細胞のプロフィール


  1.細胞の概観
  2.核
  3.小胞体とリボゾーム
  4.ゴルジ体装置
  5.サイトゾールとミトコンドリア
  6.細胞骨格
  7.細胞膜







更新日:2002/04/08

1.細胞の概観

 大部分の細胞の大きさは、20μm前後で、肉眼で見ることはできない。したがって拡大する必要がある。

 拡大に使われるのが顕微鏡である。顕微鏡には可視光線を使う光学顕微鏡と、電子線を使う電子顕微鏡がある。

 光学顕微鏡の解像力はおよそ0.1μm、電子顕微鏡で0.2nmである。しかしながら、実際の組織や細胞を観察するためには、電子線が透過できるように薄く切って、コントラストをつけるために染色しなければならないので、電子顕微鏡でよく使われる倍率はおよそ10万倍までである。

 コントラストをつけるために、光学顕微鏡では色素を使い、電子顕微鏡では重金属塩を使う。光学顕微鏡でよく使われる染色法はヘマトキシリン・エオシン染色で、細胞質がピンク色、核が青紫色に染まる。

 この図は、ヘマトキシリン・エオシン染色をほどこした膵臓の光学顕微鏡像である。真中に見える細胞集団が膵島(ランゲルハンス島)で、周囲は消化酵素を産生し分泌する外分泌細胞の集団(腺房)である。どの細胞も、中央に核(nucleus)が見える。核以外の部分を細胞質(cytoplasma)という。外分泌部の細胞質中には細かい粒(顆粒 granule)が見える。この顆粒の中に消化酵素が含まれている。

 これをスケッチした図がこの図である(いずれも藤田・藤田標準組織学各論第2版、医学書院)。

 この他、細胞に含まれる物質を染め分けるために各種の染色法が開発されている。

 しかし光学顕微鏡では、核以外に細胞質中の微細な構造はよく見えないので、もっと解像度の高い電子顕微鏡で観察する必要がある。電子顕微鏡では、重金属がタンパク質に吸着し、タンパク質でできた構造のあるところは、この重金属のために電子線が吸収されるために黒く見える。

 電子顕微鏡で観察すると、細胞質中にいろいろな構造物が見えてくる。これを細胞小器官(organella)と呼ぶ。

 膵臓の外分泌腺細胞を、電子顕微鏡で見ると下のような像が得られる。消化酵素を含む分泌顆粒(黒い円)が、細胞内にたくさん含まれているのがわかるだろう。

 左上の方に核があり、その回りを取り囲んで膜系が発達している(小胞体)。この膜系で分泌顆粒が作られる。そのほか、楕円形で中に棒状の構造物が詰まったものが見える(ミトコンドリア)。これらの細胞小器官がどのような構造で、どのような機能を持っているかが詳細に調べられるようになった。

 この電子顕微鏡像を色分けし、名前を入れた図がこれである。

 次の図は肝細胞の電子顕微鏡像である。細胞内部の多くの構造は、膜が複雑に折りたたまれた構造をしている。また、電子顕微鏡像では連続しているように見えないが、つながっていることが多い。たとえば、核膜と小胞体は連続している。

 電子顕微鏡で見ている像は、非常に薄い断面なので、三次元の広がりを持つ細胞の構造を理解するためには、多くの断面図から再構成する必要がある。

 これらの電子顕微鏡像をもとに、動物細胞を再構成して模式的に描いたものが次の図である。植物細胞も基本構造は同じだが、葉緑体(chloroplast)や液胞を含み、細胞膜の外側はさらに細胞壁(cell wall)によって覆われる。

 細胞内部には膜構造が発達している。いずれの膜も単位膜(unit membrane)構造をしている。

 この模式図は真核生物(eukaryote)のものである。原核生物(prokaryote、藍藻など)には核膜がなく、細胞小器官もあまり発達していない。

 それでは、各部の構造について述べてゆこう。

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2.核(nucleus)

 膵臓のスケッチからわかるように、すべての細胞には原則として一個の核をもっている。真核生物の核は、核膜(nuclear envelope)によって細胞質から仕切られている。

 核膜は二重の膜からなる袋で、すでに述べたように小胞体と連続している(上の図B)。

 ヘマトキシリンで染色した核を光学顕微鏡で見ると、濃く染まる核小体(nucleolus、仁)が真中に見える。核膜の内側には不定形に染まる部分が見える。これを染色質(クロマチン、chromatin)という。

 核を電子顕微鏡で観察しても、核膜と核小体以外に、明瞭な構造は認められない。染色質も不定形に染まり、ふつうは特定の構造は認められない。しかし、この染色質は、染色体が脱凝縮しているのであって、本当はDNAとそれに付随するタンパク質から構成されているのである。

 核膜には、核膜孔(nuclear pore)と呼ぶ穴が開いていて、細胞質と連絡している。

 細胞分裂のときに、染色質は凝集して、染色体(chromosome)になるこの顕微鏡写真はショウジョウバエ唾液腺の巨大染色体で、ふつうの細胞に見られる染色体が、この細胞では細胞分裂しても分離しないために、特に太くなっている。巨大染色体を観察すると、染色体の構造がよくわかる。

 染色質はDNAがヒストンと呼ばれるタンパク質を規則的に巻き付いたもの(nucleosome)が凝集したものである。したがって染色体の構造は次のような階層構造となる。

  DNA−nucleosomes−coiled nucleosomes−染色質−染色体

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  DNA and chromatin

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3.小胞体とリボソーム(endoplasmic reticulum and ribosome)

 光学顕微鏡では見えないが、電子顕微鏡で観察すると細胞質には直径3nmほどの、多数の小顆粒が散らばっている。電子顕微鏡で詳細に観察すると、この小顆粒は、さらに小さな顆粒とそれよりはやや大きな顆粒がペアになったダルマ型をしている。これがリボソーム(ribosome)で、タンパク質合成装置である。

 細胞質中に浮かんだリボソーム(フリーなリボソーム)は、染色体のDNAに書き込まれた遺伝情報を写し取って(転写という、後述)核膜孔から細胞質へやってきたメッセンジャーRNA(後述)の情報をもとに、タンパク質の合成する。フリーなリボソームで合成されたタンパク質は、その細胞で使われる酵素などである。

 小胞体(endoplasmic reticulum、ER)は、細胞内に発達した膜系で、滑面小胞体と粗面小胞体があり、はたらきが違う。ただし、両者は連続している。

 滑面小胞体(smooth ER)は名前のとおり、表面に何も付着していなくて、管状である。リン脂質、ステロイド、脂肪酸を合成する場となる。

 粗面小胞体(rough ER)は表面にリボゾームが付着し、扁平な袋を積み重ねたような構造をしており、その表面にはリボソームが付着している。リボソーム上でタンパクが合成がおこなわれるのはフリーのリボソームの場合と同じだが、粗面小胞体で合成されたタンパク質は、細胞外へ分泌されるタンパク質や、膜タンパク質として細胞膜に埋め込まれるタンパク質である

 この違いは何によっておこるのかというと、分泌されるタンパク質や膜タンパク質のメッセンジャーRNAの先頭には特殊な情報が書き込まれているためである。この部分は翻訳されるとシグナルペプチドと呼ばれる特殊なアミノ酸配列をしたペプチドとなる。先頭にシグナルペプチドのあるペプチドは、小胞体の受容体と結合して、管腔内へ取り込まれる。小胞体内では必要に応じて糖などが付加される。

 完成したタンパク質は、小胞体の膜に包まれて、くびれて小胞となり、次に述べるゴルジ装置の膜系と融合し、ふたたび取り込まれる。

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4.ゴルジ装置(Golgi apparatus)

 ゴルジ装置は、座布団ような袋が積み重なった構造をしている。

 リボソームで合成され管腔に落ちこんだタンパク質は、集められて小胞体からくびれて小胞となり、ゴルジ装置の膜系と融合し、さらにいろいろな処理を受けて、送り先によって仕分けられ、顆粒となって細胞質中で待機する。

 顆粒内のタンパク質が細胞外へ分泌されるタンパク質の場合(消化酵素、ホルモンなど)は、この分泌顆粒は必要に応じて細胞膜と融合して中身が細胞外へ放出される。

 顆粒内のタンパク質が膜タンパク質の場合は、速やかに細胞膜と融合して、膜に埋め込まれる。

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5.サイトゾールとミトコンドリア(cytosol and mitochondrion)

 サイトゾールというは、顕微鏡で見てもとくに何も構造のないところで、可溶性のタンパク質や糖などを溶かしこんだ溶液部分である。

 ミトコンドリアはジェリービーンズのような形をしている。断面を見ると、二重の膜(外膜と内膜)でできていて、内膜は内部に向かって突出し、幅20〜30nmの棚状のクリステ(cristae)を形成している。

 内膜に包まれた一番内側をミトコンドリア基質(matrix)と呼び、内膜と外膜の間の腔所を膜間腔(intermembrane space)と呼ぶ。基質に面したクリステ上には基本粒子と呼ばれる粒子がたくさん付着している。

 ミトコンドリアには、固有のDNAと独自の複製、転写、翻訳系を持つ。また、分裂により増殖する。

 ミトコンドリアは、生命活動に必要なエネルギーのもとであるATPを合成する場所で、まさに細胞のパワープラントである。

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6.細胞骨格(cytoskelton)

 細胞は、組織の中では一定の形を保っている。一方、血球のような遊走細胞は形を変えて動き回ることができるし、細胞の中の細胞小器官(organella)は常に動いている。気管の表面を覆う繊毛は繊毛打を繰り返し、ゴミなどを排出する。

 細胞の形を保ったり、細胞小器官が動いたりできるのは、細胞内に張り巡らされたタンパク質の繊維のネットワークのおかげである。これらの構造を細胞骨格と呼んでいる。

 運動性のタンパク質繊維には、直径7nmの微小繊維(microfilament = actin filament)と直径25nmの微小管(microtubule)があり、直径8〜10nmの中間径繊維は運動性がなく細胞の形を保つのに役立つ。

 上の写真は急速凍結法によるレプリカ像で、左はマウス小腸上皮細胞の微絨毛の基部。アクチン繊維の束が見える。右はザリガニ神経軸索で、微小管と架橋構造が見える。

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7.細胞膜(cell membrane)

 すべての細胞は細胞膜で包まれている。細胞膜は脂質の二重膜で構成され、そのなかに膜タンパク質が浮かんでいる。

 膜タンパク質には、膜を貫通するものと、そうでないものがある。細胞の外に面した膜タンパク質あるいは脂質の頭からは、糖鎖が伸びることが多い。


 細胞内外との物質のやりとり、隣の細胞との接着などに、膜タンパク質は重要な役割を果たす。

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