-脳の発達障害の病態解明に手がかり-
田中 光一 教授
本学大学院疾患生命科学研究部
分子神経科学分野
東京医科歯科大学大学院疾患生命科学研究部分子神経科学分野の田中光一教授と松上稔子教務職員らの研究グループは、理化学研究所脳科学総合研究センター神経構築技術開発チームの端川勉チームリーダー、北海道大学の渡辺雅彦教授らのグループとの共同研究によって、グルタミン酸を回収する輸送体GLASTとGLT1の2種類の遺伝子を破壊したマウスは、脳内から放出されるグルタミン酸の回収が障害され、脳内のグルタミン酸が過剰になり、大脳皮質・海馬・嗅球などの部位で脳形成に障害が起こることを発見しました。このことにより、脳内から放出される過剰なグルタミン酸が胎生期の脳発達障害の原因の一つであることが判明し、脳の発達障害の病態解明への可能性が示されました。この成果は、米国科学アカデミー紀要Proceeding of National Academy of Science, USA速報版の電子ジャーナル8月1日号に発表されました。
・グルタミン酸を回収する輸送体を作れないマウスは、脳の形成に障害が起こることを発見
・脳の発達障害の病態解明への大きな一歩
脳の発達障害は、脳の高次機能障害をもたらす病因の一つではないかと考えられています。脳の発達障害を起こす原因としては、遺伝子の異常や出産前および出産時の傷害、ウイルス感染などの環境要因が挙げられていますが、遺伝子の異常に比べ、環境要因がどのようなメカニズムで脳の発達を障害するかは不明でした。
出産前や出産時における重篤な傷害の場合、胎児の脳が虚血状態になり、脳内から放出されたグルタミン酸により細胞外のグルタミン酸濃度が急激に上昇することがあります。グルタミン酸は脳の重要な情報伝達物質でありますが、過剰に存在すると神経細胞に傷害をもたらすことが知られています。しかし、脳内の過剰なグルタミン酸が脳の発達にどのような影響をおよぼすかは不明でした。本研究では、グルタミン酸を回収する輸送体GLASTとGLT1の2種類の遺伝子を破壊したマウスを作製し、胎児の脳虚血時と同様に脳内の細胞外グルタミン酸濃度を上昇させた状態を再現させました。そしてそのようなマウスでは、大脳皮質・海馬・嗅球などの部位で脳形成に障害が起こることを発見しました。
出産前や出産時における重篤な脳への傷害は、その後の脳の発達を障害し、脳の高次機能障害をもたらす病因の一つではないかと考えられています。本研究は、脳内から放出された過剰なグルタミン酸が脳傷害にともなう発達障害の原因の一つである可能性を示し、脳の発達障害の病態を解明する大きな手掛かりとなるものです。
| 東京医科歯科大学大学院疾患生命科学研究部 分子神経科学分野 田中 光一 (たなか こういち) 電話: 03-5803-5846 FAX:03-5803-5843 E-mail:tanaka.aud(ここに@を入れてください)mri.tmd.ac.jp 研究室ホームページ:http://www.tmd.ac.jp/mri/aud/ |



