本文へ

バナーエリアへ

フッターへ



ホーム  > 研究成果・プレスリリース  > アペリンはACE2を誘導することにより心不全を改善する

研究成果・プレスリリース

アペリンはACE2を誘導することにより心不全を改善する

Medical Research Institute Tokyo Medical and Dental University

心機能調節の分子メカニズム解明に関する多施設国際共同研究(研究代表者:秋田大学・久場敬司准教授)の成果が米国科学雑誌(Journal of Clinical Investigation)にオンライン速報版で発表(2013.11.1)されました。この多施設共同研究には、木村教授が参加しています。


アペリンはACE2を誘導することにより心不全を改善する

久場敬司 准教授(秋田大学医学部)、佐藤輝紀 大学院生(秋田大学医学部)、今井由美子 教授(秋田大学医学部)、伊藤宏 教授(秋田大学医学部)、Peter Liu教授(トロント大学)、Josef Penninger教授(オーストリア分子生物学研究所)、深水昭吉 教授(筑波大学TARAセンター)、木村彰方 教授(東京医科歯科大学難治疾患研究所)他

Sato T, Suzuki T, Watanabe H, Kadowaki A, Fukamizu A, Liu PP, Kimura A, Ito H, Penninger JM, Imai Y, *Kuba K: Apelin is a positive regulator of ACE2 in failing hearts. Journal of Clinical Investigation. (*; corresponding authors), [Epub ahead of print, Nov. 1, 2013](doi: 10.1172/JCI69608)

成果のポイント

アペリン欠損マウスの心臓において、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)の発現量が低下していることを見出しました。
心不全モデルにおいて、アペリン欠損マウスの心機能は顕著に低下しますが、ACE2によって産生されるアンジオテンシン1-7を持続投与することで心機能が回復することが分かりました。
アペリンを投与することにより、心臓でのACE2の発現量が上昇することがわかりました。また、培養細胞の実験でもアペリンがACE2の発現を誘導することを確認しました。
アペリンは、アンジオテンシン1型受容体の欠損マウスでも、ACE2の発現を誘導し、心機能を改善することが分かりました。つまり、アペリンの作用はアンジオテンシン1型受容体とは独立な作用機構であることを見出しました。

研究の背景

レニン・アンジオテンシン系は心血管系において血圧のみならず心機能制御などの恒常性維持に重要な役割を担っていますが、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)は、アンジオテンシンIIをアンジオテンシン1-7に変換することによりレニン・アンジオテンシン系を負に調節することが最近明らかになってきました。また、アペリンはACE2の基質であるためにACE2により不活性化されることが試験管内の実験で示されている一方で、アペリンが加齢や圧負荷などのストレス下で心収縮力の維持に寄与することが知られています。しかしながら、アペリンとACE2の間の生体内での相互作用は不明なままでした。

本研究の成果

本研究は、国際多施設共同研究によってアペリン(Apelin)による心機能制御の分子機構を解明するために実施されたものです。まず、Apelin遺伝子欠損(Apelin KO)マウスの心臓についてレニン・アンジオテンシン系(RAS)遺伝子の発現解析を行ったところ、ACE2の発現レベルがApelin KOマウスにおいて著しく低下していることを見出しました(図1)。また、アンジオテンシンペプチドのメタボローム解析から、Apelin KOマウスでは血漿中のアンジオテンシン1-7 (Ang 1-7)ペプチドの発現量が低下していることが分かり、同時にACE2活性が下がっていました。そこでアンジオテンシンIIの1型受容体(AT1R)とApelinの二重遺伝子欠損マウス (AT1R/Apelin double KO)を作製したところ、左心室圧負荷モデルのApelin KOマウスにおける心機能低下はAT1R/Apelin double KOにおいて有意に改善され、ACE2の発現上昇と相関していました。重要なことにAng 1-7をApelin KOマウスに投与したところ、Apelin KOマウスの心機能低下が改善されました(図2)。また、培養細胞での発現解析やレポーターアッセイから、ApelinがACE2のプロモーター活性を上昇させてACE2の発現を制御することが明らかになりました。さらに、圧負荷モデルのAT1R KOマウスにApelinペプチドを投与したところ、Apelinは野生型マウスと同様にAT1R KOマウスの心機能を改善し、ACE2の発現を上昇させたことから、ApelinがAT1Rと独立にACE2を制御することが分かりました(図3)。以上の結果から、Apelin系とRAS系の2つのシステムをACE2が共役させることが初めて明らかとなりました。今後Apelin-ACE2-Ang 1-7の分子ネットワークが新しい治療法の開発につながることが期待されます。

謝辞

本研究の一部は、難治疾患共同研究拠点共同研究経費(共同研究者:秋田大学医学部・准教授 久場敬司、平成22年度~)の助成を受けて実施しました。

図1 アペリン(Apelin)遺伝子欠損マウス(Apelin-/y)におけるACE2の発現低下


図2 アンジオテンシン1-7 (Ang1-7)投与によるApelin遺伝子欠損マウスの心肥大抑制、心機能改善

図3 Apelinペプチド(Apelin-13)投与により、AT1R 遺伝子欠損マウス(Atr1a-/-)の心機能を改善する