バスキュラーラボ

バスキュラーラボ

1.バスキュラーラボとは

 バスキュラーラボ(Vascular lab.)は、血管外科分野の様々な検査装置を集約した総合診断施設であり、血管外科に特化した専門診断施設です。診断装置には四肢血圧脈波測定装置や超音波診断装置(エコー)などがあり、総計で年間3400例の診断(2005年度)を行っています。1箇所に多種の診断装置を設置しているため、短時間で必要なデータを収集することができ、正確で迅速な診断に大きく寄与しています。また、集積されるデータをもとに新たな診断基準の策定なども行っています。患者さんの身体の様子を詳しく知ることができます。

 弾力ストッキングは静脈瘤の治療に有効な治療用具ですが、バスキュラーラボには「弾力ストッキング・コンダクター」が常住しており、正しい指導を気軽に受けることができます。

 バスキュラーラボには血管診療技師(CVT: Clinical Vascular Technologists)が常駐しております。 血管診療技師とは血管の検査に精通していることを認定する資格です。くわしくは下記のホームページをご覧ください。
https://plaza.umin.ac.jp/cvt/
 

2.バスキュラーラボの特徴

 バスキュラーラボに設置している検査装置は、すべて無侵襲的方法です。(無侵襲的方法とは、身体を切ったり、放射線を照射したりせず、検査後に身体に影響が残らない検査方法です。) そのため、初診時、経過観察時、治療後など様々な状況に応じて検査を行うことができます。 検査中も患者さんとのコミュニケーションを大切にしています。

3.バスキュラーラボで検査を受けられる患者さんへ

 バスキュラーラボで収集される診断結果を蓄積することにより、血管外科分野での治療方法の発展の元となるデータベースの構築が可能となります。 患者さん一人一人の検査が、患者さんご自身のためになるだけでなく、医療の発展に寄与することをご理解いただき、検査へのご協力をよろしくお願いいたします。

4. バスキュラーラボで行われている検査

 普段バスキュラーラボで行われている検査についてご紹介します。

四肢血圧脈波測定装置

 四肢血圧脈波測定装置は、閉塞性動脈硬化症のスクリーニングに用いられます。 閉塞性動脈硬化症がない患者さんに対しては、 全身の動脈硬化の進行具合を調べることができます。 

 この検査で用いられる指標を、足関節上腕血圧比 ABI (Ankle Brachial Pressure Index) とよびます。正常値は、0.9~1.4です。0.9以下、あるいは1.4より高い値の場合には、下肢の動脈硬化病変の存在が疑われます。Fontaineの虚血症状分類での重症度と、ABIにはよい相関があることが知られています。

・Fontaine分類
 I度  :無症状
 II度 :間歇性跛行
 III度:安静時痛(安静時疼痛)
 IV度:潰瘍・壊疽
 

四肢血圧脈波測定装置

超音波診断装置(エコー装置)

 超音波診断装置は、血管形状の評価、原因部位の特定などに用いています。 対象部位は、頚動脈、腹部血管、上下肢動脈、上下肢静脈などです。痛みがない検査で、その場ですぐに結果がわかります。

 対象部位により、ベッドに寝ていただくか、立位にて検査を行います。 プローブを密着させるために皮膚にゼリーを塗ります。

超音波診断装置(エコー装置)

近赤外線分光法

 近赤外線分光法を用いることによって、石灰化の進んだ血管であっても、筋虚血を評価することができます。 トレッドミル運動負荷法における評価に用いられます。

近赤外線分光法を用いた歩行検査

経皮酸素分圧法

 経皮酸素分圧法により、虚血の診断や緊急性の評価、糖尿病足の虚血評価、潰瘍の治癒予測、虚血肢切断の必要性の評価、虚血肢切断部位の決定、薬剤評価などが可能です。

経皮酸素分圧測定装置

トレッドミル検査

 トレッドミルを用いた運動負荷試験により、間歇性跛行の程度評価や整形外科的な疾患など他の要因との識別が行われます。 活動性の評価が可能なため、生活指導の資料を得ることができます。

 トレッドミルとは、以下の写真のような歩行装置のことです。この上で一定距離を歩いていただくことにより、検査を行います。

 この検査では、四肢血圧脈波測定で用いた ABIを関連性の強い指標として使用します。 また、間接性跛行の程度評価には、跛行出現距離 ICD (initial claudication distance)、絶対跛行距離 ACD (absolute claudication distance)、最大跛行距離 AWD (absolute walking distance) など、どのくらいの距離歩くことができたかを指標として用います。
 

トレッドミル検査装置