【要旨】
現在のHIV 感染症およびエイズの治療法は、感染者の細胞内にHIV が侵入した後に作用する薬を
2,3種類組み合わせて用いるHARRT 療法という方法が主流であり、多大な成功を収めています。
しかしこれらの治療法では副作用がある、薬の効かないウイルスが出現するなどの問題点もありま
す。
最近、HIV がヒトの細胞に侵入する際に様々な分子が作用するメカニズム(動的超分子機構)が
明らかになってきており、この侵入段階の阻害剤が注目されています。私たちは種々の侵入阻害剤
を創製してきました。今回は侵入の際に最初にHIV が結合するヒトの細胞表面タンパク質CD4 に着
目し、そのミミックであるNBD-556 を取り上げ、さらに有用なCD4 ミミックの合成およびHIV 侵入
の動的超分子機構への影響や、中和抗体などとの併用効果を調べました。
その結果、CD4 ミミックの阻害剤としての有用性が示され、NBD-556 に構造的な工夫を加えたも
のの中に高活性のものも見つかりました。またこれらを中和抗体と併用することで抗ウイルス活性
を増強しました。このことから、CD4 ミミックは侵入に関わる表面タンパク質の構造変化を起こし、
中和抗体が認識しやすいように誘導していることが示唆されました。今回の結果はダイナミックな
HIV 侵入機構における連続的な分子の相互作用ダイナミックに阻害するという、抗エイズ化学療法
の新たな概念を与えると考えられます。
日本薬学会第128 年会

横浜、2008 年3 月26‐28 日

* ハイライトポスター番号:26PH-43
HIV 侵入の動的超分子機構を標的としたCD4 mimic small molecule の創製.
(英名):Development of CD4 mimic small molecules targeted for dynamic supramolecular mechanism of HIV entry.


山田裕子, 吉村和久,田中智博, 堤 浩, 野村渉, 糸谷恭子, 増野弘幸, 柴田潤二, 畑田万紀,
松下修三, 玉村啓和.

「エイズウイルスの巧みな侵入機構をたたく抗エイズ薬の創製」