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「抗体を作る酵素が、骨を吸収する破骨細胞を作る酵素であることを発見」【高柳広 教授】

高柳 広 教授
本学大学院医歯学総合研究科
分子情報伝達学分野

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科分子情報伝達学の高柳広教授らのグループは、免疫系で重要な役割を果たしているタンパク質をリン酸化する酵素(BtkとTec)が骨吸収を担う破骨細胞を作るために必須であることを見出し、骨代謝制御の鍵となる酵素を同定しました。BtkとTecの遺伝子を欠損したマウスでは、破骨細胞が無くなり大理石骨病になることがわかりました。BtkとTecの酵素阻害薬を投与すると、骨粗鬆症や関節リウマチの動物モデルに非常に有効であることが明らかになり、これらの酵素を標的として、新しい骨粗鬆症や関節リウマチの治療薬の開発ができることを示しました。この研究成果は米科学誌Cellの3月7日号に掲載されました。

ポイント

・免疫細胞で重要な酵素BtkとTecが、破骨細胞を作るために必須の酵素であることを発見し、破骨細胞が形成されるメカニズムを解明しました
・高齢化社会に伴い問題となっているロコモーティブシンドローム(運動器症候群)のうち、骨粗鬆症や関節リウマチなど破骨細胞が原因となっている疾患に対して、BtkとTecの働きを抑える酵素阻害薬が有効であることを示し、新たな治療法に道を開きました
・BtkとTecはB細胞による抗体作りに必須な酵素であり、ヒトではBtkの遺伝子変異によって先天性の免疫不全症になります。本研究は、免疫不全と骨代謝の関係を明らかにし、骨と免疫の相互作用を研究する骨免疫学の新たな側面を開拓しました

研究の背景

高齢化社会が進展する中、生活の質に直結する骨や関節の機能を侵す骨粗鬆症・関節リウマチ・変形性関節症など、ロコモーティブシンドローム(運動器症候群)と呼ばれる疾患群の克服は医療上の大きな課題です。また、関節リウマチなどの疾患は免疫系の破綻による骨破壊疾患であるため、免疫と骨代謝の密接な関係を明らかにする骨免疫学の観点から骨代謝の制御メカニズムを解明し、人為的にコントロールする方法を開発する必要があります。

骨が破壊される多くの疾患では、骨を壊す実行役である破骨細胞の異常な活性化が見られます。このため、破骨細胞を作り出す酵素を突き止めて、その酵素の働きを抑えることは骨が破壊される運動器症候群の克服に有効であると考えられます。本研究では免疫細胞で重要なタンパク質リン酸化酵素BtkとTecが骨吸収を担う破骨細胞作りに必要であることを発見し、骨粗鬆症や関節リウマチの動物モデルに酵素阻害薬を用いて治療実験をおこないました。

研究成果の概要

破骨細胞は骨髄に存在する前駆細胞が、破骨細胞を作り出す刺激を伝達するタンパクであるRANKLの指令を受けることで作られます。破骨細胞が作られるためにはRANKLの他に、免疫受容体からの指令も必要であることがわかっていましたが、RANKLとこの免疫受容体からの細胞内の信号が、どのように協調して破骨細胞を作り出すのかわかっていませんでした。本研究では、破骨細胞の中に発現している20000以上の遺伝子を調べた結果、タンパク質リン酸化酵素BtkおよびTecに注目しました。そして、BtkとTecの遺伝子の両方を欠損したマウスを作って、骨の組織を解析しました。その結果、BtkとTecがないと、破骨細胞が作られず、マウスが大理石骨病になることを発見しました。さらに、これらの酵素による破骨細胞作りの信号伝達メカニズムについて解析し、BtkとTecが、RANKLと免疫受容体の二つの刺激を統合して破骨細胞を作り出す鍵となる酵素として働いていることを明らかにしました。また、これらの酵素の働きを抑える阻害薬を骨粗鬆症や関節リウマチの動物モデルに投与したところ顕著に骨破壊が抑えられ、極めて有効な治療効果が見られました。この結果は、破骨細胞が原因となる骨破壊疾患の治療にBtkとTecの酵素阻害薬が効果的であることを示しており、ロコモーティブシンドロームの新たな治療法に道を開くこととなりました。

BtkとTecは免疫系細胞における重要性が示されています。特にBtkはヒトのブルトン型X連鎖無γグロブリン血症の原因遺伝子であり、Btk遺伝子に変異が入るとB細胞で抗体が作られず、免疫不全になります。今回の成果は、免疫と骨の密接な関係を明らかにする骨免疫学に免疫不全と骨代謝の関係という新たな知見をもたらし、骨免疫学の発展にも大きく貢献しました。

お問い合わせ先

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
分子情報伝達学分野
高柳 広 (たかやなぎ ひろし)
電話:03-5803-0192 FAX:03-5803-0192
E-mail:taka.csi(ここに@を入れてください)tmd.ac.jp
研究室ホームページ:http://osteoimmunology.com/