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「胎児期のグルタミン酸受容体の過剰な活性化は、脳の形成異常を引き起こす」【田中光一 教授】

田中 光一 教授
難治疾患研究所分子神経科学分野(左)
相田 知海 助教
同上(右)

発達障害などの病態解明に手がかり


東京医科歯科大学難治疾患研究所分子神経科学分野の田中光一教授、相田知海助教らはこれまでに、マウスモデルを用いた実験で、脳内のグルタミン酸の増加が、大脳新皮質.海馬・扁桃体などの脳部位の形成障害をもたらすことを見出していました。今回、同じくマウスモデルによる実験で、グルタミン酸受容体の1種であるNMDA受容体の過剰活性化が、これらの障害の原因であることを新たに発見しました。このことにより、脳の発達障害の病態解明への可能性が示されたとともに、NMDA受容体を標的にした新しい脳形成障害に対する治療法開発への道が開かれました。
本研究成果は、米国の科学雑誌「PLoSONE」に、2012年5月11日付(米国東部時間午後5時)にオンライン版で発表されました。なお、本研究は、文部科学省脳科学研究戦略推進プログラム(課題E)の一環として、また独立行政法人科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業チーム型研究CREST「精神・神経疾患の分子病態理解に基づく診断・治療へ向けた新技術の創出」(研究総括・樋口輝彦)などの助成を受けて行われました。

ポイント

脳内の代表的な神経伝達物質であるグルタミン酸が過剰になると、脳形成に障害が起こることが知られています。本研究では、増加したグルタミン酸がグルタミン酸受容体の1種であるNMDA受容体を胎児期に過剰に活性化することにより、脳の形成障害を起こすことを発見しました。
脳の発達障害の病態解明やNMDA受容体を標的にした新しい治療薬開発への道が開かれました。

研究の背景

 近年、自閉症や統合失調症などの脳神経系の疾患について、発生・発達段階での脳の微細な異常の関与が報告されています。脳の発生・発達段階での形成異常を起こす原因としては、遺伝的要因や出産前および出産時の傷害、ウイルス感染などの環境要因が挙げられています。遺伝的要因に比べ、胎児期の環境要因がどのようなメカニズムで脳の形成異常を起こすのかは不明でした。

研究の内容

 グルタミン酸は、脳にとって必要な神経伝達物質ですが、過剰に存在すると脳に障害をもたらすことが知られています。出産前や出産時における重篤な傷害の場合、胎児の脳が虚血状態になり、脳内に過剰なグルタミン酸が放出されことが知られています。本研究グループは、これまでグルタミン酸を回収する輸送体を欠損させたマウスを作成し、脳内のグルタミン酸が過剰になる状態を再現させ、そのようなマウスでは、大脳新皮質・海馬・扁桃体などの部位で脳形成に障害が起こることをすでに明らかにしてきました。
本研究では、脳内の過剰なグルタミン酸が、どのようなメカニズムで脳の形成障害を起こすのかを、グルタミン酸が作用するグルタミン酸受容体に着目し研究を行いました。脳内のグルタミン酸が過剰になる状態を再現させたマウスからグルタミン酸受容体の1つであるNMDA受容体を欠損させると、大脳皮質・海馬・扁桃体の形成異常が正常に回復することを発見しました。

発見の意義

 出産前および出産時の障害などの胎児・周産期の環境要因は、自閉症や統合失調症の発症を高める可能性が報告されています。また、周産期の障害により、胎児・新生児の脳内に過剰なグルタミン酸が放出されることが知られています。本研究は、脳内に放出された多量のグルタミン酸がNMDA受容体を過剰に活性化し、自閉症や統合失調症で異常が示唆されている大脳新皮質・海馬・扁桃体に形成障害を起こすことを示しました。この結果は、周産期の環境要因による脳の形成障害の病態を解明する大きな手がかりとなるものです。さらにこの結果から、脳形成障害の新規治療薬の標的としてNMDA受容体が有用であることが示唆されました。

論文名

“Overstimulation of NMDA Receptors Impairs Early Brain Development in vivo”
Tomomi Aida, Yoshimasa Ito, Yuko K. Takahashi, Kohichi Tanaka
PLoSONE 2012年5月11日付(米国時間午後5時)

お問い合わせ先

田中 光一(たなか こういち)
東京医科歯科大学 難治疾患研究所分子神経科学分野 教授
〒113-8510 東京都文京区湯島1-5-45
TEL 03-5803-5846 FAX 03-5803-5843
E-mail: tanaka.aud(ここに@を入れてください)mri.tmd.ac.jp
研究室ホームページ http://www.tmd.ac.jp/mri/aud/index.html