外来プライマリナーシングによる療養相談活動6年間の実態と評価
  ―第36回日本社会保険医学会学会賞を受賞して―

医学部 保健衛生学科看護学専攻 教授 数 間 恵 子


 近年の入院期間の短縮化に伴い,入院中に導入された様々な医療処置の管理に十分熟達せずに退院して在宅療養に移行する人々や,外来で医療処置を導入される人々が増加しています。そのような人々に対する在宅療養支援を拡充するために,平成4年4月から,外来で看護婦が在宅療養に必要な相談・指導を行った場合の評価が診療報酬の上で「在宅療養指導料」として設定され,現在では1回170点が認められています。算定要件は,プライバシーの確保できる場所で個別30分以上対応し,専用の記録を行うことであり,適応は「在宅療養指導管理料」算定患者,あるいは「器具を装着しており,その管理に配慮を要するもの」となっています。
 この報酬項目の新設を契機として,私は本学に奉職する2年前から現在に至るまで,社会保険船橋中央病院の看護部職員とともに,看護支援が必要と判断された外来患者に同じ看護婦が継続して療養上の相談にあたるシステムを作り,発展させてきました。活動当初の3年間の活動の内容は「外来プライマリナーシング(医学書院,1996)」というタイトルで1冊にまとめ,上梓しました。

 今回,このプライマリナーシングによる外来患者療養相談活動をともに続けてきた仲間と連名で,第36回日本社会保険医学会学会賞を受賞しました。受賞対象となったのは,6年間の相談実態と,相談活動に携わることで看護婦がどのように変化・成長したかを調べたものです。グラフに相談件数(表紙裏),相談実施日数,1日当たりの相談者数の推移を示しました。相談実施日数でみると,休日以外はほぼ相談が行われていることになり,活動開始当初に比べて着実に定着してきている様子がわかります(なお,平成10年度の相談件数は1000件を突破しました)。また,相談業務に対する看護婦の意識・態度では「大変ではあるが,仕事への満足感が高まった」など,好ましい結果が得られています。
 授賞式は札幌で行われ,残念ながら私は学事と重なって出席できませんでしたが,賞状と会場の様子を仲間が撮影してくれました。

 私自身はこの活動を通じて,人々が自分の行動によって健康問題に伴う困難をコントロールできるという感覚をもてるようになること,その感覚の獲得には,相談の態勢として自己決定を支える選択肢の提示が基本であることを実感しております。また,その態勢を「看護過程」という,看護が用いている問題解決の枠組みに則って構造的に示すことが,相談時の看護婦の対応を技術として確立する上で重要と考えています。
 今後,さらなる在宅医療の推進が予測され,人々の
QOL向上と診療報酬の確実な補足という点から,外来における看護提供システムの構築が重要になってくると考えられます。 また,専門看護師や認定看護師の活動の場としても開拓していく必要があるところです。