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プレスリリース

「水の通り道(アクアポリン水チャネル)が動く原動力を発見」-尿崩症の新たな治療法の開発へ-

野田 裕美 特任助教
本学大学院医歯学総合研究科
腎臓内科学分野

東京医科歯科大学・大学院医歯学総合研究科・腎臓内科学(佐々木成 教授)の野田裕美(のだ ゆみ)特任助教の研究グループは、東京大学大学院神経細胞生物学ならびに北海道大学大学院細胞機能科学の研究グループとの共同研究で、腎臓での尿濃縮を担っているアクアポリン2が動くメカニズムを明らかにしました。この研究は、日本学術振興会の科学研究費補助金 学術創成研究費(水輸送を担うアクアポリン水チャネルの機能と制御機構,研究代表者 佐々木成)の支援でおこなわれたもので、その研究成果は、米国科学誌The Journal of Cell Biologyの2008年8月11日付(米国)オンライン版で発表されました。

ポイント

・アクアポリン2は直接細胞骨格タンパク質を制御して自分自身を動かす原動力を発生させていることを発見しました
・尿崩症(注1)などの水分調節異常疾患に対する新しい治療法の開発につながることが期待できます


■注釈
(注1)尿崩症
尿崩症とは腎臓での尿の濃縮が障害され尿が大量に出てしまい、体内が脱水に陥る疾患です。

研究の背景

体内が脱水になると尿量が減少し、水のロスを減らすようになります。このしくみについては、腎臓の尿細管細胞にある水の通り道であるアクアポリン2水チャネルが細胞内から細胞表面に動くことにより、尿からの水分の再吸収が著しく増加するようになるためということがわかっていましたが、どのようにして動くのかについてはまったく不明でした。

研究成果の概要と意義

膜タンパク質再構成系や蛍光相互相関分光法を用いた腎尿細管由来細胞の1分子レベルでのリアルタイム観察などにより、アクアポリン2が動く機序が明らかとなりました。すなわちアクアポリン2は、通常の状態では細胞内の移動経路上でGアクチンと結合しており、トロポミオシンが結合して安定化されたアクチン細胞骨格により移動が妨げられた状態にあります。体内が脱水になると、細胞内情報伝達系を介してアクアポリン2はリン酸化されますが,このリン酸化によりアクアポリン2はGアクチンから離れ、アクチン細胞骨格からトロポミオシンを奪って結合します。このときトロポミオシンを失ったアクチン細胞骨格はアクアポリン2分子に近いごく狭い範囲で脱重合して崩壊し、その結果として移動の妨害が解除されアクアポリン2が細胞表面へ動くようになることを発見しました。この機序は、輸送されるタンパク質自体が細胞骨格タンパク質を制御して自分自身を動かす原動力を発生させるということを意味しており、この新しい概念はタンパク質輸送研究に大きなインパクトを与えるものです。これまで知られていなかったタンパク質輸送の仕組みが明らかになったことで、尿崩症などの水分調節異常疾患に対する新しい治療法の開発につながることが期待できます。

お問い合わせ先

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
腎臓内科学分野
野田 裕美 (のだ ゆみ)
電話:03-5803-5214
E-mail:ynodmed2(ここに@を入れてください)tmd.ac.jp
ホームページ:http://www.tmd.ac.jp/grad/kid/kid-J.htm