt Cm
従って、力Fと物体の速度xの間には
・
dx ・ 1 ・
m─── +rm x+ ─── ∫xdt=F
dt Cm
が成立する。
両者を比較すると、
e i L c R
↑ ↑ ↑ ↑ ↑
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
・
F x m Cm Rm
以上述べたことは結局、ある素子に電圧を掛けたとき、どれだけ電流が流れるか
という問題である。
E ┌────┐ I
→ │ Z │ →
└────┘
・
F ┌────┐ x
→ │ Z │ →
└────┘
Zを電流から電圧への変換パラメータという。
1
I=───E
Z
この変換パラメータがインピーダンスである。このとき流れる電流が周波数fの
交流の時、電流電圧の位相差
1
|Z|=√R2+(ωL− ── )2 ω=2πf
ωC
1
ωL − ──
ωC
φ = tan-1 ────────
R
と表せる。機械では同様に
・ 1
x= ─── F
Zm
すなわち、媒質の一点をある速度にするのに|Zm|が大きければ、大きな力を
要する。
1
|Zm|=√Rm2+(ωm − ─── )2 ω=2πf
ωCm
1
ωm − ───
ωCm
φ = tan-1 ─────────
Rm
となる。見れば分かるように、インピーダンスZは交流も含めた抵抗ということが
出来る。機械ではFが周期的に変化するときのνとFの関係を表している。
共鳴 そして、ここで注目すべきは、振動数が変化したとき、Fとνとの関係が
ことなってくる。このことから共鳴という現象が生じる。
すなわち
1
|Zm|=√rm+(ωm− ─── )2
ωCm
1
ωm− ─── = 0
ωCm
となるような振動数
1
f = ─────────
2π √ m・ Cm
のとき
F = rm・v
となり、もっとも小さな力で 媒質の速度v をひきおこすことができる。これが
共鳴である。rmが大のときは共鳴特性が広くなる。前に述べた外耳道での共鳴に
おける rm は、鼓膜粘性に由来するといわれている。
§7.過負荷とその制動作用
聴器には、大きな音圧によって破壊されないように、制動既往が存在する。
2つある。
(イ)アブミ骨底の振動形式。前述したように通常の強さの音に対して、楕円形を
したアブミ骨底は、短軸に対して回転するように振動する。しかし、大きな
音に対しては弔辞区を軸として振動する。従って、振動の振幅が減少し、
過牛に伝わる圧がへり、Corti器野様な微的な器官を保護する。
(ロ)耳小骨筋による保護
耳小骨筋は2つある。
(i)鼓膜張筋(M. tonesor tympani)ツチ骨柄の上端に付着。三叉神経(�后�
によって支配。この筋が収縮すると鼓膜は内側に引っ張られその緊張がます。
(ii)アブミ骨筋(M. stapedius)。アブミ骨頭に付着し、顔面神経(�察砲了拉�
を受けている。この筋が収縮するとアブミ骨底が卵円窓から遠ざかるとともに
動きを制限する。これらの筋が働くと結局、中耳の音伝導機構の内、コンプラ
イアンスが小となる。従って特に低い振動数の音の伝導が低下する。
低い音に対しては、鼓膜は1つの剛体として振動する。従って、大きな振動が
生じる。高い振動数の音に対しては、部分的に振動が生じるのでたがいに打ち消し
あって、あまり大きな振動数の音に対しては、部分的に振動が生じるので互いに
打ち消しあって、あまり大きな振動の音は得られない。みみは、低い振動数の音に
対して、制動作用が発達している。
この機構は常に働いている。顔面神経麻痺、重症筋無力症のときは、聴覚過敏を
訴えるのは、これらの筋が弛緩し、音伝導の制動機構が無くなるためである。逆に
耳小骨の関節の働きが悪くなると(耳硬化症)低音がおかされる。
<図18−4>
<図18−5>
<図18−6>
§8.耳管(autitory tube, Eustachian tube)
耳管は、中耳鼓室と咽頭(鼻部)をつなぐ管で、管壁は粘膜で覆われている。
普通は閉じているが、燕下運動やあくびのとき開く。
耳管が開くと鼓室と外界が咽頭を介して交通し、鼓室内外のあつが等しくなる。
高空から下降するとき耳管が開通しないと内外に圧差が生じる。
-60〜80mHgで激痛、聴覚障害、耳なり、めまいが生じる。
-80〜90mHgになると耳管壁の筋収縮して耳管開かず。
-100〜150mHgになると鼓膜が破れる。大きな音・激痛・悪心・ショック等をおこす。
耳管が開かないと鼓室内の空気が吸収され、圧下がる。その結果鼓膜が内方に引っ
張られる。そのため伝音系のコンプライアンス低下をきたすから、低音の伝導障害
が生じる。
§9.内耳の構造
骨迷路は側頭骨錐体内に生じた空洞である。この中に膜迷路がある。膜迷路内
のリンパを内リンパ、外にあるものを外リンパという。膜迷路はあるところは
骨迷路と略悪波形をし、あるところは異なる。膜迷路の一部では骨迷路壁に
付着する。(図18-7,8)
<図18−7>
<図18−8>
その内、蝸牛(cochlea)は骨の管が蝸牛軸を軸として蒔いた構造をし、管を引き
延ばすと、長さ約3〜3.5cm。その内部に膜迷路である蝸牛管がある。人では蝸牛は
23/4回転だけ巻いている。
蝸牛管の横断面は三角形をなし、2つの側壁がある。
(イ)外側、蝸牛壁に付着し、血管に富む血管線条(Stria vascularis)。
(ロ)上側、前庭膜(Reissner's or vestibular membrane)となり、非常に薄い。
(ハ)下側、基底膜(basilar membrane)でここに音の受容器であるコルチ器官
(organ of corti)がある。(図18-10)この蝸牛管によって、蝸牛は3つの
階に分かれる。
(イ)上部、前庭階(scala vestibuli)
(ロ)蝸牛管、中階(scala media)ともいう。
(ハ)下部、鼓室階(sucala tympani)。蝸牛底では前庭階は卵円窓(oval window)
に行こうし、鼓室階は正円窓につながる。また蝸牛管は蝸牛頂で盲管で終わる
から、前庭階と鼓室階は交通している。(図18-9)
<図18−9>
<図18−10>
§10.蝸牛での音の伝幡
中耳より伝わった音波は前庭窓でリンパ液の振動に変わる。ついで前庭階の外
リンパの振動は、薄い前庭膜を通じて内リンパに伝えられ、基底膜を振動させる。
前庭膜でのエネルギー損失は殆どない。 このとき、各調子の音は、異なった場所
の基底膜を振動させる。すなわち、音はその構成振動数要素に分解されたのち、
種々な場所で音の受容が生じる。この考え方を場所説という。
Helmholtzは次の事実から、この説を提唱した。
(イ)基底膜の構造・基底膜は長軸に直角方向に無数の線維が張っている
(basilar fiber 基底線維)。 そして、蝸牛の場所でその長さが異なる。
前庭窓に近い蝸牛底では 0.04mm 蝸牛頂に近くなると0.5mm。 このこと
から、音の振動数が異なれば、基底膜上の一定部位が共鳴し、より強く振動
することが予想される。
(ロ)音に関するOhmの法則。 更に、我々が2つの音の合成を識別するとき、
その位相差は識別できない。従って、合成音は個々に分解されたのち受容さ
れることが予想できる。
この考え方を実証したのが Bekesy である。
彼は人の死体の内耳を切り出し、水中で前庭窓から伝磁石によって蝸牛内に振動
を送る。この時基底膜の動きを顕微鏡下で観察した。(図18-11)その結果、
<図18−11>
<図18−12>
(イ)下牛底部の基底膜に振動が起こると、その振動は進行波となって、蝸牛頂部
に向かって伝パンする。 従って、1つの振動数の音によって、かなり広い
範囲の基底膜が振動する。(共鳴ではない)。 ()しかし、進行波の伝達
範囲及び蝸牛各部での振動の振幅が刺激音の振動数に寄って異なる。
低音による進行波は蝸牛頂迄達する。振幅の最大は蝸牛頂である。振動数が高く
なるに従って伝パン範囲は狭くなり、高音による進行波は蝸牛底に限局、振幅最大
は蝸牛底である。
このことから、音の振動数の分析は、やはり、基底膜の場所によることが分かった。
§11.コルチ器の反応−マイクロホン電位
音波により基底膜が上下に振動すると、基底膜をはさんで電位変化が生じる。
これをマイクロホン電位(microphonic potential)という。(Weber-vray effect)
(1930)
マイクロホン電位(CM)は、
(イ)潜時が殆ど無い、
(ロ)不応期が無い、
(ハ)麻酔、寒冷に強い、
(ニ)その大きさ、段階的である、
(ホ)死ぬと小さくなる、
(ヘ)基底膜を介しそのpolarityが反転する。という性質がある。
このようなマイクロホン電位は、蝸牛窓、前庭窓の近くにおいた電極からも誘導
できる。マイクロホン電位の発生機序は完全にはわかっていない。また、これと
receptor potential との関係もわかっていない。
次のような機序で発生していると考えられる。
(イ)コルチ器には一列の内有毛細胞(3500個)と、3列の外有毛細胞(20000個)が
並んでいる。有毛細胞は基底膜上に乗り、その上をさらに被蓋膜(tectorial
membrane)がおおっている。
(ロ)蝸牛内では、前庭階、鼓室階内のリンパは〔Na+〕大〔K+〕小の細胞外液
の性質をもつ。これに反し、中階(蝸牛管)内のリンパはそれよりも〔K+〕
大。これは血管線条(stria vascularis)におけるK+の active transport
による。それに対応して(前庭階の電位を0としたとき)中階は+80〜100mV。
dndocochlear potential(蝸牛内直流電位)という。有毛細胞内-70〜100mV。
鼓室階は0Vを示す。(図18-15)
(ハ)音波により、基底膜が上下に振動する。基底膜が上方に移動すると被蓋膜が
reticular lamina に対して外側に移動し、有毛細胞の毛が外方に屈曲される。
その結果、その面での抵抗が減少する。それで電流が有毛細胞に流れ込み、細胞体
からでる。このため endocochlear potential が変化する。
<図18−13>
<図18−14>
<図18−15>
§12.有毛細胞から蝸牛神経への興奮伝達
有毛細胞と蝸牛神経終末はシナプスでつながっている。シナプス間隙は200Åで、
有毛細胞側にシナプス小胞がある。〔逆に神経終末側に小胞のあるシナプスもある。
これに関しては後述〕。
このような構造を基礎に、有毛細胞から蝸牛神経への興奮伝達の機序は次の
ように考えられている。基底膜が上下振動すると被蓋膜により有毛細胞の毛が曲げ
られ、受容器電位が生じる。この脱分極は有毛細胞から化学伝達物質を分泌する。
それによって蝸牛神経末端に起動電位が生じる。これが電気緊張的に神経線維の
興奮膜に達し、興奮を引き起こす。
この考えの基礎は原始的聴器及び、拷養された有毛細胞での研究結果である。
<図18−16>
<図18−17>
§13.原始的聴器での研究
原始的聴器として魚類のそれが選ばれた。魚は浮袋(swim bladder)で音波を
捕らえ、それをWeber器官(三脚骨、舟状骨)を通じて、内耳(無対窩)に伝える。
内耳での振動は Lagena(壷)及び Sacculus(通嚢) によって受容される。この
中にはmacula(斑)があり、それは有毛細胞をもっている。この内 Saccular
macula の前方を支配している第8神経は 15μ もあり、細胞内誘導をすることが
できる。
いま、ガラス電極をその神経終末に挿入し、音を聞かすと、MPと似た脱分極が
生じる。この脱分極がある臨界値を越えるとスパイク電位が生じる。従って、この
電位は起動電位である。この電位の性質は
(イ) 段階的である。
(ロ) 終末部を過分極すると大きくなる。すなわち、平衡電位は0Vに近い。
(ハ) MPと、この電位の間に0.6〜0.8msecの遅れがある。
(ニ) MPとことなり、この電位は順応する。
以上から、有毛細胞から第�芝梢牲个悗龍淑嚇素鼎浪蹴愿礎�によって生じると考え
られている。
<図18−18>
<図18−19>
§14.蝸牛電気図(electro cochleogram)
電極を正円窓付近におき、click音をあたえるとCMとそれに続く、蝸牛神経の
複合活動電位が記録できる。
これは臨床的に役立つ。