口腔癌の放射線治療

口腔癌の放射線治療

 小線源治療は、放射性物質を直接腫瘍内に埋め込むことにより、集中的に大線量を付与することが可能で、どんな高精度の外照射法を用いても、今の所、線量分布の優位性においてこの方法を凌駕することはできません。また腫瘍の動きにも対応できることから、動体追跡という凄技も行っていることになります。その結果、切らずに癌を治癒することができ、正常組織を温存することが可能になるのです。
 口腔癌、子宮頚癌、前立腺癌が、主な小線源治療の適応ですが、いずれも、外科療法に匹敵する治療成績を示しています。しかしながら、口腔癌に対する小線源治療のできる施設はごくごく限られています。本学における口腔癌の小線源治療は、昭和37年から行われており、当初から医科と歯科が協力しながら、これまでに2千例以上の治療が行われてきました。近年では、本学が日本における症例のほぼ半数の治療を担っております。
 正常組織の障害に対する対策も行っています。舌癌は、辺縁部にできることがほとんどで、ここに針状の線源を刺入すると、下顎の歯肉や骨にも腫瘍と同じ線量が照射されてしまいます。すると、歯茎に穴があいて、骨が壊死してしまうことがしばしば起こっていました。そこで、スペーサーと呼ばれる義歯に似たものを作製し、これを装着することで、歯茎と舌の間に1cm程のスペースができるようにします。これによって、歯茎や骨が受ける線量が半分以下になり、ほとんどの骨壊死が防止できることがわかりました。現在、歯学部の顎義歯外来との連携の下、舌癌症例には必ず作製して装着して頂いています。まさに、医科と歯科の連携の賜物であるといえます。頚部にリンパ節転移が起きた際には、歯学部の口腔外科や医学部の頭頸部外科に紹介し、頚部郭清術という頸だけの手術を受けて頂きます。本学は、口腔癌の症例数において、日本で最多の施設であり、こうした万全の連携体制が敷かれています。
 舌癌に対しては、イリジウム針と呼ばれる線源を、局所麻酔下に刺入し、そのまま5-6日間入れ続け、針を抜けば治療は終了です。この間、患者さんには、鼻から入れたチューブから流動食を摂って頂きます。舌癌以外の口腔癌(口底癌、頬粘膜癌、中咽頭癌等)には、放射性金粒子をやはり局所麻酔下に刺入します。腫瘍の大きさによって数個から20個位の数になりますが、放射能の半減期が短いため、埋め込んだあとは取り出す必要がありません。歯肉癌や口蓋癌では粘膜が薄いため、直接刺入することはせずに、かわりに入れ歯を作り、入れ歯に金粒子を埋め込んで、これを5-7日間装着してもらうモールド療法と呼ばれる治療法を行います。いずれの小線源治療においても、入院が必要で、入院期間は、イリジウムの場合、約1週間、金粒子の場合、4日から1週間程度です。副作用としては、治療が始まって1週間から10日ぐらいで局所的な口内炎が出始め、2週程でピークを迎えます。その後ゆっくりと消退し始め、完全に口内炎が消えるのに2ヶ月程かかります。
 治療はすべて医学部附属病院放射線治療科(吉村亮一教授)にて、医学部スタッフと一緒に行われます。口腔癌を切らずに治したいという患者様がおられましたら、一度下記までご連絡下さい。患者様から直接お問い合わせ頂いてもかまいません。

東京医科歯科大学医学部附属病院放射線治療科外来 Tel: 03-5803-5683

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