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「筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因究明につながるサルモデルの作製」【横田隆徳 教授】

横田 隆徳 教授
大学院医歯学総合研究科 脳神経病態学分野(右)
水澤 英洋 主任教授
同上(左)

ALSや認知症の治療法開発に光明


 東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 脳神経病態学分野の横田隆徳教授、水澤英洋主任教授の研究グループは医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター、東京都医学総合研究所、千葉大学医学部などとの共同研究で、世界初の筋萎縮性側索硬化症(ALS)霊長類モデルの作製に成功しました。この研究は文部科学省科学研究費補助金ならびに厚生労働省科学研究費、厚生労働省研究難治疾患克服研究事業(病態に根ざしたALSの新規治療法開発研究)などの支援のもとでおこなわれたもので、その研究成果は、国際科学誌Brain(ブレイン)に、2012年1月18日付オンライン版で発表されました。

ポイント

進行性の運動麻痺と筋萎縮を示す世界初の筋萎縮性側索硬化症(ALS)サルモデルの作製に成功しました。
ヒトALSで特徴的なTDP-43タンパクの神経細胞内の異常局在はラットモデルでは見られず、サルモデルの脊髄運動神経でのみ再現され、このモデル動物作製の成功により、治療法の全くないALSの病因解明や治療法開発に有用と期待できます。

研究の背景

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)はアルツハイマー病、パーキンソン病に次いで多い神経 難病です。大脳運動野1次神経細胞と脊髄前角運動神経細胞が選択的に侵され、四肢の筋肉が進行性に萎縮して手足がまったく動かなくなって寝たきりになり、しゃべることもできず、ふつう数年以内に呼吸筋が麻痺して死に至ります。高度な運動障害の一方、意識や感覚は正常であるため、苦痛が非常に大きく治療方法が全くないことから、多くの患者さんは人工呼吸器による延命を希望せず死を選ぶ悲惨な疾患です。

研究成果の概要

 カニクイザルの頚髄の脊髄運動神経細胞に、ウイルスベクターでTDP-43タンパクを発現させたところ、患者さんの神経症状に良く似た進行性の前肢の運動麻痺、筋萎縮が出現し(図A)、筋電図や神経伝導検査、筋病理所見などの検査所見もALSの患者さんと同様でした。解剖して神経病理学的検討を行ったところ、患者病理所見と同様にTDP-43タンパクの神経細胞の細胞質への異常局在と核の染色性の低下、変性突起を認めました(図B)。このTDP-43タンパクの異常局在は脊髄前角の外側核群の運動神経細胞にのみ部位特異的に認められ、発症前や病初期に特に顕著でした(図C)。さらに、TDP-43タンパクの異常発現は大脳の1次運動野のBetz細胞にも認められました。
TDP-43タンパクの病態には動物の種による差があって、ALSに特徴的なTDP-43の異常局在はラット、マウスモデルでは認められず、ヒトと同じ霊長類であるサルで初めて再現されました。このモデルサル脊髄の解析では、TDP-43病態の特徴であるTDP-43のリン酸化や断片化は必ずしも発症には必要でなく、核から細胞質への異常局在が発症に先行して生じることが明らかになりました。さらに、サルの大脳皮質神経細胞にもTDP-43タンパクの異常が認められ、サルモデルは前頭側頭型認知症やアルツハイマー病の病態解明、治療法開発にも有用と考えられます。

研究成果の意義

 脊髄前角運動神経細胞と大脳運動野1次神経細胞にTDP-43タンパクの異常局在を再現した、世界初のALSサルモデル作製の成功により、神経難病のALSの病因解明や治療法開発に有用と期待されます。

問い合わせ先

東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 脳神経病態学分野
横田 隆徳(よこた たかのり)
TEL: 03-5803-5234,FAX: 03-5803-0169
E-mail: tak-yokota.nuro(ここに@を入れてください)tmd.ac.jp
URL: http://www.tmd.ac.jp/med/nuro/

カニクイザルの左頚髄にウイルスベクターでTDP-43タンパクを発現させたところ、ALS患者さんの神経症状に良く似た進行性の左手の運動麻痺、筋萎縮が出現し、左側に強い両側性の筋萎縮をきたした(A)。TDP-43タンパクは脊髄運動神経細胞では本来の核(黒→)から細胞質(赤→)に異常局在を示し(TDP-43染色)(B)、特に病初期や発症前に脊髄の手の支配領域である脊髄前角外側核群で顕著であった(flag-TDP-43染色)(C)。さらに、このTDP-43タンパクの異常局在は対側の大脳皮質の1次運動野のBetz細胞にも認められた(中左:Nissel染色、右:flag-TDP-43染色)(D)。bar=200μm