3.顎関節症の原因


 音の原因は? 〜関節円板の障害〜          関節円板とは

 歯科医院に来院される患者さんの3/4がこのタイプで,「関節円板障害」とよびます.関節円板の位置のズレや,変形があることで「カクカク」といった開閉口時の音(クリック)がでたり,変形が大きいと口が途中までしか開かなくなります.関節円板の位置のズレは非常に多くみられ,これまで何の症状を経験したことのない人でも,少なくともその中の10数%には軽度なズレがあると報告されています.また「カクカク」音はあるけれども,そのほかには痛みも開口障害もこれまで経験したことがない人も多数います.何の症状も経験したことがない人をあわせると,関節円板に多かれ少なかれ変形がある人は,おそらく日本の人口の1/3にのぼるのではないでしょうか.
 関節円板がこれほどズレを起こしやすい理由として,関節円板は下顎頭の外側と内側には強く連結しているものの,前後方向への連結はゆるやかなことがあげられます.この構造によって関節円板は前後へ大きく動くことが可能になっているのです.

 関節円板の変形は本来の位置から前にずれる形で起こることが大半で,これを関節円板前方転位かんせつえんばんぜんぽうてんいといいます.変形が起こるとき,関節円板の上には頭蓋骨があるので,下に出っ張った形になります.
 このようになると,口を大きく開けようとして下顎頭を前方に移動させるときに,関節円板の下面の出っ張りに下顎頭がいったんひっかかり,下顎頭がさらに前に出るときにひっかかりがはずれて「カクン」と音を出します.ですから,大きく口を開けてから閉じると関節円板が戻り,このときも「カクン」と音がします.閉じるとき音が出ない人もいます.
 多くの人では,この段階で関節に痛みをおぼえることはありませんが,中には音と痛みを両方とももつ人もいます.
 さらに変形が強く起こった場合には,変形した関節円板の出っ張りを下顎頭がくぐり抜けられなくなり,下顎頭の前方移動が制限されてしまいます.こうなると口は大きく開けられなくなるとともに,多くの場合,開口時の痛みが強くなります.