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口腔放射線医学分野の主な研究

当分野で行なっている主な研究テーマとしては、CTやMRIを利用した顎口腔領域病変の鑑別および進展範囲の診断に関する研究、唾液腺や顎関節疾患、神経血管系疾患等を対象とした新しいMRI診断法の開発、口腔領域悪性腫瘍患者の予後予測における画像診断の役割に関する研究、腫瘍の放射線抵抗性の機構と予測に関する研究等が挙げられる。




1) 三叉神経痛における神経血管圧迫所見と症状発現領域のMRI-3D撮像法による評価

特発性三叉神経痛の主たる原因は、神経根入口部における神経血管圧迫であり、その存在診断に、3D MR血管撮影は有効である。本研究は、血管の神経根圧迫部位と疼痛が出現する神経支配領域との関連性を、MRI-3D撮像法の多断面再構成画像 (MPR)によって評価・分析した。その結果、三叉神経第2枝に疼痛が発現している症例では、血管が三叉神経根の内側を、第3枝に疼痛が発現している症例では神経根の外側を圧迫することが多かった。すなわち、神経根を圧迫する部位に依存して、疼痛の出現する領域が異なることがはじめて示唆された。
(Yoshino N et al. Radiology 2003; 228: 539-545.)

2) 口腔癌細胞における上皮成長因子受容体チロシンキナーゼがI型インスリン様増殖因子シグナリングに及ぼす影響とその作用機序

上皮成長因子受容体 (EGFR)とI型インスリン様増殖因子受容体 (IGF-IR)は様々な細胞に発現する受容体で、細胞増殖の促進やアポトーシスの抑制能を示す。異なる受容体間の相互作用はこれまで考えられていなかったが、最近IGF-Iの刺激によりEGFRがtransactivationされERKが活性化されるという報告がなされた。今回ヒト口腔癌細胞において同様な機構の存在を検討した結果、IGF-IによるERK活性化において、EGFRのtransactivation ではなく、基底レベルのEGFRチロシンキナーゼ活性に依存する全く新しいシグナル伝達機構を見出した。
(Kuribayashi A et al. Endocrinology 2004; 145: 4976-4984.)


3) ラット3Y1細胞は、extracellular signal-regulated kinase経路(ERK)の抑制により放射線抵抗性が誘導される。

一般的にERKは細胞増殖や細胞生存に関わるとされる。しかしながら、放射線感受性に対するこの経路の関わりについては明らかではない。そこで、われわれはラット線維芽細胞3Y1を用い、ERKの放射線感受性に及ぼす影響について検討を行った。3Y1細胞では、放射線照射によりERKは活性化するが、これは特異的阻害薬PD98059および不活化型MEK発現により抑制されること、またこの場合に細胞は予想外にも放射線抵抗性を示すことが明らかとなった。また、このときの放射線抵抗性は、caspase-3の不活化と関わりがあることが示唆された。
(Watanabe H et al. Int J Radiat Biol 2004; 80: 451-457.)


4) 下顎骨骨髄炎の治癒の予測因子となるCT所見:多変量解析による検討

下顎骨骨髄炎のCT所見の臨床的な有用性を検討した。78人の下顎骨骨髄炎患者は長期の臨床経過観察によって、治癒グループ(49人)と難治グループ(29人)に分けられた。難治グループの受診までの病悩期間は治癒グループに比べて有意に長かった。これらの患者のCT画像をretrospectiveに分析し、各CT所見の頻度、病悩期間、治癒との関連を分析した。最も頻度の高いCT所見は海綿骨の硬化と骨梁の欠損だった。骨幅の増大と骨皮質の肥厚は病悩期間が長くなると増加した。罹患範囲の広さは病悩期間に比例した。ロジスティック回帰分析によると、罹患範囲の広さと骨幅の変化が骨髄炎の治癒に有意に関連する因子だった。
(Ida M et al. Dentomaxillofacial Radiol 2005; 34: 86-90.)


5) 口腔扁平上皮癌の下顎骨浸潤の評価におけるMRIのpitfall

口腔扁平上皮癌の下顎骨浸潤の評価におけるMRIとCTの診断精度を比較した。その結果、皮質骨浸潤の有無および浸潤範囲の評価において、MRIのspecificityはCTより有意に低かった。皮質骨浸潤の有無の評価におけるMRIの偽陽性は、chemical sift artifactが主な原因であり、浸潤範囲の評価における偽陽性は、MRIでは腫瘍とその周囲の炎症が同様の信号強度で描出されることが主な原因であった。口腔扁平上皮癌の下顎骨浸潤の評価においては、このような多くの偽陽性を生じやすいMRIの pitfallを知っておくことが重要であると考えられた。
(Imaizumi A et al. AJNR Am J Neuroradiol 2006; 27: 114-122.)

6) 下顎埋伏智歯と下顎管との位置関係の画像診断: 歯科用コーンビームCTとパノラマX線所見との比較

下顎埋伏智歯抜歯時の下歯槽神経血管束露出の予測における歯科用コーンビームCTの正診率を評価し、これをパノラマX線写真の正診率と比較する目的で、画像所見と手術所見とのprospectiveな比較を行った。神経血管束露出の画像診断基準は、ロジスティック回帰分析を行って決定した。下歯槽神経血管束露出の予測における感度と特異度は、歯科用コーンビームCTで93%と77%、パノラマX線写真では70%と63%であり、いずれにおいても歯科用コーンビームCTはパノラマX線写真よりも有意に優れていた。
(Tantanapornkul W et al. Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol Endod 2007; 103: 253-259.)


7)関節円板後方転位のMRI所見と臨床症状

顎関節症患者において関節円板の後方転位は非常にまれである。本研究では、関節円板の後方転位を呈する患者のMRI所見および臨床症状を明らかにした。Westesson の分類に従ったところ対象患者はThin flat disk typeが84%、Perforated disk typeが16%、Grossly posteriorly displaced disk typeが0%であった。臨床症状についてはThin flat disk typeの24%に顎関節脱臼の経験があった。クリックおよび疼痛の発現率はThin flat disk typeとPerforated disk typeとの間で有意差がみられた。
(Okochi K et al. Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol Endod 2008; 105: 644-648.)

8) 早期舌癌小線源治療患者に対する遺伝子発現解析とそのリンパ節転移予測能について

早期舌癌は、小線源治療により良好な治療成績が期待できる。その局所制御率は外科的切除と同等であるが、一方で、その予後は、後発リンパ節転移の発現の有無により大きく左右されることが知られている。したがって、今後の治療成績の向上には、リンパ節転移の事前の予測とそれに対する対処が求められる。そこで、われわれはマイクロアレイを用いた遺伝子発現解析を行い、リンパ節転移を予測する19種の遺伝子を抽出した。これらの遺伝子を用いる予測システムを構築したところ、76%の正診率を持つことが明らかとなった。
(Watanabe H et al. Radiother Oncol 2008; 87: 237-242.)

9) 顎関節の滑膜軟骨腫症患者のMRI画像の分析

顎関節の滑膜軟骨腫症(SC)患者14症例の臨床およびX線所見とMRI画像の特徴を分析した。患者の平均年齢は46歳、男女比は2:12、主な症状は痛み(93%)、開口障害(64%)だった。2症例でX線写真上に特徴的な顎関節周囲の石灰化粒が認められた。MRI上では関節腔の“ダンベル状”あるいは風船状の腫大が11人(79%)にみとめられた。上関節腔内のSCの場合は関節窩や関節結節の骨変化が見られ、下関節腔のSCの場合は下顎頭の変形や骨増殖が見られた。これらの骨変化が著しくて、腫瘍を疑わせるような症例は、病悩期間がより長い患者に見られた。
(Ida M et al. Dentomaxillofac Radiol 2008; 37: 213-219.)


10) 円板穿孔を伴う顎関節のMRI所見

本研究は円板穿孔を伴う顎関節のMRI所見の特徴を明らかにした。3つのグループ(円板穿孔を伴う患者、復位を伴わない円板前方転位の患者、無症状のボランティア)のMRI所見を比較し、円板の変形、位置、下顎頭の変形、joint effusionの有無そして後部結合組織のtemporal posterior attachment (TPA)が描出されるかどうかを評価した。その結果、円板の変形およびTPAの不明瞭化が円板穿孔を伴う顎関節のMRI所見の特徴として挙げられた。
(Kuribayashi A et al. Oral Surg Oral Med Oral Pat Oral Radiol 2008; 106: 419-425.)


11) パノラマX線写真で見られる下顎埋伏智歯歯根部の dark bandに関する検討

X線写真上に現れる下顎埋伏智歯歯根部の dark bandは、下顎管によって刻まれた歯根部の groovingを反映する所見であり、両者の接触を示すX線サインと考えられてきた。しかし本研究においてパノラマX線写真と歯科用コーンビーム所見とを対比した結果、同 dark bandは歯根部の groovingよりも歯根と接触する皮質骨の菲薄化を反映していることが明らかとなった。
(Tantanapornkul W et al. Dentomaxillofac Radiol 2009; 38: 11-16)

12)SPLICE法による拡散強調MR画像を用いた頭頚部腫瘤性病変の鑑別診断

頭頚部腫瘤性病変の鑑別診断におけるSPLICE法を用いた拡散強調MRI (DWI)の有用性について評価することを目的として、prospectiveな臨床研究を行った。SPLICE法によるDWIは画質に優れており、全症例においてADC値の計測は容易であった。得られたADC値を基に頭頚部領域の嚢胞と腫瘍の鑑別診断を行った結果、ほぼ全ての嚢胞症例と約90%の腫瘍症例を正しく診断することができた。しかし、ADC値のみを用いて良性悪性病変を鑑別することは困難であると考えられた。
(Sakamoto J et al. Eur J Radiol 2009, in press)


13) 下顎歯肉癌の顎骨浸潤の画像診断における歯科用コーンビームCTの有用性評価:パノラマX線写真との比較

歯肉癌の下顎骨浸潤の診断における歯科用コーンビームCTの有用性を評価することを目的として、下顎歯肉癌50症例を対象としてprospectiveな臨床研究を行った。コーンビームCTのAz値および感度は、いずれもパノラマX線写真よりも有意に優れていた。しかし著明な金属アーチファクトや画像ノイズの影響のために、歯槽頂部に限局するような僅かな骨浸潤をコーンビームCTによって検出することは困難であった。
(Momin MA et al. Eur J Radiol 2009, in press)