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ビクトリア州に住む1組の男女が、牙をもった小さなムシが彼らの身体をむしばみはじめて以来、悪夢に悩まされるようになった。これが、オーストラリアでは最初の顎口虫による感染例である。
西オーストラリアであったキャンピングホリデーの折に捕まえた魚を食べて感染したと考えられている。
Alfred病院の感染症科のAndrew Fuller医師によれば、捕まえた魚、おそらくblack bream(淡水産コイ科の仲間)といっしょに顎口虫の幼虫も食べてしまったのではないかと話している。「その寄生虫は1-3mmほどの長さで鋭い牙を持ちヒトの身体の中の好きなところに潜り込むことができる」とFuller医師は話す。
その寄生虫は寿命が尽きるまで、あるいは免疫システムによって殺されるまで体中を這い回る。
「皮膚の下を移動し、かゆくて硬いしこりを作り、患者を気持ち悪くさせる。さらに、診断を付けることが非常に難しい」。この男女は筋肉痛や発熱、嘔吐がみられ、皮膚はオレンジの皮のように変わってしまった。抗生物質の投与によって回復した。
この寄生虫はヒトの体内で15年にもわたって寄生し、慢性の病気をヒトに引き起こす。脳や脊髄、その他さまざまな臓器に侵入できる。「顎口虫はあなたの組織を食べているのです」とFuller医師は語った。Fuller医師自身これまでに28名の、同じような症状を持った患者を治療したことがあった。これらの患者は全員海外で感染したヒトばかりであった。しかし、今回の症例はどちらも海外渡航歴はなかった。
Fuller医師は患者の血液をバンコクに送った。Derby市の北を流れるCalder川で魚を捕まえ、Australian Medical Journalに症例を報告した。
【米国CDCのウェブサイトからの情報】
ヒトの顎口虫症はGnathostoma属の線虫によっておきる寄生虫感染症である。この病気は東南アジアに多くみられる。東南アジア以外のアジア地域、南米中米、アフリカの一部の国でもみられるが、東南アジアでよくみられる病気である。生や不完全調理の淡水魚、ウナギ、カエル、トリ、両生類を食べて感染する。
顎口虫症の総説が最近発表された(Herman JS, Chiodini PL. Gnathostomiasis, another emerging imported disease. Clin Microbiol Rev. 2009; 22(3):484-92)
最近になってオーストラリアに顎口虫が移入されたのかあるいは、単にオーストラリアで報告がなされていなかっただけなのかはわからない。この点に関して水生生物学者のコメントがあれば寄せて欲しい。