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ホーム  > 分子免疫学分野  > 年報  > 2016

2016

分 子 免 疫 学 分 野
Molecular Immunology

教授      東 みゆき
准教授     永井 重徳
助教      大野 建州
非常勤講師   清野 宏
        東 剛司
大学院生(博士)
     Kang Siwen(~9月)
     近藤 雄太(顎顔面外科学分野)(~3月)
     Hirunwidchayarat Worawalun
     Nadya Niken Adiba
     西井 直人(顎口腔外科学分野)
     Xia Yulong
     古澤 慧美(小児歯科学)(4月~)
     加藤 寛史(顎顔面外科学)(4月~)
     Yang Yue(4月~)
特別研究生  立浪 秀剛(富山大学 大学院生)(4月~)
大学院研究生 Jin Xin

1) 分野概要
 分子免疫学分野は,大学院重点化に伴い新たに設置された専攻分野の一つとして2000年4月に設立されました。基礎および臨床歯学研究における免疫学の理解の必要性の増大に伴い、日本の歯学部では、口腔細菌・微生物学教室とは別に設置された始めての免疫学研究室でもあります。免疫システムは、生体防御の基本であり、生命現象を考える医歯学研究にますます不可欠なものとなりつつあります。口腔の免疫応答は、口腔由来の抗原に対する全身免疫と腸管を主体とする粘膜免疫の2つの融合免疫システムにより担われています。歯や歯槽骨などの硬組織と歯肉・口腔粘膜などの軟組織が混在し、日々の生活の中で多くの病原性および共生細菌や食餌性抗原に曝されている口腔は、他の臓器と比べてユニークな環境におかれています。免疫学はこの30年間に大きな進歩を遂げてきましたが、生体のしくみには、まだまだ解明されていない“不思議”がたくさんあります。当分野では、口腔と全身のネットワークを追求しながら、医歯学・生物学の幅広い観点から免疫システムの“不思議”の解明に取り組み、病態解明と治療法開発を目指しています。

2) 研究活動

研究目標:
生体防御において重要な役割を果たしている免疫システムは、リンパ球上の膜分子と可溶性分子の相互反応により巧みに制御され維持されています。なかでも、抗原特異的な適応免疫を担うT細胞とB細胞は、抗原受容体を介した刺激のみならず、共刺激分子 (Co-signal molecules)と呼ばれる細胞表面機能分子の働きにより免疫応答の質と量が決定されています。先天免疫と適応免疫システムは、別々に働いているわけではなく、お互いに強くリンクしています。T細胞およびB細胞、マクロファージ、樹状細胞などの抗原提示細胞を含む免疫担当細胞はもちろんのこと、各種臓器における組織細胞上の多種多様な補助シグナル分子の発現制御や機能的役割を明らかにし、これらの分子を標的とした、骨髄移植・臓器移植・自己免疫疾患・癌・炎症(歯髄炎,歯周炎を含む)およびアレルギー性疾患における免疫治療法を開発することを目的としています。
 口腔粘膜や歯における口腔免疫応答は、全身性免疫と共通な部分と口腔独自のユニークな部分から成り立っています。全身性免疫および腸管粘膜免疫と口腔独自のユニークな点を分子レベルで明らかにしていくことで、全身性疾患と口腔疾患の関連が明らかになり、これらの研究成果を基盤に、口腔疾患の治療法および口腔から全身疾患の治療法開発へ繋げます。

研究テーマ
1. 新規免疫チェックポイント分子VISTA (PD-1H)の機能解析
2. 舌下粘膜療法の効果発現に関わる舌下粘膜樹状細胞の動態と機能修飾
3. アレルギー性疾患における免疫チェックポイント分子 (CTLA-4, PD-1,VISTA)の関与
4. 口腔粘膜上皮細胞における抑制性共刺激分子CD274 (B7-H1)の発現と機能制御
5. 口腔粘膜経由の抗原に対する2次リンパ組織と口腔粘膜における免疫応答の解析
6. マウス扁平上皮癌モデルにおける種々の免疫チェックポイント分子阻害効果
7. がん治療における免疫チェックポイント阻害剤との効果的な併用療法の開発
8. IL-33のがん免疫応答への関与
9. IL-10産生制御性T細胞 (Tr1)分化における PI3K 経路の役割
10. 免疫麻痺における免疫チェックポイント分子および制御性細胞の役割
11. B7-H1発現誘導に関わるシグナル経路の解明
12. 樹状細胞を標的とした siRNA核酸医薬のアレルギー性皮膚・粘膜炎への応用開発

1.教育活動

学部教育:
歯学部歯学科 第3学年;感染と生体防御モジュール・モジュール責任者、講義および実習 ユニット1:感染と生体防御概論、ユニット4:バイオインフォーマティクス、ユニット5:生体免疫応答、 病態科学演習モジュール 口腔粘膜疾患担当、第4学年 研究実習分野配属、世界展開リサーチデー・審査員
歯学部口腔保健学科・口腔保健衛生学専攻 第2学年「病原微生物と生体防御」
歯学部口腔保健学科・口腔保健工学専攻 第2学年「感染予防」
医学部医学科 第2学年「免疫学I共受容体による免疫調節」

大学院教育:
博士課程(医歯学総合研究科)分子免疫学特論・演習・実験
医歯学・生命理工学先端研究特論(大学院特別講義) 「腸内細菌学」本田賢也、「腸内環境を介した免疫制御の基礎的解明と免疫創薬・ワクチン開発への応用的展開」國澤 純
博士課程(医歯学総合研究科) 医歯学総合研究科コース特論(Basic-clinical borderless education)口腔化学・機能コース・コースリーダー
修士課程(医歯理工学専攻)「免疫学 T細胞の活性化と免疫応答」講義


3) 教育方針:
学部教育:生体防御機構において免疫システムがどのようにかかわっているかを理解させる。また、免疫システムが関与する全身性および臓器特異的疾患の発症メカニズムを理解させる。
大学院教育:免疫応答を細胞・分子・遺伝子レベルで理解し、免疫関連疾患の病態および免疫制御による疾患治療の可能性を考えられる能力を身につける。
5) 研究業績 
[論文発表]
(英文)
原著
1. Kondo Y, Ohno T, Nishii N, Harada K, Yagita H, Azuma M. Differential contribution of three
 immune checkpoint (VISTA, CTLA-4, PD-1) pathways to antitumor responses against  
 squamous cell carcinoma. Oral Oncol 57:54-60, 2016. 
 Doi: 10.1016/j.oraloncology.2016.04.005 
2. Vo M, Holz LE, Wong YC, English K, Benseler V, McGuffog C, Azuma M, McGaughan GW,  
 Bowen DG, Bertolino P. Effector T cell function rather than survival determines extent and  
 duration of hepatitis in mice. J Hapatol 64:1327-1338, 2016. Doi: 10.1016/j.jhep.2016.01.040.
3. Kang S, Zhang C, Ohno T, Azuma M. Unique B7-H1 expression on masticatory mucosae in the
 oral cavity and trans-coinhibition by B7-H1-expressing keratinocytes regulating CD4+ T-cell- 
 mediated mucosal tissue inflammation. Mucosal Immunol 2016. Doi:10.1038/mi.2016.89 [Epub
 ahead of print].
4. Kurebayashi Y, Baba Y, Nadya NA, Azuma M, Yoshimura A, Koyasu S, Nagai S. TGF-b- 
 induced phosphorylation of Akt and Foxo transcription factors negatively regulates induced  
 regulatory T cell differentiation. Biochem Biophys Res Commun 480:112-119, 2016 .  
 Doi:10.1016/j.bbrc.2016.09.153.
5. Yamazumi Y, Sasaki O, Imamura M, Oda T, Ohno Y, Shiozaki-Sato Y, Nagai S, Suyama S,
 Kamoshida Y, Funato K, Yasui T, Kikutani H, Yamamoto K, Koyasu S, Akiyama T. The RNA- 
 binding protein Mex-3B is required for IL-33 induction in the development of allergic airway
 inflammation. Cell Rep. 16(9):2456-2471, 2016.
6. Funao H, Nagai S, Sasaki A, Hoshikawa T, Tsuji T, Okada Y, Koyasu S, Toyama Y, Nakamura
 M, Aizawa M, Matsumoto M, Ishii K. A novel hydroxyapatite film coated with ionic silver via inositol
 hexaphosphate chelation prevents implant-associated infection. Sci Rep. 6:23238, 2016.
7. Shiono Y, Ishii K, Nagai S, Kakinuma H, Sasaki A, Tsuji T, Okada Y, Koyasu S, Nakamura M,
 Toyama Y, Aizawa M, Matsumoto M. Delayed Propionibacterium acnes surgical site infections occur only in the
 presence of an implant. Sci Rep. 6:32758, 2016.

(日本語)
総説
1. 大野 建州、張 晨陽、東 みゆき. 舌下免疫療法の抑制効果発現における舌下粘膜樹状細胞の関
 与. 臨床免疫・アレルギー科 65: 297-303, 2016

[書籍等出版物]
1. Kang Siwen、東 みゆき 咀嚼粘膜上皮に発現する免疫チェックポイント分子 B7-H1による粘膜
 炎症の制御. 口腔病学会誌 83: 107-108, 2016

[学会発表] 
(国際学会)
1. Nishii N, Kondo Y, Li L, Lau W, Harada H, Azuma M. Combined treatment with PD-L1 blockade
 and a TLR7/8 agonist dramatically enhances antitumor immunity. AACR2016, 2016.4.16-20. New  Orleans, USA
2. Azuma M, Kang S, Ohno T, Zhang C. Unique sublingual dendritic cell state induces tolerance by
 sublingual immunotherapy. IADR 2016, 2016.6.22-26. Seoul, Korea 
3. Kang S, Ohno T, Azuma M. Immune checkpoint molecule expressed on masticatory mucosae
 regulates tissue inflammation. IADR 2016,2016.6.22-26. Seoul, Korea
4. Kondo Y, Ohno T, Azuma M. Combined VISTA and CTLA-4 immune-checkpoint blockade
 enhances antitumor immunity. IADR 2016,2016.6.22-26. Seoul, Korea
5. Nagai S, Kurebayashi Y, Baba Y, Minowa A, Azuma M, Yoshimura A, Koyasu S.
 Phosphorylation of Akt and Foxos induced by TGF-βnegatively regulates the differentiation of  
 induced regulatory T cells. ICI 2016, 2016.8.21-26. Melbourne, Australia
6. Ohno T, Kondo Y, Azuma M. VISTA/PD-1H negatively regulates generation of Th2-mediated
 allergic responses. ICI 2016,2016.8.21-26. Melbourne, Australia .
7. Kizukuri R, Yamada K, Honda M, Nagai S, Aizawa M. Cellular responses of immune cells
 toglass ceramics in the CaO-P2O5-SiO2-B2O3 system. 16th Australasian BioCeramics Symposium.  2016.12.5-6.
 Brisbane, Australia.

(その他 海外講演)
1. Kang S, Zhang C, Ohno T, Azuma M. Unique B7-H1 expression on masticatory mucosae and
 trans-coinhibition by B7-H1-expressing keratinocytes in CD4+ T-cell-mediated mucosal
 inflammation. The 5th Tri-University Consortium on Oral Science and Education. 2016.10.27-28,  
 Peking University, China
2. Azuma M, Immune regulation in the oral cavity. Tokyo medical and Dental University-Taipei
 Medical University Joint Symposium 2016.11.12 Taiwan

(国内学会)
1. 大野 建州、西井 直人、近藤 雄太、東 みゆき. 扁平上皮癌モデルにおける新規分子 
 VISTを含めた免疫チェックポイント阻害効果の検討. 第70回口腔科学会2016.4.16-17 福岡 
2. 木造理 萌子、山田 清貴、本田 みちよ、永井 重徳、相澤 守.CaO-P2O5-SiO2-B2O3系ガ
 ラスセラミックスの免疫細胞応答性. 第132回無機マテリアル学会.2016.6.2-3 船橋
3. 西井 直人、近藤 雄太、Lixin Li、 Walter Lau、原田 浩之、東 みゆき.Combined
 treatment with PD-L1 blockade and a TLR7/8 agonist dramatically enhances antitumor immunity.
 第20回日本がん免疫学会 2016.7.27-29、大阪 
4. Hirunwidchayarat Worawalun、大野 建州、Kang Siwen、永井 重徳、東 みゆき. 口腔粘膜炎
 症において局所に集積するT細胞の解析 第58回歯科基礎医学会 2016.8.24-26 札幌 
5. Niken Adiba Nadya、東 みゆき、永井 重徳. Tr1分化におけるP13の役割 
 第58回歯科基礎医学会 2016.8.24-26 札幌 
6. 西井 直人、立浪 秀剛、近藤 雄太、原田 浩之、東 みゆき. 低濃度TLR7/8アゴニスト
 全身投与の抗腫瘍効果とPD-L1阻害との併用 第58回歯科基礎医学会 2016.8.24-26 札幌 
7. 西井 直人、立浪 秀剛、近藤 雄太、原田 浩之、東 みゆき. Antitumor effects of a low  
 dose TLR7/8 agonist and its combined therapy with PD-L1 blockade. 
 第75回日本癌学会 2016.10.6-8 横浜
8. 大沼 啓、 大野 建州、東 みゆき. 抗マウスVISTA抗体MIH63の機能解析. 
 第23回日本歯科医学会総会 2016.10.21-23 福岡 
9. 東 みゆき 共刺激分子研究 —from bench to bedside and back to bench- 日本学術会議シンポ
 ジウム「歯学研究における基礎と臨床のシグナル伝達」 第23回日本歯科医学会総会 
 2016.10.21-23 福岡 
10. 東 みゆき 特別講演「口腔免疫システムと炎症制御」 第 20回日本顎顔面インプラント学会
 2016.12.3-4 東京  
11. Naoto Nishii, Hidetake Tachinami, Yuta Kondo, Hiroyuki Harada, Miyuki Azuma. Antitumor
 effects of a low dose systemic administration of a TLR7/8 agonist and its combined therapy with  
 PD-L1 blockade.  第45回日本免疫学会 2016.12.5-7 沖縄
12. Worawalun Hirunwidchayarat,Tatsukuni Ohno, Siwen Kang, Sigenori Nagai, Michio Tomura,  
 Miyuki Azuma. Features of oral mucosal inflammation-comparative studies with skin inflammation.
 第45回日本免疫学会 2016.12.5-7 沖縄
13. Niken Adiba Nadaya, Azuma Miyuki, Nagai Shigenori. Regulation of IL-10 production from IL-27-
 induced Tr1 cells by PI3K-Akt pathway. 第45回日本免疫学会 2016.12.5-7 沖縄

(その他 講演)

1. 東 みゆき 招請講演「口腔免疫と全身免疫システムとのリンク」 
   第1回 Expert Meeting on PPP (掌蹠膿疱症研究会) 2016.1.30  東京
2. 東 みゆき 富山大学大学院セミナー 
   共刺激分子を標的とする免疫制御 –その基礎から臨床まで- 2016.5.23 富山
3. 東 みゆき ショートトーク がん治療が変わる –免疫チェックポイント阻害薬- 
   免疫ふしぎ未来 2016 2016.8.7

平成28年度
[研究助成金]
1. 日本学術振興会科学研究費補助金 基盤研究A
 「口腔特有の免疫応答制御メカニズムの解明」研究代表者 東 みゆき 
2. 日本学術振興会科学研究費補助金 基盤研究B
 「粘膜細菌感染におけるFoxp3陰性IL-10産生制御T細胞の分化・機能の解析」 研究代表者 永井 重徳
3. 日本学術振興会科学研究費補助金 基盤研究C
 「インターロイキン33による新しい歯周炎病態形成抑制機構」研究代表者 大野 建州
4. 日本学術振興会科学研究費補助金 基盤研究B
 「免疫系に積極的に働きかけるイムセラミックスの創製とその機能発現メカニズムの解明」研究分担者 永井 重徳
5. 日本学術振興会科学研究費補助金 基盤研究C
 「終末糖化産物(AGEs)はインプラントのリスク評価に有用か」研究分担者 大野 建州
6. 日本医療研究開発機構研究費 「アトピー性皮膚炎の難治性皮膚病変の病態解析と病態に基づいた
 革新的な核酸医薬外用療法の医師指導型臨床研究」研究分担者 東 みゆき 

[その他] 
(セミナー・大学院特別講義)
1.本田 賢也:腸内細菌学 大学院特別講義 2016.2.1
2.國澤 純:腸内環境を介した免疫制御の基礎的解明と免疫創薬・ワクチン開発への応用的展開  大学院特別講義 2016.2.29

(特許)  なし
(受賞)  なし