ヒト子宮動脈粥状硬化におけるNOS阻害物質及びET‐1の関与
―第9回北米閉経学会 Young Investigator Award 受賞―

医学部 産科婦人科学講座 助手 別 府 正 志


 この度,第9回北米閉経学会におきまして,Young Investigator Awardを頂戴いたしました。これにより,本稿にて研究の概要を紹介させていただく機会を与えていただきました。
 1998年度ノーベル医学・生理学賞が,約20年前の一酸化窒素(NO)の重大な機能の発見に対して与えられたことは記憶に新しいところでありますが,私の研究もその流れの上にあります。NOが血管内皮細胞より産生され,それが血管の弛緩を惹起するのみならず,血管内膜の肥厚の抑制をすることは良く知られた事実であります。そして,NOの産生の低下が,動脈硬化の進展に関わっていることは近年示されてきていますが,その機序に関しては,ヒトにおいてはもちろん,動物実験にてもまだ解明されていません。我々は,NO合成酵素(NOS)の内因性阻害物質に着目し,生体材料工学研究所分子設計部門(旧医用器材研究所化学部門)の東助教授のグループと共同研究を進めて参りました。その結果,EにおけるNOの産生能をそのセカンドメッセンジャーであるcGMPを測定することによって評価し,一定の成績を得ております。また,血中のNOS阻害物質濃度と脂質の関係等についても並行して研究を進めております。
 本研究が,まだあまり知られていない内因性NOS阻害物質に着目した研究であること,ヒトを対象にした研究であること等が受賞の理由ではないかと考えております。
 私が本格的に研究を開始してからまだ3年足らずですが,この様な短期間で結果を出すことができたのは,ひとえに本教室の麻生教授をはじめとする医局員の皆さんの協力と,東助教授を筆頭とした研究所とのスムーズなコミュニケーションのおかげと思っています。本学では,規模こそ小さいですが質の高い研究所が,大学・病院と非常に近接して立地し,臨床研究には極めて有利な環境にあると思われます。今後も,この様な環境を生かし,研究を進めていこうと考えております。

説明 ヒト子宮動脈を用いた研究の結果,血管内皮細胞内NOS阻害物質濃度の上昇が,血管壁中ET−1を介して,あるいは直接に,動脈硬化の発症・進展と関連していることが示唆された。