87st IBB Seminar

生理機能を光制御するケージド化合物

講師:バイオセンサー分野 客員教授
    
古田 寿昭先生 (東邦大学理学部生物分子科学科)

日時:平成20年5月26日(月) 18:00〜21:10
会場:東京医科歯科大学 生体材料工学研究所

     ゼミナール室 (3階)

Abstract:  生命機能を担う個々の分子の機能は明らかになりつつあるが,既存の研究手法の組み合わせだけでは,生命の全体像を捉えることは難しい。生命をシステムとして理解することを可能にする新しい方法論の開発が望まれる。例えば,細胞をバラバラにして,個々の分子の機能を調べるだけでは,複数の分子が協同してはたらくネットワークを明らかにすることはできない。それらを再構成して元通りに働くことを確かめなければ,真の機能を理解したことにはならない。あるいは,生きた細胞の中,できれば個体の中で果たす役割を調べることが大切である。これを可能にする要素技術を確立するため,ケージド化合物の化学を活用して,時期および細胞(組織)特異的に細胞内現象を制御する技術の開発を目指して研究を続けてきた。既に,我々のグループで新たに開発したBhc-ケージド化合物を用いて,細胞内シグナル伝達を光制御すること,また,モデル生物個体内でmRNAの機能発現を光制御することにも成功している。本講義では,最近の我々の研究を中心に,ケージド化合物に光照射して細胞の機能をリモートコントロールし,生きた細胞中でシステムの一部としての分子の機能を調べることを目指す研究を紹介する。