部分入れ歯の上手な付き合いかた

部分入れ歯の上手な付き合いかた

義歯(入れ歯)と上手に付き合って,お食事をおいしく召し上がっていただけるように,知っておいていただきたいことがあります.

Q.義歯はいつ外すのがよいでしょうか?

A.義歯をずっと外さないでいると,お口の中の細菌が粘膜や歯に付着して,歯周病,口内炎,う蝕などの原因にもなります.義歯は朝に装着し,食事を終えるたびに毎回外して,歯を磨くのと同時に義歯も洗います.就寝前には外して保管するのが基本です.

☆ 義歯を一日入れるのは靴を一日中履いているのと同じです.寝ている間は粘膜や歯を休ませる良い機会です.日中も,入浴中など外せる時間があれば外すのがよいでしょう.このとき,歯肉や粘膜を指でマッサージするのも効果的です.

☆ 患者さんによっては,就寝中も義歯を入れるようお勧めする場合もあります.ただし,義歯を入れて寝た時は,お口の中に細菌(プラーク)が溜まりやすいので,起床したらすぐに口腔清掃が必要です.

☆ 義歯を外したら,きれいなお水(水道水)に浸しておきましょう.担当医師の指示に応じて,入れ歯洗浄剤を使用しましょう.

☆ お子様やペットがいらっしゃるお宅では,手が届きにくい場所に保管しておくのが安心です.

Q.これからは,好きな物を何でも食べられますか?

A.歯が全部あった時と同じように食事ができるためには時間がかかります.歯があったときとは違う,新しい噛み方に慣れることが必要だからです.

☆ 噛み方や食べ物には個人差があり,新しい義歯が古い義歯と同じように使えるのにも時間がかかります.
  
☆ 最初は硬すぎず,歯切れの良い物から慣らしましょう.食品はなるべく細かくしてから,お口に入れるようにしましょう.
  
☆ 前歯が義歯の方は,最初に小臼歯のあたりに食べ物をを入れて噛み始めましょう.慣れてきたら前歯や奥歯が義歯でも噛めるようになります.最初はゆっくりと時間をかけて咀嚼(そしゃく)することが大切です.

Q.おしゃべりできないのは,義歯が悪いのではないですか?

A.義歯を入れるとおしゃべりがしづらくなることがあります.義歯の形にもよりますが,10日ほど使うと慣れて改善されることがほとんどです.

☆ 会話は声だけでなく目と耳を使うので,義歯を入れたばかりの時に表情が伝わらない電話口で会話すると,より会話が難しいと感じます.
  
☆ お口の中が乾燥しやすい方,毎日お薬を飲まれる方,神経性の疾患を持っている方は,義歯を入れることで普段のお口の動きが難しくなることがあります.義歯の担当医とも相談してみましょう.
  
☆ 患者さんのお口の動きなどを考慮して,義歯の形をわずかに調整すると改善する場合もありますが,義歯を調整するのにも限界はあります.義歯の担当医に相談してみましょう.

Q.どうやって義歯を洗いますか?

A.入れ歯専用のブラシがあります.お口から必ず外して,流水下で汚れを落とします.

洗面台に水を張って洗浄すると,万が一落としても壊れる心配がありません.

研磨剤が入った歯磨剤(ハミガキ粉)を使用すると,義歯表面に傷ができ,臭いや着色の原因となります.水洗いで結構ですが,油物などに食器用の中性洗剤を使用すると効果的です.金具の部分は,先の細い硬めのブラシを使うと効果があります.

☆ 義歯の内面(粘膜に接する面)を指で触って下さい.ヌルッとしていたら,そこにはまだ細菌(プラーク)が残っている証拠です.確認しながら完全に洗う習慣を身につけましょう.

義歯用ブラシ(上段)とその当て方(下段).

Q.義歯が痛いのですが,我慢した方が良いですか?

A.痛みがあるときは,無理に使用せず,外してお口の中を休ませてください.

☆ 痛みがなくなるまで,担当医師が何度も調整を繰り返す必要があります
  
☆ 粘膜に傷がついてしまうと,たとえ調整をしても傷が治るまでは痛みがおさまりません.傷ができる前に,休ませながら慣らすことが重要です.
  
☆ 義歯は一人ひとりの患者さんのお口に合うよう,細かい配慮のもとに作られています.ご自身で削ったり,バネを曲げたりしないで,担当医師にご相談ください.

Q.入れ歯安定剤を使っても良いですか?

A.義歯は安定剤なしで使うことを想定して作られていますので,担当医の指示なしに使用することはしないでください.

☆ 不適切に安定剤を使用すると,お口の中を痛めてしまう危険性があります.

☆ お口の状態によって,安定剤が必要な場合・時期があります.お気軽に担当医に相談して,指示に従ってご使用ください.

Q.調子が良いので,歯医者さんに来なくて良いですか?

A.調子が良くても定期的に担当医のチェックを受けてください.

☆ 義歯は新しく作って5年以内に,多くの方に何らかの問題が生じるという報告があります.何も問題がないと思っても,1年以上受診しないのはたいへん危険です.

☆ 長く使っていると,義歯にヒビが入ったり,人工の歯が磨り減ったりしてしまいます.このような場合には,修理で対応可能な場合もあります.

☆ 義歯に問題がなくても,歯の状態や顎(あご)の形は年々変化します.この変化に合わせて,義歯の修理や作り直しが必要なこともあります.