病態研究部門では、難治病態形成機構の研究を通じて生命現象の基本的なメカニズムを解明し、新たな診断・治療法の開発に資することを理念とします。この理念に沿って、種々の疾患における難治病態に焦点を当て、病態形成機序の解明研究とそれに基づいた診断法および治療法の開発を念頭においた病態研究を時代の要請に応じて展開し、難治疾患を克服することを目的としています。
現時点における具体的な病態解明および診断法開発研究の対象には、心血管系難治疾患(特に難治性不整脈、特発性心筋症、難治性動脈炎等)、神経系難治疾患(特に神経変性疾患)、感染症・免疫系難治疾患(特に自己免疫疾患、免疫不全、難治性ウイルス感染症等)などがあり、治療への応用開発研究および実践研究の対象には、細胞治療(特に難治性感染症、悪性腫瘍等)、再生医療(特に肝細胞、間葉系幹細胞等)、司法精神医療(特に触法精神障害者、犯罪被害者心理等)などがあります。
難治病態研究部門では、柔軟な研究体制を構築し、分野、部門を越えた共同研究や国内外の研究者との研究連携を推進することで、時代の要請に応じた難治疾患研究を展開します。
部門長 木村 彰方
本分野では神経変性疾患の発症分子メカニズムの解明と治療法の開発を研究目的としています。特に遺伝性脊髄小脳変性症、ハンチントン病、アルツハイマー病において、原因遺伝子変異によって生じる異常蛋白が神経細胞機能異常と最終的な細胞死を引き起こす分子過程の詳細な解明を目指して研究しています。また、発症メカニズムの研究で明らかになった知見を基に、これらの変性疾患をターゲットとした分子治療の開発を試みています。
当研究室では、「細胞死機構の解析とその破綻に由来する疾患の治療薬開発」「ミトコンドリア機能異常に由来する疾患の克服」を2つの柱として研究をおこなっています。前者に関しては、細胞死を一つの生体システムとして捉え、哺乳動物個体の中でこのシステムが如何に機能しているかを探索します。後者に関しては、ミトコンドリアと細胞質との間の情報交換の基本原理を解明していきます。最終的には、これらの知見を基盤に生命の動作原理の本質を解明することを目指しています。
当分野では、肝臓を中心とする器官の発生と再生の分子機構を、発生工学、遺伝学、細胞生物学、分子生物学、生化学などの幅広い手法を用いて解明し、肝不全や肝癌などの難治性疾患に対する再生医療の開発を目指した基盤研究を展開することを理念としています。また、広範な細胞機能の発現に介在する細胞内シグナル伝達の観点から研究をおこなうことにより、高次生命現象である器官の発生や再生の一般性と特殊性を明らかにするとともに、創薬の可能性を追求します。
生体を構築する多くの組織において、幹細胞システムが構成細胞の新陳代謝と恒常性維持において中心的な役割を果たしています。本研究分野では、幹細胞システムの動作原理の解明とその破綻によりおこる病態研究を中心として、生体組織の再生、老化、がん化のしくみを理解し応用すべく研究をおこなっています。特に、マウスやヒトの皮膚の幹細胞システムをモデルとして、幹細胞の同定、幹細胞周囲の微小環境(ニッチ)が幹細胞運命を制御するしくみとその分子基盤の解明、幹細胞システムがゲノム損傷や加齢に抗して幹細胞プールを保持し組織の恒常性を維持するしくみの解明に取り組んでいます。幹細胞医学という新しい領域を開拓しながら、高齢化社会において益々需要の高まる再生医療や抗老化戦略、がん根治に向けた治療戦略へと応用することを目指しています。
病原微生物への迅速な免疫応答は感染防御で中心的な役割を果たすが、自己抗原や花粉など環境中の物質への免疫応答はそれぞれ自己免疫疾患およびアレルギー疾患の原因となります。当分野では、免疫応答の基本的なしくみ、とりわけ、病原微生物と自己成分、環境物質の識別のメカニズムやワクチン効果のメカニズムを解明し、新たな感染免疫増強法や免疫疾患の治療法の開発のための基盤研究をおこなっています。
ヒトの病気は遺伝要因と環境要因の相互作用によって引き起こされるものです。当分野では、種々の難治疾患の遺伝要因を分子レベルで解明し、もっと病態の深い理解と疾患の予防および治療の道を拓くことを目的として、正常および異常な遺伝形質を規定するヒトゲノム遺伝子の構造・機能・発現制御機構を分子遺伝学的、細胞生物学的、生化学的手法を用いて解析しています。
免疫不全状態の患者に発症するウイルス感染症は、非常に難治性で致死的となる場合も多く、新しい治療法の開発が求められています。本研究室では、難治性ウイルス感染症の新規治療法・治療薬の開発を目指してウイルス感染症の発症機構の解明、ウイルス感染モデル実験動物の開発、さらに、臨床科と共同で活性化T細胞療法をウイルス感染症治療に応用する研究をおこなっています。