Ph.D.キャリアの活かし方

第二回セミナー
「企業で活躍する女性研究者の姿」

〜講師〜
大内 香 主幹研究員
(中外製薬株式会社 育薬研究部 がん領域G)

平成22年11月25日(木)、第二回「Ph.D.キャリア.の活かし方」セミナーを開催しました。講師として中外製薬株式会社・育薬研究部がん領域Gの大内香主幹研究員をお招きしました。「企業で活躍する女性研究者の姿」をテーマに御自身の経験を踏まえ、主に1.「Ph.D.を取得したきっかけ」、2.「企業での研究職の実際」、3.「出産・育児と仕事の両立」、4.「Ph.D.を活かすために今できること」、について御講演して頂きました。

「Ph.D.取得を目指したきっかけ」については、Ph.D.を持つ方々の“プレゼン力”に圧倒的な差を感じられた御経験を第一に挙げられました。大内さん御自身が、専門知識だけでなく物事を論理的に考える力が不十分であると感じ、総合的に研究者として自立する手段としてPh.D.の取得を目指したそうです。また、海外の方々とやり取りをする際にPh.D.の学位がないと一人前に扱われない現状や、職場外の方々と広く面識を持つ上でPh.D.の学位が役に立った経験、転職の際にも役立つツールとなること等を述べられました。

「企業での研究職の実際」については、企業では医療への貢献の手段として利益が必要となる点が、科学の進歩が目的であるアカデミアとは異なっており、その違いから生じるそれぞれのメリット・デメリットを紹介されました。一方で、アカデミアも企業も人類の健康に寄与できるという意味では共通であることも話されました。続いて企業の研究者のキャリア・ディベロプメントの一例として、大内さんが中外製薬株式会社にて大学時代における専門研究とは違う分野に配属となった経緯、創薬研究・育薬研究の実情、さらに現在は管理職として研究以外の責務を担っていることを話されました。

今回の注目講演内容である「出産・育児と仕事の両立」については、育児をしながら働く女性の視点からお話しして頂きました。男性と異なり、女性の時間軸には結婚・出産、介護といったイベントが“区切り”として存在することから、仕事と私生活を両立させるには短期的・長期的な計画性を持つこと、優先順位を付けること、あせらない気持ちを持つこと等が必要だと述べられました。逆に仕事を続ける上で、家族の存在が励みになったり部下の人材育成において育児の経験が役に立ったりというメリットがあることも話されました。御自身の育児の際、その瞬間にしかない子供の成長を見守りたいと考えて時間の創出を苦慮された経験から、Ph.D.は時間と環境に恵まれた学生時に取得することが望ましいとお話しされました。

「Ph.D.を活かすために今できること」については、専門性を高めることの上に、語学力の向上、日々の研究を通じて論理的思考力を鍛えること等を挙げられました。製薬企業において、如何によく考えて薬を創り育てるかが求められるため、Ph.D.の果たす役割は大きいこと、同時に論理的思考は様々な職務で役に立つことから、自身のキャリアのスタートを研究に限らずに視野を広げるとよいのではないかと提案されました。

最後に、結婚・出産といったライフイベントを経験した女性であってもキャリアアップへの弊害が無くなってきている現状があるため、“職場で必要とされる人財”となり、楽しみながらキャリア向上を目指してほしいと強く述べられました。

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