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研究成果・プレスリリース

遺伝子パネル解析より変異陰性であった乳幼児てんかん性脳症におけるゲノムコピー数異常の解析

Medical Research Institute Tokyo Medical and Dental University

東京医科歯科大学 難治疾患研究所 分子細胞遺伝分野 稲澤譲治教授と同・大学院医歯学総合研究科 顎顔面矯正学分野 森山啓司教授ならびに福岡大学てんかん分子病態研究所・医学部小児科教室の廣瀬伸一教授らの研究グループは、平林恭子大学院生、Daniela Tiaki Uehara特任助教らにより実施された研究において、乳幼児期に発症した後に重篤かつ進行性の脳機能障害を引き起こす乳幼児てんかん性脳症 (early-onset DEE;用語説明参照) の患者 83 例を対象とした解析を行い、潜在的なゲノムコピー数異常 (CNV) の解析とその病因性の評価の重要性を明らかにしました。
本研究成果は、国際科学雑誌 Journal of Human Genetics (日本人類遺伝学会誌) に、2019年8月30日にオンライン版で発表されました。当該成果は文科省全国共同利用・共同研究拠点「難治疾患共同研究拠点」事業および文科省科研費若手研究(B) (ウエハラ ダニエラ チアキ)等の支援により得られたものです。

論文: Journal of Human Genetics, doi: 10.1038/s10038-019-0661-x.
著者:Kyoko Hirabayashi, Daniela Tiaki Uehara, Hidetoshi Abe, Atsushi Ishii, Keiji Moriyama, Shinichi Hirose, Johji Inazawa
タイトル:Copy number variation analysis in 83 children with early-onset developmental and epileptic encephalopathy after targeted resequencing of a 109-epilepsy gene panel.


成果のポイント

既報のてんかん原因遺伝子109個を含む遺伝子パネル解析より、変異陰性と判定されたearly-onset DEE 83例のうち12例 (14.4%) において稀なCNVが検出され、そのうち3例 (3.6%) に病因性CNVを同定しました。
Early-onset DEEの診断において、普及しつつある遺伝子パネルによる塩基レベルの変異解析のみでは原因となる遺伝子変異が見逃されてしまう場合があり、CNV解析とその病因性の評価が重要であることが示唆されます。

研究の背景

Early-onset DEEは、その原因遺伝子は次々と同定されてきているにも関わらず、未だ原因不明とされる症例は数多く存在します。てんかんを含む様々な疾患の診断を行う手法として、遺伝子パネル解析は普及してきていますが、CNVの検出が困難であることが欠点として挙げられます。

研究の概要

本研究は、福岡大学てんかん分子病態研究所・医学部小児科教室 (廣瀬伸一教授)において、既報のてんかん原因遺伝子109個を含む遺伝子パネル解析を用いました。その上で、変異陰性と判定された診断未確定のearly-onset DEE 83症例 (男児26人、女児57人) を対象に、Single nucleotide polymorphism (SNP) アレイ解析を用いてCNVを探索し、病態関連性を調べました。結果、SNPアレイ解析を行った83症例のうち12症例 (14.4%) で稀なCNVを検出し、そのうち3症例 (3.6%) は病因性CNV、残り9症例 (10.8%) は臨床的意義不明の変異と判定しました。

本研究の意義

先に実施された109個のてんかん原因遺伝子のパネル解析のなかに、今回の研究によって病因性CNVと判定された3種の原因遺伝子は含まれていました。しかし、パネル解析からはこれらのコピー数異常は検出されませんでした。以上より、正確にearly-onset DEEの診断を行うためには遺伝子パネルによる塩基レベルの変異解析に加えて、CNV解析とその病因性の評価が重要であることが示唆されます。

問い合わせ先

<研究に関すること>
東京医科歯科大学難治疾患研究所
分子細胞遺伝分野 氏名 稲澤 譲治 (イナザワ ジョウジ)
TEL:03-5803-5820 FAX:03-5803- 0244
E-mail:johinaz.cgen@mri.tmd.ac.jp


用語の説明
1.CNV(Copy number variant; ゲノムコピー数変化)
染色体上のゲノムDNAが1kb以上のサイズでコピー数変化を起こしている領域のこと。通常、常染色体上のゲノムコピー数は2コピーだが、欠失(1コピー以下)または重複(3コピー以上)の変化が起こることがある。表現型に影響を与えないものから、個体差や体質に関与するもの、疾患の原因となるものまで、その意義はさまざまである。
2.DEE(Developmental and epileptic encephalopathy; 発達性てんかん性脳症)
繰り返すてんかん発作のため重度の認知・行動障害をきたす状態をてんかん性脳症と呼ばれていた。その場合、素因としての発達の異常を伴う場合と伴わない場合があり、その両者の区別が難しいため、最近発達性てんかん性脳症と総称して呼ばれるようになった。
3.MMPSI(Malignant migrating partial seizures of infancy; 乳児悪性焦点移動性部分発作)
生後6ヶ月以内に発症する乳幼児てんかん性脳症の一種。
4.SNP (Single nucleotide polymorphism; 一塩基多型)
全人口に1%以上の頻度で見られる、ゲノム塩基配列中の一塩基の多様性。
5.VUS(Variant of uncertain significance; 臨床的意義不明の遺伝子多様性)
現時点で疾患との関連性を肯定または否定する根拠が十分でない変異. 病的意義についての判定が将来変更される可能性がある。