先端分子医学研究部門 | 難治病態研究部門 | ゲノム応用医学研究部門 | 客員研究部門 | 大学院教育研究支援実験施設 |
・分子代謝医学 ・分子薬理学 ・分子細胞生物学 ・分子神経科学 ・細胞制御学 ・生体情報薬理学 ・自律生理 |
・神経病理学 ・病態生化学 ・ウイルス感染学 ・発生再生生物学 ・犯罪精神医学 ・免疫疾患 ・分子病態 |
・分子細胞遺伝 ・分子遺伝 ・分子疫学 ・遺伝生化学 ・形質発現 ・エピジェネティクス ・生命情報学 |
・生体制御 ・病態発現機構 |
・ゲノム解析室 ・細胞プロテオーム解析室 ・遺伝子組換えマウス実験室 ・形態機能解析室 ・動物実験室 |
先端分子医学研究部門 |
分子代謝医学
分子薬理学
骨形成ならびに骨吸収を主軸とするカルシウム代謝調節の分子機構の解明により、骨粗鬆症をはじめとするカルシウム代謝異常疾患の治療及び予防法の確立に寄与する事を目的とする研究を行っている。 骨格組織は生体内の最大のカルシウムのstorage siteであり、その代謝は骨を形成する骨芽細胞系や骨の吸収を行う破骨細胞系の細胞群に加え間質細胞や軟骨細胞系の細胞などから構成される複合細胞社会により営まれている。 本分野ではこれらの各々の系列の細胞の発生、分化、機能調節機序、各々の細胞群間または細胞と細胞外基質間の相互作用やこれを担うサイトカインなどのシグナル分子並びに細胞外基質の生化学的、薬理学的特性等を分子生物・細胞生物学的手法を用いて明らかにし、これらの異常に基づく疾患の分子病態について解析している。
分子細胞生物学
脊椎動物の形態形成、器官形成は、さまざまなシグナル分子が時間的空間的に細胞を誘導することにより成立する。 また、これら多くのシグナル分子の破綻が疾患の発症にも結びついている。 したがって発生・分化の制御するシグナル分子によるシグナル伝達ネットワークの解明は形態形成、器官形成機構、さらには疾患の発症機構を明らかにする上で重要課題となる。 本研究分野では発生過程における形態形成、器官形成を制御するシグナル伝達ネットワークの制御機構を中心に分子生物学的解析を進めている。
分子神経科学
本分野の最終目標は、記憶・学習などの脳高次機能の分子、細胞レベルでのメカニズムの解明である。 現在そのために、複数電極により多点同時計測や光学的測定法を用い、脳の活動を計測することが行われている。 しかし、現在の方法は時間・空間分解能に限界があり、細胞レベルで高次機能を解析するためには不十分である。 そこで我々の研究室では、様々な遺伝子改変動物を駆使し、脳の神経活動と記憶・学習の対応関係を解析し、脳高次機能の分子・細胞レベルでの解明をめざす。
細胞制御学
細胞制御学分野は、分子レベルでの疾患研究を推進する為に、細胞機能を制御するシグナル伝達機構全般をその研究課題とする。 具体的には、細胞機能制御の破綻として発症する癌、免疫・神経疾患、感染症や発生発達障害等の基盤となるシグナル伝達機構に関して、未知のシグナル分子やシグナル複合体を同定すると共に、それらの機能と作用機構の解明を目指す。 また、その成果として得られた分子レベルでの知見については、動物モデルや臨床検体を用いた研究を進めることによって臨床応用への展開を図る。
生体情報薬理学
自律生理
生体内環境の恒常性(ホメオスタシス)を維持するために、自律系器官は重要な役割を果たしている。 当分野では、自律系機能を中心に、生体諸機能の神経制御機構について、各種生体内・外の情報の受容から統合・出力に至る過程を細胞内、細胞および組織・器官の核レベルで解明する事を目的として、電気生理学的、分子生物学的及び光学的手法を用いて研究を行っている。
難治病態研究部門 |
神経病理学
本分野では神経変性疾患の発症分子メカニズムの解明と治療法の開発を研究目的としている。特に遺伝性脊髄小脳変性症、ハンチントン病、アルツハイマー病において、原因遺伝子変異によって生じる異常蛋白が神経細胞機能異常と最終的な細胞死を引き起こす分子過程の詳細な解明を目指して研究している。また、発症メカニズムの研究で明らかになった知見を基に、これらの変性疾患をターゲットとし た分子治療の開発を試みている。
病態生化学
本分野は、細胞増殖・分化や細胞死に関係する諸疾患の病因の分子機構を明らかにし、その診断や治療に寄与することを目的としている。
現在、細胞の運命とDNA代謝(複製・修復・組換え)との関連を中心に細胞分子生物学的に探究している。ウイルス感染学
研究課題はウイルス性難治疾患であり、ウイルスの分子生物学的解析からウイルスと標的細胞との相関並びにウイルス感染に対する宿主の防御機構まで幅広い領域にわたる課題の解明に取組む。 当面、研究対象とするウイルス性疾患は、ヒトレトロウイルスによって惹き起こされる成人T細胞白血病(ATL)及び後天性免疫不全症候群(AIDS)であり、かつ、ヘルペスグループに属するウイルス(例えば Epstein-Barrウイルス(EBV))と密接に関連する疾患(バーキットリンパ腫や上咽頭癌等)である。 又、原因あるいは治療法不明の疾患について、未知病原ウイルス関与の可能性の検討及び治療対策の確立を図る。発生再生生物学
当分野では、肝臓を中心とする器官の発生と再生の分子機構を、発生工学、遺伝学、細胞生物学、分子生物学、生化学などの幅広い手法を用いて解明し、肝不全や肝癌などの難治性疾患に対する再生医療の開発を目指した基盤研究を展開することを理念としている。また、広範な細胞機能の発現に介在する細胞内シグナル伝達の観点から研究を行なうことにより、高次生命現象である器官の発生や再生の一般性と特殊性を明らかにするとともに、創薬の可能性を追求する。
犯罪精神医学
犯罪精神医学は、およそ犯罪生物学と司法精神医学を包括する応用精神医学の一分野である。 本分野の目的は、犯罪、非行、自殺、薬物嗜癖、行動異常の現象・原因と、それらの治療及び予防について研究することであるが、とくに精神障害犯罪者の研究に重点を置いている。 また、1992年より新たに犯罪被害者相談室を設置し、被害者学及び被害者援助の方法論の研究に取り組んでいる。 本分野は多くの司法精神鑑定を実施し、司法精神医学に関わるわが国唯一の専門研究施設として、この学問領域における指導的中心としての役割が期待されている。
免疫疾患
病原微生物への迅速な免疫応答は感染防御で中心的な役割を果たすが、自己抗原や花粉など環境中の物質への免疫応答はそれぞれ自己免疫疾患およびアレルギー疾患の原因となる。当分野では、免疫応答の基本的な仕組み、とりわけ、病原微生物と自己成分、環境物質の識別のメカニズムやワクチン効果のメカニズムを解明し、新たな感染免疫増強法や免疫疾患の治療法の開発のための基盤研究を行っている。
分子病態
ヒトの病気は遺伝要因と環境要因の相互作用によって引き起こされるものである。 当分野では、種々の難治疾患の遺伝要因を分子レベルで解明し、もっと病態の深い理解と疾患の予防および治療の道を拓くことを目的として、正常および異常な遺伝形質を規定するヒトゲノム遺伝子の構造・機能・発現制御機構を分子遺伝学的、細胞生物学的、生化学的手法を用いて解析している。
ゲノム応用医学研究部門 |
分子細胞遺伝
ゲノムプロジェクトの進展によりヒト染色体の全塩基配列の解読はほぼ終了した。 このようなポストシーケンス時代にあって、物理的、知識的なゲノム情報を基盤に従来不明とされてきた癌や生活習慣病、さらに神経変性疾患をはじめとする難病の原因遺伝子解明は加速度的に進むものと予測される。 さらにゲノムに内在する大量の生命科学情報を基に遺伝子制御ネットワークの予測システムも実現化されてきており、遺伝医学を包括するゲノム科学研究は生物現象から遺伝子へと進める解析的・帰納的なアプローチから、遺伝子から生物機能へと向かう構成的・演繹的なアプローチへとパラダイムシフトを遂げている。 本研究分野では、日々刷新されている豊富なゲノム情報を背景に腫瘍を含む種々の遺伝性疾患や染色体異常症候群の原因遺伝子の同定と機能解析を行い、疾患の分子病態の解明に向けての研究を展開している。 また、遺伝情報を基盤とした新しい「がんの個性」診断法の開発を目指している。
分子遺伝
近年、分子生物学・遺伝子医学等の発展に伴ってがんに関わる多くの遺伝子異常が解明され、このような研究から得られた分子レベルの成果を基に、遺伝性がんの発症前診断、一般 (散在性)がんにおける悪性度や治療感受性診断などの臨床応用が可能となってきている。また、ヒトゲノム解析計画はほぼ完成に向かい、その成果は生命科学研究全般に大きなインパクトを与えゲノム科学という新しい学問領域を生み出した。当研究室では、がん研究にゲノム科学を応用することにより、生命現象としてのがん本態の解明を試みると同時に、それにより得られる情報をがん治療に応用し、がん患者のオーダーメイド医療の実現を目指した研究を展開している。
分子疫学
疫学は人間集団を対象とする。研究の第一段階(現象論)は記述疫学、第二段階(実体論)は分析疫学、第三段階(本質論)は実験疫学(介入研究)である。 この過程を循環させて、各種環境要因と人間との交互作用を追求し、疾病の発生機序を解明する学問である。
本分野での研究領域は、脳卒中、虚血性心疾患、老年期痴呆、下垂体機能障害、食道がん、特発性肺繊維症、及びサルコイドーシスである。 新潟県新発田市、大阪府千早赤阪村、兵庫県穴粟郡5町、東京都多摩市などにおいて、10〜20年以上にもわたる追跡調査等を行い、これら疾病のリスク・ファクターを追求するとともに、予防のための地域保健活動も実践している。
食事調査法の開発、栄養摂取量の国際比較は、国立健康・栄養研究所、大阪市立大学医学部、バングラデシュ循環器病センター、ブルネイ、タイ、ヴェトナム、トンガの“厚生省”と共同して実施している。
遺伝生化学
種々の難治性疾患の病因は、病態には、遺伝子とその発現の異常が深く関係している。 一方、ゲノムプロジェクトの完成によってヒト遺伝子がすべて明らかにされようとしている現在、遺伝情報の発現メカニズムと蛋白質産物の機能の解析はさらに重要な研究課題となっている。 本分野の研究理念は、遺伝情報としての遺伝子、特に蛋白質をコードする遺伝子の発現制御の基本機構を明らかにすること、疾患関連遺伝子の発現調節を転写制御因子の観点から理解すること、さらに疾患の発現と進展における蛋白質機能を理解すること、である。 その結果、難治性疾患の基礎にある遺伝情報の発現と機能の異常を明らかにし、新しい診断、治療、予防法の基礎と応用を目指す。
形質発現
人間を含む生物個体は、遺伝情報としてDNAに書き込まれた様々な“形質”を、必要に応じて“発現”させることにより、生命活動を営んでいる。 本研究分野は形質発現制御のメカニズムを解明し、その破綻による疾患の病態を理解することを目指している。
エピジェネティクス
生命情報学
本分野は、情報論的な立場から生命機能の解明を目指す。 基本的アプローチの1つはトップダウン的な大域的な機能構造論から生命を記述する「複雑系生物学」的アプローチである。 情報論的にみると生命は化学反応集合の「系としての組織化」の特有なあり方である。 この組織化とは単なる物理的因果律によるものではなく、遺伝情報、細胞内情報伝達など複雑化とカオス化を貫く「情報による秩序」によって維持されている。
他のアプローチは、ボトムアップ的でゲノム情報から全体像を組み上げる方法である。 比較ゲノム解析やゲノム機能解析、転写ネットワーク解析、分子進化などの方法を通して生命の全体像の構築を目指す。 このような大域的機能構造形成の観点から生命の基本問題を解明する。
さらに医科大学での情報系研究室としての役割として、臓器、個体、集団レベルでの情報医学すなわち医学統計、医療情報システム、生理的モデル解析、医用生物画像処理、なども研究している。
客員研究部門 |
生体制御
本研究部門は、生体の三大制御システムである内分泌、神経、免疫系を、互いに関連する制御システムとして理解し、これら制御システムの複合的機能異常による難治疾患の病態を解明することを主要課題としている。 これらの生体制御システムはある初期条件下でシステムとして成立すると共に、環境などの変化に対応して常に変化し、その後固定化する。 本研究部門では、生体制御システムが内包する適応および固定化機構を理解することを目的とし、併せて、生体制御システムの適応/固定化障害としての難治疾患の理解を目指している。 具体的には、免疫系の発生や抗原刺激の際の免疫システムの変化やその固定化について、モデルを構築すると共に、種々の遺伝子組換えマウスを用いて、これらの変異体での免疫系の変化や抗体分子の変異の解析を行っている。
病態発現機構
当部門では、循環器疾患の病態形成を、心血管系を構成する細胞分子レベルから解明し、新しい治療法を構築することを目指している。
大学院教育研究支援実験施設 |
ゲノム解析室
本解析室は、所内の研究者が共通して研究機器を使用できること、日々進歩していく解析機器の設置と技術の教育および供与に研究所として対応していくこと、を目的として設置された。 現在、DNAシーケンサー、ペプチドシーケンサー、蛍光顕微鏡などを常備している。 特に、DNAとペプチド配列決定については、各分野からの依頼により解析し、実績を上げている。 設置機器については、今後、さらに拡充していく予定であるが、現在、各研究室が保有している機器をヴァーチャルラボとして本解析室に登録し、研究者が相互に利用できる便宜をはかっている。 本解析室担当者は、機器の管理運営、DNA配列などの受注解析とともに、新しい技術の導入と研究者への教育、訓練も行っている。
細胞プロテオーム解析室
遺伝子組換えマウス実験室
外来遺伝子を導入したマウスや内在性遺伝子を破壊したマウスは、遺伝子の生体内での機能を解析する上で、いまや、必須の手段である。 さらに、これらの遺伝子組換えマウスは、種々の疾患のモデルにもなり、疾患の発症機構や治療法の開発に不可欠である。
本実験室では遺伝子組換えマウスの樹立や飼育、特定病原体の排除、受精卵の凍結保存が可能であり、所内の共同利用実験室の1つとして各分野の研究をサポートしている。 なお、組換えDNA実験指針および本学の実験動物の手引きに基づいて作成された、遺伝子組換えマウス実験室使用に関する申し合わせとその細則に従って運営されている。
形態機能解析室
本解析室は、所内の研究者がいつでも使用できる共同利用施設として設置された。
設置されている機器は、様々な難治疾患における各種臓器の形態学的変化だけでなく、機能分子の変化をDNA、RNA、蛋白質レベルで解析することのできる共焦点レーザー顕微鏡、蛍光イメージングワークステーション、凍結ミクロトーム、ロータリーミクロトーム、自動核酸抽出装置及びリアルタイムPCR定量装置を常備している。
疾患に伴う遺伝子の質的・量的変化を細胞・組織レベルで経時的に解析する事は、難治疾患の病態解明・診断・治療にとって不可欠な手段であり、本解析室では遺伝子構造解析が終了したポストゲノム時代に欠かすことのできない強力なツールを提供し、研究の便宜をはかっている。
動物実験室
本実験室は、一般実験動物(ウサギ、モルモット、ラット、マウスなど)の飼育・管理を行い、所内の研究者の研究・教育のサポートを目的としている。 本実験室使用にあたっては、「申し合わせ」と「利用上の取り決め」の順守が条件となっている。