蛍光性アンタゴニストを用いたCXCR4
イメージングと阻害剤のスクリーニング法の確立

              (東医歯大生材研)

             ○田部 泰章・野村 渉・堤 浩・田中 智博・玉村 啓和

Bioimaging of CXCR4 using fluorescent antagonists and establishment of screening methods

(Institute of Biomaterials and Bioengineering, Tokyo Medical and Dental University)

Yasuaki TANABE, Wataru NOMURA, Hiroshi TSUTSUMI, Tomohiro TANAKA, Hirokazu TAMAMURA

日本化学会第88春季年会、東京、2008326-30

 CXCR4は細胞表面に存在する7回膜貫通Gタンパク質共役型受容体でありCXCL12/stromal cell-derived factor-1SDF-1)を生理的リガンドとするケモカイン受容体である。このCXCR4HIVの侵入、固形癌の転移および慢性関節リウマチの炎症などの病態形成にも関与していることから創薬のmulti-targetとして注目されている。

従来このCXCR4を標的とした化合物の結合活性評価は、ラジオアイソトープ(RI)標識されたSDF-1aを競合プローブとして行われている。しかしながら、RI標識された市販のSDF-1aは高価であり、また調製も困難で、放射活性の減少も考慮する必要がある。さらに、少なからず被爆の危険性も帯びてくる。こうした問題点を克服すべく本研究では、抗体や、生理的リガンドのRIラベル体に代わる蛍光プローブとして、蛍光色素を標識した蛍光性アンタゴニストを開発することとした。

 蛍光基としてFluoresceinTetramethylrhodaminTAMRA)を用い、著者らの研究室で開発したCXCR4アンタゴニストであるT140の誘導体Ac-TZ14011のファルマコフォアからもっとも離れた官能基であるD-Lys8側鎖のe-アミノ基選択的に蛍光基を導入することに成功した。なお、蛍光基がアンタゴニストのCXCR4に対する結合親和性に影響を与えないようにするためにD-Lys8のアミノ基と蛍光基の間にリンカーを挿入することにした(Fig 1.)。それぞれの蛍光基を導入したT140誘導体がCXCR4に対する結合活性を保持していることを確認し、この合成した蛍光性アンタゴニスト(TAMRA-Ac-TZ14011)を使い、細胞上のCXCR4の蛍光イメージングを行った。また、Fluorescein-Ac-TZ14011を競合プローブとして、複数のリガンド候補の結合活性の評価を行い、従来のRIを用いて評価した化合物活性と比較した。その結果、蛍光性アンタゴニストを用いる方法とRI標識したSDF-1aを用いる方法で相関を得ることができ、Fluorescein-Ac-TZ14011CXCR4アンタゴニストのスクリーニングに有用であることが示唆された。そこで、cyclic pentapeptide libraryのスクリーニングを行ったので併せて報告する。