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生体材料工学研究所 設立60周年から未来に向かって


生体材料工学研究所長
塙 隆夫
Takao Hanawa

 東京医科歯科大学生体材料工学研究所は、2011(平成23)年4月1日をもって還暦を迎えました。

 これまで「材研」「生材研」の実績を築いてこられた諸先輩方の貢献に敬服いたしますとともに、改めて60周年という歴史の重みをひしひしと感じております。「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず(方丈記)」という文は一面で真実ですが、他方で歴史は積み重なるものであり、これまでの先達の研究・運営活動が今日の生材研の姿となって現れているものです。現在あるいは近未来の研究実績や運営方針が、将来の生材研の姿を形づくるものであることに思いがおよぶと、その責任の重さを感じざるを得ません。

 本研究所は、1951(昭和26)年に歯科材料研究所が開設されて以来、2度の改称・改組を経ながら、生体材料工学に関する中核研究所として、生体機能分子、生体材料、生体システムなどの分野で世界をリードする研究を行い、多くの製品を世に送り出してきました。しかし、この10年の間に、医療および生命研究にかかわる理学、工学、薬学の重要性の増大から、生体材料工学はその応用範囲を広げ、対象は拡大の一途をたどっています。

 人工材料には生体適合性、生体機能性の面での課題が多く、全身への影響を考慮しながら、これらを解決しつつ生体組織との融和を図る必要があります。また、医療および生命科学においては診断やセンシングが極めて重要であることから、個体から細胞、生体成分を対象とした微細な計測デバイスの研究基盤を形成して、生体情報の流れや生体システムを理解し機能の解明や診断を図り、マイクロデバイスを基礎とする新規医療の学問体系の構築が求められるようになってきました。さらに、材料・機器の研究開発を、再生医療やナノテクノロジーを取り込んだ領域へと展開しつつ、ライフサイエンスとの連携による新たなフロンティア研究分野を開拓する必要があります。

 このように生体材料工学における進歩は著しく、本研究所の現行の部門および分野の構成が必ずしも上述のような急激に変貌する社会、学界、医療現場からの要請に対応しているとは言い切れない状況になってきました。

 学術的背景の変化と社会的要請に応えるために、医歯学臨床研究室との共同研究を継続的に推進しつつ、医歯学および医療、歯科医療に貢献できるものづくりおよびその実用化を目標に、当該領域の次の10年を見据えた部門、分野、附属施設構成へと改組を行うこととなり、その準備が進んでいるところです。

 将来、例えば40年後、つまり設立100周年を迎える時の生材研が、益々発展した姿で社会に貢献できることを目標としております。
2011(平成23)年10月

1981(昭和56)年北海道大学工学部金属工学科卒業。同年北海道大学歯学部助手、1989(平成元)年歯学博士(北海道大学)、1993(平成5)年徳島大学歯学部助教授、1998(平成10)年博士(工学)(東北大学)、同年科学技術庁金属材料技術研究所 生体材料研究チームリーダー、組織改変により2001(平成13)年物質・材料研究機構 生体材料研究センター副センター長、2004(平成16)年東京医科歯科大学生体材料工学研究所教授、2011年から現職。

関連情報

国立大学法人東京医科歯科大学生体材料工学研究所 60周年記念講演・式典
日時:2011年12月20日(火)15:30~
場所:東京医科歯科大学M&Dタワー2階 鈴木章夫記念講堂(東京都文京区湯島1-5-45)