●課題3

心筋細胞周期研究と分裂誘導による再生治療法の開発

心筋細胞は生後まもなく増殖を停止し終末分化状態に入る。このため心筋梗塞や特発性心筋症などにより心筋が傷害されると重症心不全に陥る例が多い。これに対して、ES細胞や骨髄幹細胞を心筋に分化させる再生療法が有望視されている。
我々は、終末分化心筋細胞を再び増殖させることに成功し、新たな「心筋分裂再生治療」を行う技術の開発を目指している。これまで、心筋細胞では、サイクリンD1の核内発現の障害、p27kip1分解障害の少なくとも2段階の制御が存在することを明らかにしている。心筋分裂障害のこれらをクリアーすることにより安定な心筋再分裂誘導に成功しつつある。

心筋の細胞周期障壁

 心筋が何故分裂できないのか。我々は現在、次の2つの障壁を明らかにしている。1つは、細胞分裂のアクセル因子であるサイクリンD1の核内発現が阻害されていること、2つ目は、ブレーキ因子p27の分解が阻害され早期に蓄積することである。これまでにこの障壁をクリアーすることで安定な心筋再分裂誘導に成功している。

第1の障壁

細胞周期のG0期からG1期へ進行するには、促進因子であるサイクリンD1の核内での働きが必要であるが、心筋ではサイクリンD1の核内発現が阻害されいる。そこで、サイクリンD1を強制的に核内に発現させると、pRBのリン酸化とともにDNA合成が起こり心筋細胞の分裂・増殖を誘導できた。

第2の障壁

サイクリン D1の核内強制発現による分裂誘導は極めて限定的であり、1−2回で停止する。この時、細胞周期抑制因子p27kip1をノックダウンさせることにより、より安定な心筋細胞の増殖が得られた。

 

今後の展開

・新たな細胞分裂障壁の同定とより安定な再分裂系を確立する。

in vivo心筋再分裂誘導と心不全モデル動物を用いた心機能庇護効果を解析する。

ヒト心筋細胞分裂誘導の基礎研究を行う。(本研究所倫理審査委員会承認済み)