本分野OBの藍 稔先生のコラムを掲載いたします.
第1回は,ある咬合器にまつわる不思議な縁についてのお話です.
昭和50年に発刊された「下顎運動と咬合器」の中で紹介されたSchröder-Trebitschの咬合器は,編纂当時「この咬合器についての論文は見当たらず,発表された年代も1930年前後としかわからない(166ページより抜粋)」詳細不明な咬合器でした.しかしその後,「偶然というか,奇跡的とでもいうか(本コラムより抜粋)」,著者はこの咬合器の考案者と一度だけめぐり会うこととなります.そのときの資料をもとに,40年以上の時を経て論文の内容に新たな追加と訂正を試みます.
第3回から第5回まで「遊び」というキーワードをもとに,身近な遊びから咬合の中に潜む遊びの意味を考察していきます.
3部作の「その1」は,導入として一般的な「遊び」について論じます.
第6回は五重塔についてのお話です.
建立から何百年もの間,地震や大風にさらされても倒壊しない五重塔のしなやかな構造の検証から,連結強度を求められるとされる補綴装置の構造に対して,敢えて疑問を投げかけます.
第8回は人工歯についてのお話です.
パーシャルデンチャー用の人工歯(リブデントEXパーシャル)の開発に際し,咬合面の形態までを議論するか否か議論になった経験を通して,Gysiの軸学説と咬合小面学説を考察します.
第9回は咬合湾曲についてのお話です.
下顎歯列を側方より観察した際,その咬頭を連ねると上に向かって凹湾した線に見える,いわゆるSpee湾曲について,実際のSpeeの論文を取り上げて考察します.
前回概説されたSpee湾曲はどのように出来たのか?
今回は,国立科学博物館ホームページの標本・資料データベースで閲覧できる,縄文時代,古墳時代,中世期,江戸時代の頭蓋骨標本をもとに,Spee湾曲の出現についての仮説を述べます.
第12回は,咬合論の核ともいうべき「中心位」「中心咬合位」についてです.最新の日本補綴歯科学会の歯科補綴学専門用語集に記載されているこれらの単語の説明は,どのような背景に基づいてなされているのか?その背景に妥当性があるのか?歴史的背景と,我が国における下顎運動や咬合についての多くの素晴らしい業績によって解明された情報が,必ずしも反映されていないことに対する問題提起がなされています.
前回の中心位に続き,顆頭位を考える上で重要な「外側翼突筋」についてのお話です.外側翼突筋を触診できるのか,という議論は現在でも見受けられます.今回の記事では,触診あるいは筋電図による評価が可能かどうかについての考察を経て,外側翼突筋の緊張状態の測定法と「なぜ,外側翼突筋は機能亢進が生じやすいのか?」について議論が展開されます.前回の記事と合わせて,是非,お楽しみください.