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「不妊治療に用いられる顕微授精技術の影響」

 東京医科歯科大学難治疾患研究所・エピジェネティクス分野の石野教授と幸田准教授の研究グループは、理化学研究所バイオリソースセンター小倉室長、若菜チームリーダー、および理化学研究所発生・再生科学総合研究センター若山チームリーダーとの共同研究で、顕微授精が遺伝子発現に影響を及ぼすことを明らかにしました。この研究は文部科学省科学研究費補助金の支援のもとでおこなわれたもので、その研究成果は、国際科学誌Biochemical and Biophysical Research Communications(BBRC誌)に、2011年6月5日付オンライン版で発表されました。

ポイント

近年、顕微授精技術の不妊治療への適用例が急速に増えています。私たちはマウスを用いたモデル系で、この技術が産仔へどのような影響を与えるのかを詳細に検討しました。
顕微授精によるマウス産仔には、出生時において5%弱の遺伝子の発現変化が各種臓器にみられました。
しかし、この影響は成獣になるまでにほとんど解消され、また、次世代に伝わることもありませんでした。
行動や生理変化など網羅的な表現型解析を行ないましたが、成体時においては表現型にも大きな変化は認められないことを確認しました。

研究成果の概要と意義

 顕微授精は不妊治療などの生殖補助医療に用いられる技術です。1992年に確立して以来、日本においても2008年末までに64,174人の子供がこの技術により誕生しており、現在の生殖補助医療の約半数がこの技術の適用を受けています。この技術がヒトの個体発生や成長に与える影響は、これまでも長く議論されてきましたが、明確な影響は認められないとする多くの疫学調査に加えて、影響があるとする論文もいくつか発表されており、結論が出ていませんでした。私たちの研究グループは、遺伝的に均一なモデル動物であるマウスを用いて、顕微授精の技術的操作が遺伝子発現や表現型に影響を与えるかどうかを精密に検証しました。精子と卵子を体外で受精させる通常の技術では影響は見られませんでしたが、精子の頭部を卵子に直接注入する顕微授精という方法では、出生時の産仔の脳、肝臓、腎臓の3つの臓器で、それぞれ5%弱の遺伝子の発現量が変化していることが明らかになりました。この影響はマウスの成長とともに消失していき、通常の交配による生殖法では次世代に伝わらないことなどを明らかにしました。また、成体時での表現型には軽微な影響があるものの、その変化は正常なマウスの集団の中でみられるばらつきの中に収まる範囲であることも確認されました。顕微授精の影響が出生後も残っていることが確認されたのは初めてのことであり、今後、ヒトにおける新生児・幼児期の詳細な疫学研究と生殖補助医療へのフィードバックが進む必要があると考えます。

論文情報

Intracytoplasmic sperm injection induces transcriptome perturbation without any transgenerational effect
Takashi Kohda, Narumi Ogonuki, Kimiko Inoue, Tamio Furuse, Hideki Kaneda, Tomohiro Suzuki, Tomoko Kaneko-Ishino, Teruhiko Wakayama, Shigeharu Wakana, Atsuo Ogura and Fumitoshi Ishino
Biochemical and Biophysical Research Communications 2011
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0006291X11009156

お問い合わせ先

東京医科歯科大学 難治疾患研究所 エピジェネティクス分野
幸田 尚(こうだ たかし)、石野 史敏(いしの ふみとし)
TEL:03-5803-4864
FAX:03-5803-4863
E-mail:tkohda.epgn(ここに@を入れてください)tmd.ac.jp
URL : http://www.tmd.ac.jp/mri/epgn/index.html