○野村 渉1、中原 徹1,2、大矢 亜紀1、大庭 賢二3、田中 智博1、橋本 知恵1,2、鳴海 哲夫1、村上 努3、山本 直樹3、玉村 啓和1,2
(1東京医歯大・生材研、2東京医歯大・疾患生命研、3国立感染研・エイズ研セ)
数種類の阻害剤を併用する治療方法の発展によって先進国におけるHIV感染者の死亡率が減少し、平均寿命が延びていることから以前は死に至る病であったHIV感染に対する認識も変わろうとしています。しかし、感染者は世界的に年々増加しており、日本も例外ではありません。エイズウイルスの感染を阻害するような抗体を産生することで感染予防、もしくは治療を行おうとするエイズワクチン計画も未だに実現の可能性が見えていません。しかし、治療の面では患者の経済的、肉体的負担を大きく軽減すると期待されるエイズワクチン開発は必須の課題です。わたしたちはウイルスが感染時にヒトの細胞との間に形成する構造を緻密に真似たペプチドを作り、マウスに免疫しました。その結果、その構造を認識する抗体が産生されることを見出しました。このようにして作り出される抗体はウイルスの感染を阻害することも明かになりました。最近ではHIV感染者の血液細胞においてエイズウイルスの構造を認識する抗体がわずかながら産生されており、これを単離して調べたところ、ウイルスの感染を強力に阻害することが明かにされ、わたしたちを驚かせました。人工的にこのような機構を再現できるペプチドによって、近い将来、エイズ撲滅に一歩近づける可能性が示されています。
新規ワクチンでエイズの治療を!!
日本薬学会第130年会
岡山. 2010年3月28−30日
講演ハイライト