学 長 大山 喬史
新年度に向けて、私の所信を述べさせていただきます。
医歯学融合教育
ここ数年の医学・歯学の進歩は目覚ましいものがありますが、今後もさらに加速されることが予測されます。本来、医学教育、歯学教育においては、10年、15年先に求められる医療、その時の先進医療にも前向きに取り組んでいけるだけの資質を育てておく必要があります。そのために、医歯学融合教育センターを立ち上げ、常に教育内容、教育方法の評価、見直しを継続的に進めることにしました。
まもなく日本の高齢者の人口比は4人に1人と言われており、そうした時代を迎えた時に、医学を知らない歯科医、歯学を知らない医師では、最適な対応は望めないでしょう。
一人の高齢者が複数の病気を抱えている中で、自分の専門分野だけに目を向けた医療では対応できないところまで、人口構成・疾病構造は変革しています。
医療現場で予防と生活指導に始まり、診断・治療・経過観察と進むにつれ、そこに求められるのは、医学・歯学の知識をあわせ持つこと、あるいは今以上の医歯学領域の協働が必要でしょう。
こうした発想の教育とその実現は、本学だからこそ出来るではないでしょうか。
口腔保健学科内に口腔保健工学専攻の新設
今の口腔保健学科を口腔保健衛生学専攻とし、歯学部付属技工士学校を改組、口腔保健学科・口腔保健工学専攻として併設することにしました。いわゆるインプラント義歯、可撤性義歯、セラミッククラウンの高度の歯科技工士を養成します。高齢者社会を迎えるにあたり、生きる喜び・QOLの質の向上に貢献できる人材の養成と新たな学問としての体系化を目指しています。
大型研究プロジェクトの創出
本学には優秀な研究者が多いと認識しています。21世紀COEに続き、 G-COEでも大きな評価を得ております。
引き続き医歯学総合研究科、保健衛生研究科、難治疾患研究所、生体材料工学研究所、疾患生命科学研究部・生命情報科学教育部等による医歯工連携を強化しつつ、学際的な大型研究プロジェクトを創出してゆきたいと考えており、そのための組織の見直しを進めております。
バイオ・リソースセンター構想
患者さんから手術・検査等で提供を受けた貴重なバイオ・リソースを全学的に一元管理・共有するバイオ・リソースセンターを設立すべく検討しております。倫理的手続きを経れば、このバイオ・リソースをどの分野でも活用でき、無駄に破棄したり、無用に保存したりすることもなく、基礎研究・臨床研究の推進に大きく貢献できるものと確信しております。さらに、製薬・医療関係企業を含め、他大學・研究所等からの要請にも応えられるセンターへと成長することを目指しております。
基本的には、大学病院の使命である地域医療提供機能、教育研修機能、研究開発機能をバランスよく充実・推進していかなければなりません。附属病院関係予算は、本学の収入及び支出予算において5割を超え、大学経営を考える上で、重要なセクションと認識しております。現在のところ、国から病院運営費交付金を受けていることから、病院収入を確保することに努める傍ら、経費節減のための効率化も図らなければなりません。
旧3号館の解体と人工地盤の着工
鈴木前学長が開設した救命救急施設を更に拡張できたことで、より大きな地域貢献ができるようになりました。災害等の万が一の緊急時に本学附属病院が中核病院として確実に機能できるよう、耐震強度の低い旧附属病院の解体を急ぎ、何とか自前で3分の2を解体しました。残りの3分の1についても平成23年度には解体し、その後速やかに人工地盤工事を済ませ、救急車および外来患者の誘導路の安全と利便性を確保するつもりでおります。
これに併せて、遊歩道、休憩所、駐車場、タクシー乗り場、自動駐輪場などの設置、附属病院の空調、給配水管の改修および個室病床の改修等、患者さんはじめ教職員のアメニテイの改善を図りたいと思っております。
長寿健康推進センターの設立
高齢者社会を踏まえ、医学部・歯学部附属病院の連携の下に、予防医学的な患者指導と信頼できる診療やセカンドオピニオンの提供可能なセンターを考えております。目下、そのための人材・スペース・施設整備の確保とその財源確保等について具体的な検討を進めております。
スポーツ外来の新設
スポーツ医学、スポーツ歯学の研究組織はすでに本学には実績があります。これをトップアスリートも含めたその治療部門・リハビリ部門を担う診療科「スポーツ外来」の設置に展開してゆくことにしました。これは、既に文部科学省のチーム「ニッポン」マルチサポート事業に参加・支援を行っていることからも、早急にその受け皿を設置しなければなりません。
本学の海外研究拠点が研究推進の場であることは勿論ですが、本学の学生の国際人としての感性を涵養する場としても活用していくことにいたしました。
学生の海外研修派遣
海外派遣制度による、ハーバード大學、インペリアル大學の派遣、他に自由研究での海外派遣は、毎年30人の学生を超えますが、大学院生に対しても、世界をリードする研究心旺盛な高度専門医療人の育成を目指して、彼らの研究業績を顕彰し、海外研修をさせることにしました。
一昨年はGhanaに感染研究所を、昨年はChileに大腸がん研究所を開設し、既に常駐研究者を派遣しております。国際共同研究の推進と現地での若手研究者、高度専門医療人の養成を目的としておりますが、昨年は新たな試みとして、学部学生のカリキュラム、プロジェク・セメスター期間を利用して、医学部の学生4名をGhana に、6名をChile に研究研修に派遣しました。派遣にあたっては、十分トレーニングを積ませ、関連分野の教授による推薦を受けて、派遣しました。
海外常駐研究者との海外生活、研究生活を通じて、国際貢献のあり様、連携研究の楽しさ、現地での人材育成の喜びを知ることになる学生は、自ずと国際人としての感性を感得するものと期待しております。
アジア圏の研究拠点化
本学はアジア圏の医歯工分野における研究・教育拠点として、優秀な若手研究者(留学生)の受け入れ、人材養成にも努めなければなりません。
インターナショナル・サマー・プログラムを一昨年、昨年と開設し、昨年は15カ国から25名の優秀な学生を招聘しました。既に、これらの優秀な学生が、本学の博士課程に入学しております。
アジア圏からの留学生数は160名以上、国数は22カ国からしても、本学は医歯工分野で圧倒的に多数の留学生を抱えております。今後も 本学は医歯工連携分野の人材養成に寄与する拠点として、積極的にその活動を進めてゆきたいと思っております。
昨年、Thailand(チュラコーン大学内)に研究教育協力センターを開設いたしましたが、Ghana, Chile 両研究所と同様に、共同研究・人材養成を目標に掲げておりますが、ここでは、特にアジア圏における医歯工連携研究・人材養成の拠点活動を展開してゆきたいと思っております。本学の医歯工分野における文献引用率を見ても、わが国は勿論、アジア圏においてもトップレベルにあり、十分世界に通ずる拠点として活躍できるものと確信しております。
東南アジア医療ネットワークの構築
ここには、もう一つの役割を期待しております。現地在住の邦人、商工会議所の方々を含めた家族の方々のための医療ネットワーク作りであります。既に本国に帰国した本学留学経験者で構成されているThai-TMDU Alumniの協力を得るつもりでおります。在タイ日本大使館、在タイ日本商工会、在タイ日本人会の方々の強い要望も既に伺っており、これが稼働すれば、双方向に大きなメリットになるものと期待しております。
国際交流基金の設立
こうした学部学生、大学院生の海外派遣あるいは私費留学生の受け入れのための公的奨学寄附金については、現政府は削減をしてきております。本学としても、こうした事業の継続的な展開にあたっては、別途可能な財政基盤を確保し、新たな支援策を講じる必要があると考え、現在、国際交流支援のための基金の設立等に関わる具体案を策定しております。











