咀嚼運動の遂行に関与する中脳網様体の
積分中枢としての役割

野崎修一


咀嚼運動の遂行には視床前腹側核(VA)-(CMAo)-中脳網様体(MRF)-GCoの経路が関与することを示した。この中脳網様体(MRF)には大脳皮質、視床下部、黒質網様部、赤核からの直接投射、および嗅覚、視覚性の入力があることが確認された。MRFはこれらの入力の積分中枢としての役割を持ち、咀嚼の遂行に関与していることが示唆された。



咀嚼時の顎、舌協調運動に関与する神経機構

野崎修一


咀嚼中に、咀嚼筋(MM)および舌筋の協調運動が見られる。舌下神経運動核(HMN) に直接投射するプレモ−タ−ニュ−ロン(PM)は、MMのPMと同様に、小細胞性網様 核(PCRF)に存在し、咀嚼リズム発生器からリズミカルな入力を受け、HMNにリズミカルな 興奮性出力を送っている。またその一部は顎二腹筋運動ニューロンに同様の 出力を送っており、これらのPCRFニューロンが咀嚼時の顎、舌協調運動に関与していると 考える。



触圧感覚受容機構の構造・発生・機能

柴内俊次・井関八郎


摂食・咀嚼を誘発する触圧受容器の例として、モグラのアイマ−器官の酵素細胞化学検索 を行い、Caイオン-ATPase、Adenylate cyclase、5'-Nucleotidaseなどの酵素活性が アイマー器官の基底側の細胞膜などに高密度に局在することが判明した。また、 ヒミズモグラ及びスンクスの胎生期の表皮内で発生中の幼若メルケル細胞から 偽足様突起が伸びて真皮内で三叉神経2枝の感覚線維と絡み合ったまま表皮に 神経を誘導して終末が形成されると思われる現象を観察した。



哺乳類味細胞のイオンチャネルと
化学刺激に対する応答

杉本久美子


マウス味蕾から単離した味細胞にWhole-cellパッチクランプ法を適用し、 電位依存性ならびに化学刺激誘発性のイオン電流を解析した。その結果、 味細胞の膜には遅延整流性K(イオン)チャネルと電位依存性Na(イオン)チャネル が存在すること、さらに、旨味物質のグルタミン酸ナトリウムは選択性の 低い陽イオンチャネルを活性化し、甘味を呈するアミノ酸は細胞内 セカンドメッセンジャ−を介してK(イオン)チャネルを抑制し、味細胞の脱分極 を生じることが判明した。



老化に伴う味覚感受性変化の機構

杉本久美子・井関八郎


高齢者では味覚閾値の顕著な上昇が認められているが、その要因は未だ不明である。 要因を検索するため、透過電顕像から、高齢と若齢のマウス味蕾の微細構造を 比較検討した。その結果、高齢マウスでは、有郭乳頭味蕾の細胞内に多数の 空胞が認められ、茸状乳頭味蕾の細胞に老化物質であるリポフスチン顆粒 の顕明な集積が見られた。この老化による味蕾細胞の微細構造の変化は、 味覚受容器における機能低下に関すると推測された。






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