日本薬学会 第129年会
日時:2009年3月26-28日
場所:京都
プロテインキナーゼC(PKC)はジアシルグリセロール(DAG)をセカンドメッセンジャーとするセリン・スレオニン特異的リン酸化酵素であり、がんやアルツハイマー病の治療薬創製の標的酵素として注目されている。演者らはPKCの活性化を光照射によって時間・空間的に制御することが可能なケージド化合物の開発を試みた。DAGを環化することによって結合活性を上昇させたDAG–ラクトンの重要なファーマコフォアであるOH基を光分解性保護基である6-Bromo-7-methoxycoumarin(Bmc)基により保護したケージドDAG–ラクトンを合成した。ケージドDAG–ラクトンは緩衝液中で紫外光照射によりBmc基が脱保護され、DAG–ラクトンが出現することをHPLC分析により確認した。また、その結果から分解反応の量子収率等を算出した。リン酸化アッセイによって、ケージド化したDAG-ラクトンではPKCdは活性化されず、光照射後の脱保護体では活性化されることが明らかになった。さらに、ケージドDAG-ラクトンではCHO-K1細胞に発現したGFP融合PKCdの細胞内局在変化を誘起せず、PKCd活性化は起こらないことが確認された。以上のことより、PKCdのリン酸化活性反応、および細胞内局在変化はケージド化DAG–ラクトンへの光照射による脱保護、それに伴う結合活性の回復を用いることで制御可能であることが示された。
野村 渉1、芹澤 雄樹1, 2、大橋 南美1, 2、Nancy E. Lewin3、堤 浩1、吉田 清嗣4、Peter M. Blumberg3、古田 寿昭5、玉村 啓和1, 2
1東京医科歯科大学 生体材料工学研究所
2東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
3Laboratory of Cancer Biology and Genetics, NCI, National Institute for
Health
4東京医科歯科大学 難治疾患研究所
5東邦大学 理学部
ケージドDAG–ラクトンによるプロテインキナーゼCの活性化制御
図. ケージド化したDAG-ラクトンの光照射による脱保護反応とPKCdの局在変化の誘起