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オーラルフレイルに要注意!

2021.12.17

みなさんは「オーラルフレイル」という言葉をご存知でしょうか。フレイル、虚弱はご存知と思いますが、口にもフレイルが現れ、それらが栄養摂取等に悪影響を及ぼし、身体のフレイルや要介護へ助教してしまうという考え方です。2014年3月に国立長寿医療研究センターの研究班は、要介護状態になるまでの過程に、口に生じるフレイル「オーラルフレイル」の段階があるという仮説概念図を発表いたしました。この図は心と体の機能と口の機能を対比させ、徐々にフレイル、要介護に陥っていく様を表わしています。
 まず、定年退職などによって立場や生活環境が変わりますが、それに適応できないでいると活動量が低下し、意欲低下やうつ状態になりやすくなります。そうしますと口腔の健康への関心度(口腔リテラシー)が低下し、歯磨きや歯科医院でのメンテナンスに対する意欲が低下してしまいます。デンタルプラークが付着した状態が続き、それが虫歯や歯周病の原因となり、歯が失われます。歯が無くなると、きちんとした義歯を入れない限り噛めない食品が増加します。また社会性の低下によって人と会話しなくなると、唇や舌の活性が落ちて活舌の低下や食べこぼし、わずかのむせが多くなってきます。私事になりますが、86歳の母が田舎で一人で住んでいるのですが、比較的アクティブな人間で近所の人の世話を焼いたりしているのですが、このコロナ騒ぎでそれも思うようにできなくなり、時たま電話すると「今日は誰とも話さんかったわ」と言ったりしてますが、その時には喋りが十分ではないな、と感じることがあります。オーラルフレイルになると、食欲の低下や食品多様性の低下(食べやすいものだけ食べてしまう。つまり炭水化物の量が増えて野菜やたんぱく質が減ってしまう)ということになります。さらにオーラルフレイルが進むと噛む力の低下、舌の筋肉の力の低下、そして食べる量が減少し、低栄養や運動量の低下、代謝量の低下、サルコペニアになってしまいます。最終的に摂食嚥下障害や咀嚼機能不全となり、運動・栄養障害、フレイル、要介護となってしまうのです。
 先年、「口腔機能低下症」という日本老年歯科医学会が提唱した病名を保険診療のなかに導入いたしました。これは、このオーラルフレイル概念を病名にしたものです。これにより歯科医療が国民の健康と長寿にさらに貢献できることを期待しています。
東京医科歯科大学病院 首席副病院長 水口俊介

オーラルフレイルの定義

老化に伴う様々な口腔の状態(歯数・口腔衛生・口腔機能など)の変化に、口腔健康への関心の低下や心身の予備能力低下も重なり、口腔の脆弱性が増加し、食べる機能障害へ陥り、さらにはフレイルに影響を与え、心身の機能低下にまで繋がる一連の現象及び過程。

口腔機能の低下への悪循環

東京医科歯科大学病院 医科(医系診療部門)

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