生 化 学
Biochemistry
吉 岡 耕 一
1 科目の概要
生化学は生体の機能と構造を分子レベルで理解することを目標としている。すなわち,生体を構成している物質がどのような化学構造,性質を持ち,どのような機能を果たしているか,またそれらがどのようにして合成され,分解されていくかを解明しようとする学問の分野である。
2 教育方針・教育目標
生化学の近年の進歩は目覚しく,生体の各種の現象が生体分子の分子構造やその変化の過程としてかなり具体的に把握できるようになってきている。講義はこのような最新の知識をもとに進めるが,基本的には個々の仔細な理解よりも,生命現象の本質的な部分について体系的に理解することを目標にする。その上で,医療において特に必要な生化学的知識を身につけることを目指す。
3 教育内容
まず,糖質,脂質,アミノ酸とタンパク質,核酸などの主要な生体構成成分の性質と意義について,次にそれらの物質の生合成,分解などの代謝過程の理解が必要である。とくに,ATPを中心とする生体でのエネルギー転換過程の理解が重要である。また,核酸の塩基配列に組み込まれた情報から,タンパク質合成が行われる過程や,遺伝の分子生物学的理解も重要である。最後に,臨床医学に特に関連の深い分野である,血液やホルモンの生化学,主要な疾患の病態生化学を理解するようにする。
回数 |
項 目 |
内 容 |
担当者 |
1 |
序論 |
生化学の意義,生体成分の概要,細胞の基本構造についての概説 |
吉岡 |
2 |
糖質 |
糖質の定義と分類 単糖類,少糖類,多糖類の種類,化学的性質や機能 |
〃 |
3 |
脂質 |
脂質の定義と分類 脂肪酸,中性脂肪,リン脂質,糖脂質,ステロイド化学的性質や機能 |
〃 |
4 |
タンパク質 |
アミノ酸の構造と種類 ペプチド,タンパク質の構造,種類や性質 |
〃 |
5 |
核酸 |
ヌクレオシドとヌクレオチドの構造 DNAとRNAの構造と性質 |
〃 |
6 |
酵素,ビタミン |
酵素の分類と特徴 補酵素,ビタミンの種類と機能 |
〃 |
7 |
エネルギー代謝 |
消化と吸収の概要 ATPと高エネルギー化合物の意義 |
〃 |
8 |
糖質代謝(1) |
解糖の代謝経路と意義 クエン酸回路の代謝経路と意義 |
〃 |
9 |
糖質代謝(2) |
電子伝達系と酸化的リン酸化,糖新生,グリコーゲンの合成と分解,ペントースリン酸回路,グルクロン酸経路,糖質代謝異常 |
〃 |
10 |
脂質代謝 |
脂肪酸の貯蔵と動員,脂肪酸の分解と生合成 リン脂質とステロイドの代謝,脂質代謝異常 |
〃 |
11 |
アミノ酸代謝 |
アミノ酸の窒素と炭素骨格の分解,必須アミノ酸,アミノ酸代謝異常 |
〃 |
12 |
タンパク質合成 |
DNAの複製,RNAの転写とプロセシング,タンパク質の生合成 |
〃 |
13 |
遺伝の生化学 |
遺伝子と染色体,遺伝子の構造と機能,遺伝と疾患 |
〃 |
14 |
ホルモン |
ホルモンの種類と機能 |
〃 |
15 |
器官の生化学(1) |
血液成分の種類と機能 |
〃 |
16 |
器官の生化学(2) |
各器官の生化学 |
〃 |
〔単位〕必修2単位
〔場所〕新II講堂
4 教科書・参考書
教科書として,
林 典夫・廣野治子(編):シンプル生化学(南江堂)
を使用して講義を進める。他の参考書としては以下のものがある。
原諭吉・太田英彦(編):スタンダード生化学(文光堂)
レーニンジャーほか:レーニンジャーの新生化学(広川書店)
アルバーツほか:細胞の分子生物学(ニュートンプレス)
5 他科目との関連
生化学の対象は広く,他の多くの科目と関連しているが,特に関連の深い科目として,栄養学や生理学,薬理学がある。
6 受講上の注意
時間数は限られているので,講義で触れられなかった領域のことなどを各自自習する必要がある。
7 成績評価方法
前期の試験期間に筆記試験を行い,評価する。