昨年度2月より有機材料分野に着任いたしました。
私の研究分野は、生体系の優れた機能を発想の源として、生体機能の単なる模倣にとどまらず、有機化学、高分子化学、超分子化学的にアプローチにより、生体系を超えるシステムを創出しようする「バイオインスパイアード化学」です。
人工酵素や、人工レセプター、などの過去の優れた研究例からも明らかなように、生体を模倣する化学は非常に古くから提唱されている概念です。
しかしながら、近年のバイオサイエンスの発展による生命現象の巧みなメカニズムに関する急速かつ膨大な知見の獲得により、そこには化学を扱う研究者が範とすべきシードが無数に存在していることがわかります。
現在の興味の中心は、これらのシードをもとに、異分野の研究、特に生命を扱う医療分野、などとの積極的な融合を行うことで新たなバイオインスパイアード材料を創成することにあります。
究極的には、生体が有する自己構造化、自己複製、自己修復などの機能をもつ材料、すなわちプロトタイプの「人工細胞」創成へと研究を展開していきたいと考えております。