硬組織構造生物学分野
last updated 2021/11/24

歯の比較形態学  Comparative Morphology of the Tooth


Molars of Hystrix

この写真、不思議な歯ですね。ヒト以外の動物に目を広げると、さまざまな歯や構造があり、その多様 性に驚かされます。どういう組織構造をしているのか、どうやって作られたのか、どういう機能があるのか、そういうことを知りたくなります。
 
幸い、本学にはさまざまな動物の骨標本や組織標本があります(くわしくはこちら)。 そこで、こうした標本を活用して、
比 較解剖学や比較組織学の記載研究をしています。将来的には 分子生物学的手法を組み合わせた研究を目指しています。

[上の歯は、ヤマアラシの臼歯群で、左からP4, M1, M2, M3 です。咬合面の白い凸状の線がエナメル質で、外周のエナメル質のすぐ内側の黒い凹部が象牙質、内部にいくつかあるエナメル質の輪の内側は充填歯冠セメント 質。また、外周の側壁にある黄色い薄皮が外周歯冠セメント質です。]



■1.組織標本と骨標本歯界展望 新十二歯考

本学には、さまざまな動物の歯の組織標本と頭蓋骨標本があります。これを、
2015 年から整理し、基礎的な研究を開始しました。2017年3月には、骨標本室の大改修も終え、ほぼ全容をつか めるようになりました。

本学の歯の組織標本や頭蓋骨標本は、 現在では 入手不可能な動物も多く、また、作製の手 間・時間・技術も考えると、現在、これをゼロから作り直すことはほとんど不可能で、貴重な研究資 源、 教育資源と考えています。

そこで、これらの標本活用の一環として、「新・十二歯考〜十二支でめぐる歯のかたちづくり」という連載をしまし た。十二支の動物たちを使って、歯や咀嚼の面白さを紹介しています。

2020 年6月には、これを書籍化した「新十二歯考〜十二支でめぐる歯の比較解剖学」を上梓しました。

参考文献 
田畑純 「新十二歯考:十二支でめぐる歯の比較解剖学」 医歯薬出版 2020
田畑純:新十二歯考〜十二支でめぐる歯のかたちづくり〜

 
(1) 子:木の実を囓る  歯界展望 130(4) 773-779 (2017-10) 

(2) 丑:草を喰む 歯界展望 130(5) 1005-1009 (2017-11)

(3) 寅:肉を食らう 歯界展望 130(6) 1213-1218 (2017-12)

(4) 卯:重歯で咀む 歯界展望 131(1) 177-181 (2018-1)

(5) 辰:究極の歯 歯界展望 131(2) 383-389 (2018-2)

(6) 巳:獲物は丸呑み 歯界展望 131(3) 573-579 (2018-3)

(7) 午:歯の皺を読む 歯界展望 131(4) 747-752 (2018-4)

(8) 未:毛と角のはなし 歯界展望 131(5) 935-941 (2018-5)

(9)
申:手を使う
歯界展望 131(6) 1247-1253 (2018-6)

(10) 
酉:嘴で啄む
歯界展望 132(1) 197-202 (2018-7)

(11)
戌:爪と牙で闘う
歯界展望 132(2) 421-427 (2018-8)

(12)
亥:まるで十徳ナイ フ 
歯界展望 132(3) 647-653 (2018-9)

(13)
人:おいしく食べる
歯界展望 132(4) 737-746 (2018-10)
後藤仁敏・大泰司紀之・田畑純・花村肇・佐藤巌編 「歯 の比較解剖学 第2版」 医歯薬出版 2014



■2.歯の進化研究

歯は化石として残りやすいため、進化研究に必須の試料です。また、現生の生きものの歯を見ると、さ まざまなヴァリ エーションがあり、細胞の構 成や 硬組織の構造までもが違うことがあります。そして、こうした進化の筋道はまだあまりわかっていません。

歯がどのように進化してきたのか。組織や細胞のレベルでどのように進化してきたのか。発生の手順がどのように進化してきたのか。硬組織そのも のの 起原と進化はどうなっているのか。こうしたことを知りたいと考えています。

シーラカンスのウロコ研究とも並行して進めている研究です。

参考文献 
田畑純:遺伝子から見た歯の進化.後藤仁敏、大泰司紀之、田畑純、花村肇、佐 藤巌編 「歯の比較解剖学 第2版」 医歯薬出版 東京 (2014) ★
田畑純:歯のデザインを決めるもの. 葛西一貴,近藤信太郎編 「歯科に役立つ遺伝学」 わかば出版, 東京 (2014) ★★
田畑純,近藤信太郎:咬頭はどのようにしてできるのか ―歯の発生・変異・進化と分子メカニズムからの考察―. Anthropol. Sci., 114: 57-62 (2006)
田畑純:外胚葉異形成症の原因遺伝子と歯の発生における役割.  鹿大歯学部紀要, 24: 53-61 (2004) ★
田畑純:歯の発生初期の分子機構. Clinical Calcium,13: 628-633  (2003)
栗栖浩二郎, 田畑純: 歯の形成異常をもたらす遺伝性疾患とその原因遺伝子. 解剖誌, 73: 201 - 208 (1998)
Kurisu, K. and Tabata MJ: Human genes for dental anomalies. Oral Dis, 3: 223 - 228 (1997)


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