PKC C1bドメインの合成およびその蛍光性誘導体を
用いた新規スクリーニング法の開発
大橋南美, 野村 渉, 加藤 舞, 堤 浩, 糸谷恭子, 伊倉貞吉, 伊藤暢聡,
吉田清嗣, Nancy E. Lewin, Peter
M. Blumberg, 玉村啓和.
【目的】
蛍光を用いた検出が容易な化合物評価法はハイスループットスクリーニングへの応用が期待できる。迅速かつ容易な化合物スクリーニングは、創薬を指向した化合物合成プロセスの効率化につながる。演者らは、がんプロモーターであるホルボールエステルの受容体であるProtein Kinase
C(PKC)に着目し、検出に蛍光を用いたPKCリガンド結合評価法の開発を行なった。
【方法】
約50アミノ酸からなるPKCリガンド結合領域(C1bドメイン)を効率的に合成するために、2つの断片をそれぞれFmoc固相合成法で作製後、Native
Chemical Ligation(NCL)反応によって全長とした。また、環境応答性蛍光基を導入したFmoc-Lys-OH誘導体を用いて、同様に蛍光ラベル体を合成した。合成したC1bドメインの性質は、リガンドであるホルボールエステルに対する結合活性やCDスペクトル解析で調べた。また、リガンド結合による蛍光スペクトル変化を測定した。
図. 蛍光基の周辺環境変化によるリガンド結合の検出
【結果および考察】
Fmoc固相合成法とNCLにより、効率良く天然型C1bドメインと蛍光ラベルC1bドメインを創製できた。これらのC1bドメインはリコンビナントC1bドメインと同様のCDスペクトルを示し、天然配列のものと同等のリガンド結合活性を有することが確認された。さらに、作製した蛍光性C1bドメインにリガンドを加えたところ顕著な蛍光スペクトル変化がみられ、リガンド結合活性を評価できることが明らかになった。よって、蛍光性C1bドメインのリガンドスクリーニングツールへの応用の可能性が示唆された。