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東京科学大学大学院応用再生医学分野では、変形性膝関節症の構造を改善する治療法の確立を目指し、再生医療の研究開発を進めています。基礎研究から臨床応用、産業化までを見据えた包括的なアプローチを特徴としています。これにより、変形性膝関節症に苦しむ患者さんに安全で効果的な治療選択肢を提供することを目標としています。また、研究を通じて次世代を担う研究者と医療人を育成することにも注力しています。
変形性膝関節症に対する新規治療の開発においては、半月板の機能不全が変形性膝関節症の主要な原因であることをこれまで明らかにし、滑膜由来間葉系幹細胞(滑膜幹細胞)による半月板再生に取り組んできました。低侵襲な鏡視下手術による細胞移植技術を開発し、現在は企業との協働で臨床第III相試験を実施しています。
次いで、広い患者層への適用を目指し、滑膜幹細胞の関節内注射による治療法の開発も行っています。この手法については、二重盲検比較試験を医師主導治験として進めています。
再生医療・細胞治療の実用化においては、安全性の確保、作業効率の適正化、製造工程の標準化など、実務的な課題解決に取り組んでいます。産学連携を通じて、これらの課題を着実に解決し、実用化の道を切り開いています。
また、基礎研究では、変形性膝関節症における細胞老化のメカニズム解明も重要テーマとしています。この研究により、疾患の本質的な理解と効果的な治療戦略の構築を目指しています。
さらに、人工知能(AI)を活用した膝MRIの3次元解析システムの開発も推進中です。このシステムは早期診断や進行予測を可能とし、適切な治療介入時期の判断に貢献します。軟骨厚さの定量評価は再生医療の客観的評価に不可欠であり、精度向上と標準化に努めています。
私たちは、基礎研究から臨床応用、さらには産業化に至るまで、多くの課題に挑戦し続けていますが、この道のりには常に皆様のご支援が不可欠です。共に未来を創る仲間として、学生や研究者には、柔軟な発想と粘り強い探究心を持って挑戦を楽しんでほしいと願っています。引き続き、多くの方々との協力を通じて、新しい可能性を追求していきたいと考えています。