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「アレルギーを抑える新たな仕組みを発見」【烏山一 教授】

烏山 一 教授
大学院医歯学総合研究科 免疫アレルギー学分野 (右)
江川 真由美
大学院医歯学総合研究科 大学院生(博士課程3年) (左)

〜アレルギーの「火付け役」を「火消し役」に変換〜


概要

 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 免疫アレルギー学分野の烏山 一教授らの研究グループは、皮膚アレルギーにおいてアレルギーの「火付け役」を「火消し役」に変身させることで炎症を抑制して、アレルギーを終焉に向かわせる新たな仕組みを発見しました。この変身がうまくいかないと、炎症の抑制がかからず、皮膚のアレルギー性炎症が重症化・長期化しました。本研究で発見された「アレルギーの火付け役」を「火消し役に変身させる」仕組みを応用することで、アトピー性皮膚炎をはじめとするアレルギー疾患に対する新たな治療法の開発が進むものと期待されます。この研究は、JSTの戦略的創造研究推進事業(CREST)の支援のもと、金沢大学 がん進展制御研究所の向田 直史教授の協力を得て行われたもので、その研究成果は国際科学誌Immunity(イミュニティ)に、2013年2月22日付オンライン版で発表されました。

ポイント

アレルギー性の炎症を誘導する仕組みに比べ、抑える仕組みは十分な解析が進んでいない。
「アレルギーを悪化させる細胞(火付け役)」を「アレルギーを抑える細胞(火消し役)」に変身させるユニークな仕組みがあることを発見。
アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患に対する新たな治療法の開発に期待。

研究の背景

 近年、先進諸国においてアレルギー患者数が年々増加し、日本でも人口の3割近くを悩ます国民的な病気としてアレルギーが大きな社会問題となっています。しかし、アトピー性皮膚炎やぜんそくに代表される重篤なアレルギー疾患に関しては、発症・悪化のメカニズムなどを含め、根本的治療に向けた病態解明はまだ十分に進んでいません。
本研究グループはこれまでに、アトピー性皮膚炎の病態解明と新たな治療標的の探索を目的として、アトピー性皮膚炎に類似した慢性皮膚アレルギー炎症のモデルマウスを開発し、抗体の一種であるIgEと白血球の一種である好塩基球がアレルギーの発症に深く関わっていることを明らかにしてきました。この慢性皮膚アレルギーモデルでは、好塩基球のほかにさまざまな種類の白血球が皮膚の炎症部位に集まっていますが、それぞれがアレルギー性炎症においてどのような役割を果たしているのかが、よく分かっていませんでした。

研究成果の概要

 本研究グループは、慢性皮膚アレルギー炎症のモデルマウスで炎症部位に集まっている白血球を調べたところ、そのうち半数近くがマクロファージであることを見いだしました。これらは血中を循環している炎症性単球に由来し、血中から皮膚に浸み出した単球が、マクロファージへと分化することが分かりました(図1)。このマクロファージの特徴を詳しく調べたところ、マクロファージの中でも2型マクロファージと呼ばれるものであることが明らかとなりました。炎症性単球は、その名が示す通り炎症を引き起こす細胞とされ、これまで炎症の誘導・悪化に関与すると考えられてきました。2型マクロファージもアレルギー炎症の誘導・悪化に寄与すると報告されていましたので、当初はこれらの細胞がアレルギー炎症の誘導に深く関わっていると予想しました。ところが、この炎症性単球が皮膚内に浸み出せないように遺伝子を操作したCCR2欠損マウスでは、予想に反して、炎症が軽快するのではなく、かえって悪化・長期化してしまいました。そこで、正常マウス由来の炎症性単球をこのCCR2欠損マウスに注射すると、炎症性単球が皮膚アレルギー炎症部位に浸み出して2型マクロファージへと成熟する結果、ひどかった炎症を抑えることを発見しました(図2)。さらなる解析から、好塩基球が産生するサイトカインの1つであるインターロイキン4(IL-4)が、皮膚に浸み出してきた炎症性単球に作用して、2型マクロファージへと変化させることも明らかとなりました(図1)。
以上のように、本研究では、炎症性単球が血中から皮膚に浸み出した後に、好塩基球の産生するIL-4の影響を受けて2型マクロファージへと変化することで炎症を抑制させる能力を獲得して、アレルギー性炎症を抑え、アレルギーを終焉に向かわせるという新事実を世界に先駆けて発見しました。これまで、2型マクロファージの生い立ちに関しては、常在性単球からの生成経路と組織常在マクロファージからの生成経路の2つが知られていましたが、本研究で炎症性単球からの生成経路が存在することが判明するとともに、炎症性単球由来の2型マクロファージがアレルギーを抑制することが明らかとなりました(図3)。

研究成果の意義

 本研究で、「アレルギー性炎症を悪化させる細胞(炎症性単球)」を「アレルギー性炎症を抑える細胞(2型マクロファージ)」に変換できることが明らかとなりました。この変換のメカニズムと2型マクロファージによる炎症抑制に関わる分子群を探索することで、アレルギーに対する新たな治療標的が見つかり、新しいタイプの治療法の開発が進むものと期待されます。

説明図

図1 アレルギーの火付け役(炎症性単球)から火消し役(2型マクロファージ)への変換

図1 アレルギーの火付け役(炎症性単球)から火消し役(2型マクロファージ)への変換
血中から皮膚に浸潤してきた炎症性単球は、好塩基球の産生するIL-4の作用を受けて2型マクロファージへと変化し、アレルギー炎症を抑制し、アレルギーを終焉に向かわせます。

図2 炎症性単球がアレルギー炎症を抑制する〜炎症の火付け役が火消し役に変化する

図2 炎症性単球がアレルギー炎症を抑制する〜炎症の火付け役が火消し役に変化する
炎症性単球が皮膚内に浸み出すことのできないCCR2欠損マウスでは、皮膚アレルギー炎症が悪化して皮膚の腫れがひどくなりますが、CCR2欠損マウスに正常マウス由来の炎症性単球を注射すると、炎症性単球が皮膚内に入り込んで2型マクロファージに成熟する結果、アレルギー性炎症を抑制して、皮膚の腫れが緩和しました。

図3 2型マクロファージ生成の第3経路の発見

図3 2型マクロファージ生成の第3経路の発見
これまで、炎症性単球から1型マクロファージへの分化経路はよく知られていましたが、2型マクロファージの生成経路に関しては不明な点が多く残されていました。これまでに、常在性単球からの分化経路と常在性マクロファージからの生成経路が存在することが報告されていましたが、今回の研究で、炎症性単球から2型マクロファージが生成するという新たな経路が発見されました。

お問い合わせ先

東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
免疫アレルギー学分野
烏山 一 (からすやま はじめ)
電話:03-5803-5162 FAX:03-3814-7172
E-mail:karasuyama.mbch(ここに@を入れてください)tmd.ac.jp
研究室ホームページ:http://immune-regulation.org/