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【岡澤均 教授】

「ハンチントン病の主要病態がDNA損傷修復障害による神経変性であることを解明」
【岡澤均 教授】

記者からの質疑に応答する岡澤均教授

岡澤 均 教授
難治疾患研究所 神経病理学分野

- DNA修復機能回復によるハンチントン病の新たな治療法の開発 -


概要

東京医科歯科大学・難治疾患研究所・神経病理学分野の岡澤 均教授のグループは、ドイツ・マックスデルブルック分子医学センター、国立精神神経センターなどの研究グループとの共同研究で、ハンチントン病の主要な病態がDNA損傷修復障害にあること、ならびにDNA修復タンパクKu70の補充によって顕著な治療効果が得られることをつきとめました。この研究は文部科学省・科学研究費補助金、科学技術振興機構・戦略的創造研究推進事業(CREST)などの支援のもとでおこなわれたもので、その研究成果は、国際科学誌The Journal of Cell Biology(ジャーナル オブ セルバイオロジー)に、2010年5月4日付けオンライン版で発表されました。

ポイント

・神経変性の代表的疾患の一つであるハンチントン病は世界的にも患者が多い難病ですが、有効な治療法がありません。
・今回の研究で、ハンチントン病の主要な病態がKu70を介した神経細胞のDNA損傷修復障害であることを解明しました。
・ハンチントン病の原因タンパク質である変異型ハンチンチンは、Ku70との結合を介してDNA修復酵素複合体によるDNA2重鎖切断の修復を阻害します。
・Ku70の機能回復がハンチントン病モデルマウスにおいて、過去の報告を上回る治療効果をもたらすことが明らかに成りました。この成果は、将来的な新規治療法の開発につながることが期待されます。

研究の背景

ハンチントン病は代表的神経変性疾患の一つです。白人での発生率は5~10/100,000で欧米ではアルツハイマー病とならんで注目される疾患です。認知症、不随意運動、鬱等の精神神経症状を示し、寝たきりになったのちに早期に死亡します。ハンチントン病は原因解明に分子遺伝学が初めて用いられた神経変性疾患でもあります。この結果、1993年にハーバード大学James Gusella教授を中心とするコンソーシャムが原因遺伝子ハンチンチンを発見しました。しかし、ハンチンチンタンパク質の機能、あるいは変異による神経細胞障害の詳細など、分子病態は未解明な部分が多く、またハンチントン病の患者さんの寿命を延ばすことができる有効な治療法も確立されていません。

研究の概要

今回の研究は、ハンチントン病の病態にDNA修復タンパクKu70が関与し、Ku70の機能回復をはかることでハンチントン病モデルマウスの寿命を従来の報告を上回る最大限に延長することができた、というものです。具体的には、1)変異ハンチントン病タンパクはKu70に結合する、2)結合を介してKu70のDNA修復機能を阻害する、3)DNA損傷とそのシグナルがトランスジェニックマウス,ノックインマウスおよびヒト患者神経細胞で増加している。4)ダブルトランスジェニックマウスを作成してKu70をハンチントン病マウスモデルR6/2に過剰発現させると、DNA損傷が軽減し寿命が顕著に延長するという結果が得られました。
DNA損傷修復異常は、ポリグルタミン病において2007年に私たちが発表した新たな病態ですが(Qi et al., Nature Cell Biology 2007:JSTプレスリリースhttp://www.jst.go.jp/pr/announce/20070326/index.html)、他の遺伝性神経変性疾患でDNA修復因子自体の遺伝子異常が原因である場合があること、あるいは放射線被爆によって神経変性に類似した症状が起こることが知られており、神経変性の多様なパソシグナルの中でも本質的な病態と考えられます。

可溶性ハンチントン病タンパク(変異ハンチンチン)はDNA修復タンパクKu70と結合し、DNA修復酵素複合体の形成および複合体のDNAへの結合を阻害する。この結果、神経細胞におけるDNA修復機能が低下し、DNA損傷の蓄積につながる。

研究成果の意義

今回の研究は、DNA損傷修復障害が主要な分子病態であり、それを仲介するターゲット分子としてKu70を同定したものです。さらに、Ku70の機能的代償がハンチントン病モデルマウスの生存期間を過去の報告と比較しても最大限に延長させることが明らかになりました。以上の成果は、ハンチントン病をはじめヒト神経変性疾患に真に有効な治療開発につながる新たな成果と考えられます。

お問い合わせ先

東京医科歯科大学難治疾患研究所神経病理学分野教授
岡澤 均(おかざわ ひとし)
電話:03-5803-5847 ファックス:03-5803-5847
E-mail:okazawa.npat(ここに@を入れてください)mri.tmd.ac.jp